A la フランスhomeホーム

パリ近郊をさまよう



お彼岸も過ぎ、日はだんだん長くなるとはいえ右も左も解らぬ異国の地、長旅に疲れた身に宿探しはきつい。いくら気の向くままとはいえ1日目のねぐらだけは確保しておいた。目的地はシャンティイ、パリ近郊、お城と競馬で有名な観光地だ。なれない左ハンドルに戸惑いながら車を北に向けた。

オートルートをパリと反対方向に、猛スピードでかけ抜ける地元の車に右往左往しつつ、少し走るとシャンティイ方面の標識を見つけた。すかさずインターを降り、料金所が見えたので空いてるブースに車を入れるとそこにあるのは料金自動徴収機。ありゃ、お札の挿入口がない!

そうこうする内後ろには車が溜まってきた。こりゃ困ったと外に出ると、後ろのドライバーがゲートの外側を指差していた。なあんだ、人のいるブースもあったのか。あわてて両替してもらいゲートが開いた頃には後ろは長蛇の列。でもみな怒りもせずこちらを見てニヤニヤしている。まったく、通勤時でなくてよかった

あまりの走行速度の高さに驚きながらも、郷にしたがっているとあっというまにシャンティイ、暮れなずんできた景色に色を添えるイルミネーションを見ていると、あっさり予約のFAXで見慣れたホテルの名前が見付かった。

1.シャンティイ

24時間も寝ずに過ごした後だけにぐっすりと寝込み、さわやかな朝を迎えることが出来た。
外へ出ると、快晴。さっそくお城を見に行くとまだ開場前。そこで街に戻り、カフェに入った。あやしげなフランス語で注文に成功、本場のでっかいクロワッサンと、ついでにメニューにベルギーゴーフルを見つけそれも注文した。今日本で流行のベルギーワッフルという物らしい。生まれてはじめて食したが、香ばしくてなかなか美味なものだった。

さてお腹もくちくなって、再びお城へ。途中、騎馬警官の出現に喜んだり驚いたりしつつシャンティイ城に行ってびっくり。フランス風の居城を見るのが初めての我々は皆感心してしまった。大きな庭の中の池に優雅な城とその映り込みの美しいこと。血なまぐさい戦の香りなど微塵も見せないその姿は、姫路城を見慣れた我々にもしっかりカルチャーショックを与えてくれた。

2.オーベール・シュル・オワーズ

家族旅行ともなると、自分の価値観を人に押し付けるわけにはゆかない。正直、ヴェルサイユ宮殿はどうでもよかったのだが、子供の勉強にもなることだし立ち寄らずには済まない。
最短時間はパリの外周高速経由だがそれでは能が無い。炎の画家ゴッホの終焉の地オーベール・シュル・オワーズ回りで行くことにした。パリからそう離れていないにもかかわらずまことにひなびた地方道を例によってぶっ飛ばしてゆく内昼になってしまった。

ちょうど感じの良い田舎のレストランがあったのでお昼にした。メニューを見たがわからない!尋ねてみても聞き取れない。おすすめはと聞き言われるままに待っていると焦げ茶色の四角いお好み焼きの様なものが出てきた。食べてみるとチーズやハムや卵などが入っていてとてもおいしい。しかしかなりなボリュームなのでおなか一杯になってしまった。

ウェイトレスのお嬢さんがシュガーはいかがかと聞いてきた。なんだ、英語を話すのか、でもシュガーって何なんだ?お茶に入れるのかと聞いてみると、食べるのだという。しばらく考えた後はたと気がつき、スウィーツのことかと聞くとそうだそうだとにっこり笑いながら、やっと双方納得できた。

それからしばし英語でやり取りすることが出来た。そこはブルターニュ料理がお得意で、あのお好み焼き?はクレープ(正確に言うとガレット、そば粉を使った、甘くないクレープ)。もともとでかい紅茶茶碗のようなものでシードルを飲みながら食べるものだったそうな。ああ、我々はビールと一緒に食ってしまった。もっと早く言ってくれれば良かったものを。

腹ごしらえも出来たし、オーベール・シュル・オワーズの場所を聞くとすぐそこの川向うだと教えてくれた。なるほど2キロ程行くと川が有り、目の前に何だか見たことのある教会が見える。目を凝らすとまさにあのゴッホの絵そのまま、ただ雰囲気はあの異常な感じの無い落ち着いたものだった。どうということのない村だが、さすがに多くの画家達に愛されただけあって、静かな雰囲気の良い村だった。

記念館はじめその辺りをしばし散策した。絵で見た屋敷や、風景がひろがり懐かしい気分にさせられた。

3.ヴェルサイユ


今まで街らしい街を走っていなかった私にはヴェルサイユはとんでもない都会に思えた。一方通行だらけの道にひしめきあう車、車。強引な運転。おまけにどじなことに入口の駐車場で誤って自分の眼鏡をつぶしてしまい、時間もすっかり夕方になったので、宮殿の見学は翌日にして、ホテルを見つけ、眼鏡屋をさがして直してもらうことにした。

ホテルで教わった眼鏡やさんはとても物静かかつ丁寧な人で、1時間ほど掛けて直した料金わずか40フラン。さっとドアを開けてくれ、丁寧にお礼を言われたのには却って恐縮してしまい、せいいっぱいの感謝の言葉を残しホテルに帰った。

ヴェルサイユ宮殿に入ったのは朝1番、だあれもいない馬鹿でかい広場で宮殿の写真を撮ろうとすると35ミリではまるで入らない。結局後で合成するつもりでパンしながら撮ると7枚にもなった。

個人入場者入口には、われわれ以外ただ一人。中はガラガラ。係員はとても暇そうなのであちこちで質問して回ると、その中の一人、美しい女性がくわしく説明して一緒に回ってくれた。三文どころではないたいそうな得をしてしまった。

4.フォンテーヌブロウ

フランス文化と言えばまず絵画。多くの美術館に所蔵される膨大な数の名作を生み出したのは何なんだろうか。明治以来の優秀な日本人画家達もあこがれ、住みつき、描き続けたフランスの街、人、そして自然をぜひこの目で確かめたかった。

フォンテーヌブロウ、バルビゾン、それらを結ぶ美しい森。ゆったりとした時の流れを感じながら、柔らかい光とさわやかな風のなかを散策してみた。

様々な様式が複雑に折り重なった華やかな城、静かな湖水の向こうには小さな東屋、素敵な女性が湖畔に佇めばまんまコローの絵か。

城の回りにひろがるきれいな街は石畳の通りの両側にセンス良くディスプレイされた店屋が建ち並び、見ているだけでも楽しくなってしまった。

うっそうと繁ったフォンテーヌブロウの森は今にもむこうからお付きの者を従えた王様の一行が現れそうな雰囲気であったが、実際に現れたのはマウンテンバイクの一行達で、網の目のように縦横に走る小道を砂煙を上げながら去って行った。
ところどころに目につく岩のごろごろ転がった広場は遥か昔の海中で有った証。生徒を従えた先生らしき集団が授業を行っていた。

森を抜けるとバルビゾンの村。美しいホテルの並ぶ通りの向こうには、ミレーの絵でおなじみの田園風景が拡がっており泊まる所には困らなさそうだが、どうも作られ過ぎた村だし時間も早い。ロアールの城巡りに便利なオルレアンあたりまで行こうかということになった。



5.ボージャンシーに続くmap

nextロワール城巡りマップに進む


homeA la フランス ホーム