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グルマン・ピュスのレストラン紀行


モンタランベール(Montalembert)

アラン・ルコントは、「レ・ゼリゼ」のシェフ・パティシエだった。「レ・ゼリゼ」をはじめて訪ねてから2〜3年の間、私が絶賛に絶賛を重ねたデセールを作ってくれた人だ。当時の「レ・ゼリゼ」には、3人のアランがいた。極上のホスピタリティーをもってサーヴィスにあたってくれたアラン・モーゼ、才気ばしったデセールを次々と食べさせてくれたアラン・ルコント、地中海料理の粋を再現してくれたアラン・ソリヴァレス。モーゼがまずいなくなり、後を追うようにしてルコントが去り、そしてソリヴァレスが「タイユヴァン」に移って、私が溺愛した「レ・ゼリゼ」はなくなった。今はブリファーさんが引き継いでいるあの場所で、私はどれくらい極上のサーヴィス、料理、デセールを味わってきただろう。

アラン・ルコントが「レ・ゼリゼ」を辞めてどこに行ったかと言うと、7区のシックビューティーなデザイナーズホテル、「モンタランベール」。パティシエとしてではなく、料理も含めたレストラン全体のコンセプターとして迎えられた。あ、料理?お菓子は?移動の話を聞いてさっそく彼に会いに行き、店を変わった経緯を聞く。新コンセプトの食器使いを主軸に、スノッブなパリジャンが出入りするホテルのダイニングを仕切っていた。その後、取材で何度か訪れていたけれど、なかなか食べに来る機会のなかった「モンタランベール」に、夕立の残り香を楽しみながら出向いてみる。

「モンタランベール」のすぐ横に、今をときめく「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロビュション」がある。8時過ぎのこの時間、当然のことながら、ウェイティングの人々が雨上がりの通りに溢れている。お疲れ様です。待ち疲れちゃったら、こっちにおいでよ。ロビュションのカジュアルご飯はもちろん悪くはないけど、アランのご飯もイケルと思うよ。ロビュションっ子の私は、オープン早々、嬉々としてこの店に足を運んだのだけれど、選んだものが悪かったか、今ひとつピンとこなかった。コンセプト、雰囲気、サーヴィスは最高だったのだけれどね。ま、たった一度の失敗でめげてはいけない。なんてったって、私はロビュションっ子なんだから!次回はきっちり好みの料理が見つかるはず。

ヴァカンス入りしたパリのレストランらしく、こちらはいたって静かな「モンタランベール」。日頃この店に集う人々は、今頃サン−トロペやカンヌ、ビアリッツで顔をあわせていることだろう。木のぬくもりとシャープなラインが美しい、まさにこのホテルの雰囲気を体現しているレストランスペース。ナッツとオリーヴのアペリティフ感じのいいサーヴィス陣に迎えられ、コーナーの席にゆっくり腰を落ち着けて、まずはシャンパーニュ。グラスなのに4〜5種類もから選べるのが嬉しい。迷うことなくお気に入りのビルカール・サロモンを選んで乾杯。ナッツ&オリーヴをかじりながら、カルトを広げる。

シェフとの相性ってあるよねえ。カルトに並ぶ料理のほぼ全てが、私の琴線をくすぐってくる。店によっては、食べたいものが全然なくて困る、というケースもあるのに、ここの料理たちはぜ〜んぶ食べたい。デセールは言わずもなが。設備が整ってなくて、まだオートクチュール的なお菓子を作れない、ってアランが言ってた。来週から厨房工事に入って、秋には立派な設備ができるんだって。そしたら、またあの頃みたいな感動的なお菓子を作ってくれるに違いない。そうは言っても、今ここに並んでいるお菓子たちも十分おいしそうだけれどね。ここ数日のレストランがよいで、胃がちょっと疲れ気味。デセールしっかり食べたいし、料理は軽めに頼みましょう。

コリコリ食感がいい感じの白アスパラにパルマハム白アスペルジュとパルマハム、パルミジャーノを合わせた、さっぱりしたアミューズをいただく。アスペルジュ、これ生?にしては、微妙に火が通ったような食感。不思議だなあ。おいしいなあ。暑い夏にピッタリの突き出しだ。

アントレは、「カヴァイヨン産メロンのピノー風味」。メロンと言えばカヴァイヨン、カヴァイヨンと言えばメロン。アヴィニオン近郊、エルヴェのレストランのすぐ横の街カヴァイヨンは、フランスきってのメロン産地。この間遊びに行った時に、ちょうど観光局でメロン祭りが開かれていて、メロンものをいろいろ食べたっけ。「メロンについての記事を書くことがあったらぜひよろしくね!」と観光局の人は言うけれど、なかなかないだろうなあ、メロン記事を書かせてくれる媒体って、、、。

官能的な甘味を持つメロンを、コニャック地方のアルコール強化ワイン、ピノーで漬けた料理。メロンにポルトやミュスカをあわせて食べるのと同じ原理。でもこれ、そんなにピノーの香りがしないけど?ほとんど、そのままのメロン、という感じ。もちょっとピノーのあでやかな香りがついててもいいのにね。ま、おいしいからいいけどさ。しっとりとした冷たいメロンをパクパク。あ、なんだか、食欲出てきちゃった。

サーディン、チョリソー巻きプラは、「サーディンのチョリソー巻き」。今が旬のサーディンを開いて、中にチョリソーを敷いてクルリと巻き込んで焼いた一品。あ〜なんだか、スペインかポルトガルにいる気分。濃厚でスパイシーなチョリソーの味が脂の乗ったサーディンに沁みて、なんともいい感じ。プチプチ水なんかじゃなくて、ヴィーノ・ヴェルテとか飲みたいなあ。もちょっと体調がよければ、せめてキリリとした白ワインを飲むのに。いかんせん、この暑さにやられて体調不良。なさけない、、、。

味見させてもらった、子羊もサーモン尽くしの一品も、それぞれ品よくきっちりおいしい。天才的な料理では決してないけれど、誠実で丁寧な料理たち。悪くないよ、全然。プレゼンテーションの美しさというかかわいらしさは、さすが、パティシエの作品だね。

ポーションが大小2つ選べるのが魅力的。横のテーブルのおじさまお二人は、もちろんおっきなポーションで、しかも3皿食べきってる。さすがだ〜。私たち日本人には、ちっちゃなポーション2つで十分。この量なら、デセールも調子よくいただける。

ショコラのカネロニお待ちかねのデセール。ほんとは全部食べたいところだけれど、それはまた今度ね。今日は、「ショコラのカネロニ仕立て、ヴェルヴェヌのアイスクリーム添え」を選びましょう。「レ・ゼリゼ」でも、同じタイプのお菓子を食べたことがある。懐かしい味を求めてみよう。品のよいカカオの香りが詰まったあくまで軽い口当たりのショコラムースをなめらかなショコラのクーヴェルチュールで覆ったもの。クーヴェルチュールのつややかな質感がたまらない。ごく薄のクーヴェルチュールのパリパリ感ととろけるようなムースのハーモニーが絶妙。決してカカオのインパクトが強すぎず、あくまでなめらかで、絹のような手触りならぬ舌触り。あ〜、これがアランのデセールだ〜。久しぶりの再会に、ちょっと感動。

ヴェルヴェヌのアイスクリームは、味はいいけどテクスチャーは普通かな。アランならほんとは、もっと素敵なアイスクリームが作れるはず。知ってるもん、私。彼のシナモンやオリーヴオイルのアイスクリームのおいしさを。きっと器具がそろってないんだ。こちらは秋に期待しよう。十分おいしいんだけどさ、最高の味を知っているだけにちょっと厳しくなっちゃうね。

モモのコンポート♪つつかせてもらった「モモのコンポート、セージ風味 フロマージュブランのソルベ添え」も、思わず笑みがこぼれるおいしさ。どうしてまあ、こんなにモモがおいしいんでしょうねえ。今年、モモデセール、当たってるなあ。この間、「レ・ゼリゼ」ぜ食べさせてもらったモモのロティも絶品だったし、昨日「ル・ブリストル」で味見させてもらった、こちらもモモのロティもかなりの出来だった。モモ大好き!

かわいいカフェとおやつアプリコットとアーモンドのムースが添えられたカフェをいただいてごちそうさま。想像していた通りの料理とデセール。ものすごい感動はないけれど、奥ゆかしく感じよくおいしい。まさにアランの人柄が出てるよ。大きめのテーブルは使いやすい、食器やグラス類もいい。レストラン自体の雰囲気もセンスよくシックで素敵だし、かなりいいと思うな。問題はパンだけね。朝ごはんのパンはミュロさんのだけれど、夕食用のこのパン、どこで買ってるの?これもミュロさん??だとしたら昨日の残り?と思うくらい、つまらないパンだった。あれだけ変えてくれれば文句ないんだけれど。次に来るのは秋ですね。一新した厨房で作られる、アランの料理、そしてデセールにまた会える日を楽しみに!


mer.16 juillet 2003



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