『ロビュションとジラルデが気に入っている場所。他にいうことあ
る?』
「ゴー・ミヨ」がこう書いたレストラン、「ラ・フェロヌリー」。若くしてたて続けに引退してしまった、私が大好きだったこの2人の天才シェフのお気に召したレストランを訪門。
本当に「ゴー・ミヨ」で14点もついてるの?って思わず確かめたくなるような店。小さ目のカフェをちょっと田舎風に飾った内装。ちっちゃなテーブルがぎゅうぎゅうと並べられ、1人きりのセルヴールがくるくると回って注文をさばく。
典型的な家庭料理がズラリとカルトに並ぶ。ポ・ト・フ、鴨のコンフィ、鴨のマグレ(胸肉)、ウサギのマスタード、、、、。久しぶりだなあ、こういうお料理のレストランに来るのって。ちょっと離れたテーブルにはもう、美味しそうな匂いを漂わせる大きなお皿が運ばれている。急にお腹が空いてくる。急いで注文。お酒は周りのテーブルに習って、カラフ(ピッチャー)の赤。
フランスの家庭料理って素晴らしい!
このレストランの感想はこの一言に尽きる。
フランス人が泣いて喜びそうな家庭料理の数々は、外国人の私たちだって泣きたくなるくらいの美味しさ。オーダーが終わったと思ったら、あっという間に出てきたアントレの
「ジャンボン・ペルシ(パセリ入りハムのゼリー寄せ)」のジャンボンの風味のよさ!ペルシの香りの高さ!「ポ・ト・フ」の牛タンの柔らかさ!野菜の旨み!骨髄の口当たり!スープのコク!「鴨のマグレ」の肉の上品さ!桃のコンフィの甘さ!グラタン・ドフィノワ(ジャガイモのにんにくクリームグラタン)の舌触り!
くうぅ、どれもとっても文句なしに美味しい。お酒込みで250フランをきるラディション(会計)。ロビュションとジラルデがご機嫌になった理由がよーく分かりました。
気の置けないカラフのワインをごくごく飲んで、素朴で完成度の高い家庭料理を堪能して、私たちもすっかりご機嫌。
横の席の2人の叔父さま方とも話が弾む。フランス農水省にお勤めの叔父さま方は、やっぱり食いしん坊。レストランで知合った食いしん坊が農水省なんて、話が上手すぎる、って思ったけど、正真正銘の政治家さん。「いやあ、全くいいねえ、このレストラン!」とこれまたご機嫌になった叔父さま方に、農水省の中庭を見せてもらってお家まで送ってもらう。
パリには素敵なお庭がたくさんあるけど、そのほとんどはプリヴェ(私有)で、門の中に入らないと見えないようになっている。各官庁の中庭は、その美しさにも定評がある。今日は夜であんまりよく見られなかったけれど、今度はお天気のお昼に、きちんとお庭を案内してくれるそうだ。新しいパリが発見できるかもしれない。
しみじみ思う。フランスは美味しい。
mer.14 avril 1999