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グルマン・ピュスのレストランつれづれ


ギッド・ルージュ(ミシュラン)2006年速報

michelinお待たせしました。2006年のミシュランフランス版速報です。

3月1日の発売に先駆け、2月22日、ミシュランフランス版2006年の公式発表が流れた。2月初旬に、日刊紙が情報をすっぱ抜いて流していたので、おおお!という感動は、もう3週間近く前に味わってしまっていて、今日の時点ではなんだかあまり興奮感はないのだけれど、まあ、書いていくうちに、思いが入ってくるでしょう。

新しい3つ星は、当然といえばあまりに当然。満を持して!という感じで、オリヴィエ・ローランジェの「ラ・メゾン・デュ・ブリクール」。何年も前から、ポスト3つ星、と言われ続け、去年の秋には業界誌「ル・シェフ」の“今年のシェフ”にも選ばれ、どこをどうつついても、誰からも文句の出ない、遅すぎるくらいの3つ星獲得。おめでとうございます、オリヴィエさん。ブルターニュで極上の魚貝類とファンタジーあふれるスパイス使いをもって、海賊料理と自称する彼の料理は、確かにお見事。個人的には、初めて行った2年前の夏は感動し、2度目に行った去年の春は普通、という、100点満点と60点の体験をしている。2度目は、案の定と言うかなんと言うか、シェフが不在だった。やっぱり、シェフがいるといないでは、料理に差が出るのかなあ、としみじみ思ったものだった。前日食べた、フィリップの料理のほうが、ずっとずっとおいしかったよねスピちゃん、たとえ無星であっても。私が今イチオシしているシェフの1人、バス・ノルマンディー地方のフィリップ・アルディ。秋に鶴見真吾出演のウルルンに出たのを見た人も多いでしょう。ぜひぜひ行ってみて!決して後悔しないから。あのオマール、あのアワビ、あのヒラメ、あのリエーヴル、あのアニョー。こういう店をみちゃうと、ミシュランの星ってなんだろうね、ってつくづく思っちゃう。

まあ、そんなことを言っていたら、話が続かない。星の話題で盛り上がりましょう。2つ星昇格組の個人的な注目は、メジェーヴの「フラコン・ドゥ・セル」。2004年のMOFを取ったエマニュエル・ルノーの店で、私は行ったことがないのだけれど、前からなぜか妙に気になる店だった。アラン・デュカスの地方料理イベント「フードフランス」にも初期に参加していたのだけれど、残念ながら取材する機会がなく、今でもすごく後悔している。いつか、このフランス最果ての、超高級ウィンタースポーツリゾート地に行く機会があったら、ヴェイラの店と共に訪れたい。

パリでは3つ星を返上して高級ブラッスリーとして再発進したアラン・サンドランスの新しい店が2つ星になって、みんなちょっとびっくり。星はもういい、と返上したところに、2つ星、つける?尊敬するロビュション先生のレストランたちも威勢がよく、パリにある2軒ともそれぞれ星を1つずつ加え、ターブルは2つ星に、アトリエは1つ星となった。

ロビュション先生は、今年はお祭り騒ぎ。モンテカルロの店も晴れて1つ星。当然だ。シェフが、敬愛するキュサックさんだもの。レゼルヴを2つに持ち上げた、ロビュション最愛の弟子。遅すぎる1つ星だし、2つ星になれる実力も十分にある。といいつつ、実は、まだ、モンテカルロに移ってからの彼の料理を食べたことがない。パリで何かのソワレに来たキュサックさんの即興料理しか食べてないんだ。だってモンテカルロにはピコちゃんち( ルイ・キャーンズ)があるんだもん。どうしても、ピコちゃんち優先になってしまい、キュサックさんのところに挨拶は行っても、また今度来ます〜!と言ってばかりで、ついつい、食事が出来ないまま来てしまった。でも、今年こそ行きます!花束持っておゆわいに。春に行けるよう、がんばろう。

ロビュション先生自身の店ではないけれど、彼が前々から高く評価していた、吉野建氏の「ステラマリス」も星を獲得。その料理のおいしさは前々からパリでも評判で、私自身も、あの味については、間違いなく1つ星クラスのものだと思っていた。当然過ぎる評価に拍手。星を取ったという非公式情報が流れたころに行ってきたけれど、繊細と大胆さが同居した、誠実でおいしい料理でした。3月8日に、祝賀パーティーを開くんですって。私の誕生日!と言うわけで、今年の誕生日は、「ステラマリス」で祝うことになりそう。

新1つ星で気になるのは、パリの「シェ・ジャン」。なんだかとっても面白そうなことが起こっている、と、このところずっと気になりつつ、食べにいけていない店。近いうちに、行かなくちゃね。ガニエールに経営が渡った魚料理の名店だった「ガヤ」もいきなり1つ星。デュカスに経営が移った老舗高級ビストロ「ブノワ」も、従来からの1つ星をキープ。当然だ。恐ろしく美味だもの。ひっくり返る、あの食材の見事さには、行きたいなあ。

オリヴィエさんの3つ星も、キュサックさんの1つ星ももちろんとっても喜ばしいけれど、今年のミシュランを忘れられなくしてくれたのは、ニースの松嶋啓介さん。オープンから3年ちょっとで、「ケイズ・パッション」は、見事1つ目の星を獲得した。

松嶋さんと最初にあったのは、1999年の3月。フランスに来たばかり、これから地方のレストランで修行をするんです、と、パリのレストランで食事をしながら話を聞いた。その後、各店での修業の様子や、店を開くと決めたこと、ニースに物件を見つけてオープンまでの細かいいきさつなど、いつも電話で報告してくれた。オープン後の店にも毎年足を運んできたが、彼の料理の進化ぶりには、行くたびに目を見張るばかり。遊び、仕事を問わず、なんやかんやと言い訳をしてはニースに飛び、シンプルで風味豊かな松嶋さんの料理に舌鼓を打っては喜びに浸ってきたこの3年間だったな。フランス滞在の一番最初の部分から彼の行動をずっと見続けてきて、人間ってこうやって成長するんだなあ、としみじみ思う。彼の軌跡をずっと追ってこられて幸せだし、これからもずっと追っていきたい。まだ28歳。この春には店を拡大リニューアルし、店名も「ケイスケ・マツシマ」に変更。松嶋さんの新しい挑戦が、今からとても楽しみだ。

こんなところかな、今年のミシュラン。「トゥール・ダルジャン」が1つ星に下がったのにちょっと眉を上げたり、ブリファーさんの「レ・ゼリゼ」が1つ星のままなのに憤ったりはしたけれど、概してまっとうな評価、と言えるでしょう。来年はいよいよ、若手世代の3つ星獲得に注目。ヤニック・アレノ、ジャン−フランソワ・ピエジュ、そしてティエリ・マルクス。すでに去年から“3ツ星へのエスポワール”評価を受けている3人の新しい世代の料理人たちの、それぞれ個性豊かなスタイルが200年にどう評価されるのか、実は去年の時点からずっと楽しみにしてきている。今年は3人とも時期尚早、と言うのは分かっていたので何も期待はしていなかったけれど、来年はこの3人のうちのだれかに、ブラヴォー!を言えるんじゃないかな。今からちょっとワクワクしてる。王道クラシックと持って生まれた美的センスに、カミーユという宝まで持っているヤニック。ファンタジーと遊び心、ピュアな精神にあふれたティエリ。大胆で独創的なジャン−フランソワ。できることなら、ヤニックにおめでとう!を言いたいなあ。チュッチュとビズーしながら、ね。ビズーするならヤニックが一番いいもん。いやこれは、何も私一人の意見じゃなくて、みんなそう思ってるよね?ね!?


fev. 2006



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