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パリ近郊をさまよう

印象派の画家モネの愛したジヴェルニー

 モネの睡蓮と聞けば余り美術に関心のない方でも一度はご覧になったことがあるでしょう。彼の睡蓮を描いた多くの作品群は、モチーフが時間、気象、季節によって微妙に変化する様が見事に表現されており、見るものの心をとらえて離しません。それら睡蓮の作品群が描かれたのがここ、晩年の功成り名を遂げたモネが立派な居を構えたジヴェルニーの彼の屋敷内の庭園です。

 パリで生まれ、その後ノルマンディーのル・アーブルに移り少年時代をすごしたモネは生涯セーヌ川とその沿岸の美しい風景を愛し、経済的に恵まれるようになってからはここジヴェルニーに理想のモチーフを得るため土地を手に入れ、好み通りの屋敷を建て、庭を作り上げたのです。

ピンク色の壁にグリーンの窓を持つ愛らしい屋敷の前には四季を通じてカラフルな花が咲き乱れ、壁には彼が愛し、大いに影響も受けた広重、北斎、写楽、歌麿など代表的な日本の浮世絵の作品が多数飾られています。

道を隔てた向こう側に広がるのが日本式の庭園です。柳、竹など東洋的な木立の間を小川が流れ、その澄んだ水が小さな池に注ぎ込みます。小川の上には太鼓橋。見下ろせば水面に浮かぶ睡蓮の花。我々日本人にもどこか懐かしい風景でありながら、出来上がった庭は完璧にモネの世界となっています。

 パリを西に40キロばかり走ればマント・ラ・ジョリー。大聖堂を望みながらセーヌ川の右岸に渡り7、8キロでヴェトゥイユという小さな村に着きます。このあたりのセーヌ川は大きく蛇行し小さな村々と林、ゆるやかな大地のうねりを縫って流れる景色は絵の題材にぴったりです。

モネはジヴェルニーに移る前5年余りをここで過ごしています。現在はやや寂れた印象を持つこの村も、中心に古い教会がそびえ、当時モネの滞在したホテルも営業こそしていませんが建物は現存し、モネの暮らしていたときの様子をしのばせてくれます。

 さらにセーヌを下ると突然大きな石灰石の山肌を利用して建てられた城が目に飛び込んできます。ここがラ・ロシュ・ギヨン。パリから出たセーヌ川くだりの終点になる船着場のある所です。船着場から右手がルーアン、あのモネの描くノートルダム大聖堂のある町からさらに下るとル・アーブルで大西洋に出ます。

左手はパリ。フランスの都と下流の工業地帯を結ぶこのセーヌの流れはまた産業の大動脈でもあるんですね、多くの船が頻繁に行き来しています。ここまでくるとジヴェルニーはもうすぐそこ、ロン・ポワンを左方向に取ればすぐにうっそうと木々の茂ったモネ博物館に着きます。

 モネ博物館は道の両側にあり北側が屋敷と花壇、南側が睡蓮の浮かぶ池のある日本風庭園です。これらは地下道で結ばれており入り口は北側のさらに一番北東の隅にあります。車は博物館をやりすごし西隣の駐車場に滑り込ませます。

団体のかたがたは道路そばの団体入り口から入り、庭だけを見てそそくさと帰って行かれるようですが、入り口のある博物館北がわの小道にはかわいいレストランやホテルが並び、すぐ西には落ち着いたたたずまいでモネの時代の印象派の影響を受けたアメリカ人の画家の作品を集めたアメリカン美術館もあります。個人で行かれる方はこの北側の旧道から行きましょう。時間が許せばアメリカン美術館で当時のアメリカにふれるのも楽しいでしょう。

 気をつけなければならないのは開場時間。オープンは朝10時から夕方6時までですが、博物館はお昼の12時から2時(!)まで閉められます。しかも4月1日から10月31日までしか営業していません。庭は昼休みはありません、10時から夕方6時まで入場できます。休館日は月曜日ですのでこれもお忘れなく。

 モネ博物館というと、多くの方はモネの絵を鑑賞できると勘違いされるかもしれませんが、ここにはモネの実物の絵はありません。絵はほとんどがモネのものではなく、モネが愛し、影響を受けた浮世絵版画です。モネの絵をご覧になりたい方はパリのモネ美術館やオルセー美術館に行くのが得策です。

しかし、それらモネの絵を多く集めた美術館にないモネの作品がここにはあります。モネ自身が作り上げた自らの絵のためのモチーフ、花、水、光そしてこの庭園すべてこそ日々刻々無限の変化を見せる、モネ最高傑作の一つと言えるでしょう。



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