9日。
一週間にわたって「真夏の夜の夢」をさんざん楽しんだあとの、「ロミオとジュリエット」。もうカデールの出演日は終わっちゃったし、これでもか、というくらいに怪我人続出で、めまぐるしく変わったあげくのどうでもいい配役だから、ほんとは今夜も「真夏〜」に行きたいくらいのだけれど、まあ久しぶりに「ロミオ〜」に戻ってみましょうか。カデールが出ていた間は、彼ばかり観ていて、きちんと舞台全体を観ていなかったしね。
なんて思ったのが間違いのものだった。おめめパッチリ、可愛いエマニュエルのパックを観に、ガルニエに行けばよかった、、、。ああ、なんでバスティーユに来てしまったんだろう。とまあ、ひどい後悔をしてしまった今夜の「ロミオとジュリエット」は、今シーズン観てきた30回を越える公演の中で、最悪の舞台。なにがなんだか意味が全く分からなかった4月の「ノスフェラチュ」ですら、今夜に比べると全然よかった。
ガラガラ、とまではいかないけれど、なんだか寂しいくらいに空席が目立つ広大なオペラ・バスティーユ。すでにヴァカンス入りしたパリジャンの姿がめっきり減って、興味深そうに辺りを見回す観光客のパーセンテージが増える時期。分かりづらい座席表示に惑わされ、席を探すのに途方に暮れたり、洗面所の水の出し方が分からずにうろたえる人々の姿が目立つ。
そんな夜なので、席だって選びたい放題。せっかくだから、と、前の方の席をリクエストするけれど、あーあ、カデールが踊る日に、このくらい前の席だったらよかったのになあ、とため息。なんだかもう、どうでもいいよ状態で前奏曲に包まれる。2週間ちょっと前、初めてこれを観に来た時とは、随分違う態度だよなあ(笑)。それでもまあ、マニュエルとモランという、今回の「ロミオ〜」のベストカップルの初見は楽しみにしていたし、さすがにすばらしいロミオとジュリエット。
彼にとっては子供の遊びに過ぎないようなマニュエルのロミオは、決まりすぎなほどに決まっている。とうが立っているのはロランと同じで仕方のない話だけれど、もう、すべてが余裕。目をつぶっていたって全部踊れるよ〜ん、みたいな、それはもう、余裕しゃくしゃくのロミオ。隙がないぶんだけ初々しさや情熱には欠けるけれど、まったく非の打ち所がない。ニコラの、情熱と感情に溢れたロミオと見比べられなかったのは、本当に残念だ。怪我なんてして、ニコラのバカ、、、。
モランがいい。パリ国立オペラ座のバレエを見はじめてからずっと、エリザベス・モランはどうしても好きになれなかったエトワールだった。足元のぐらつき、決めるべき瞬間の弱々しさ、上がらない足、バレニーナにしてはほんの少し太い体、全てが気に入らなかった。表現力、テクニックとも素晴らしい!とちまたの評判は高いのだけれど、なにをどう見ても、いつもモランの踊りにはぐったりがっかりするだけだった。そんなモランが踊るジュリエットが、これはこれは、、、的なすばらしさ。「彼女、10キロはやせたんじゃない?」と、二日目に観た知人は言っていたけれど、確かにやせた。10キロとまでは行かないけれど、5キロは減らしたでしょう?
もう、ね、今までのモランはなんだったたんだ??と言うくらい、動きがシャープ。リフトされたり回されたりする時、いつも危なっかしかったのが、ビュン、キュッ、シャッと、もうそれは見事に、決まりまくり。こう要所が決まってくると、彼女のテクニックの上手さがよーく見えてくる。うまいわ、これは。さすがはエトワール、という踊り。あーあ、「真夏〜」の前半で彼女が踊ったエレナが観られなくて、ほんと残念。オスタばっかりで、もうイヤになっちゃったもの。
という訳で、主役の2人は見事。これについては、十分に満足!だったのだけれど、ああ、しょせんガラでなく全幕もののバレエでは、主役だけがよくてもダメなのよね、、、、と、心の底から痛感してしまった今夜の舞台。
メルキュッシオはいい。キルレの、役に慣れきった完成度の高いメルキュッシオ。さすがはキルレ。ドラヌエさんと並んで、こういう役、完璧にお上手。
で、問題はその後。
まずは、この作品で、主役2人とメルキュッシオに並び、非常に重要な役となるチバルト。前半をカデールが完璧こなしたあと、先週からジョゼのチバルトのはずが、ジョゼ、怪我でもしたか2回だけ踊って降りてしまって、最後に一度だけ躍らせてもらうはずだった、ステファン・ファボランが棚ぼたでこれからラストまでチバルトをやることになった。カデールに敵うはずもないけれど、ジョゼのチバルトだって一度くらいは観たかったな、とちょっと残念。ステファンねえ。まあまあ好きなダンサーだけれど、チバルトにはまだ10年早い。テクニックの問題もあるけれど、そもそも、ああいう存在感ある役を、彼にこなせるのかねえ、、、と、かなり不安に思っていたのだけれど、その不安を恐れに変えてしまうくらい、ステファンのチバルトには無理があった。
っていうか、しょせんやっぱりレヴェルが違うんだ、、、。カデールが好きだから、という個人的な問題ではなく、チバルトというキャラをこなすのに、ステファンクラスのダンサーでは、あまりに影が薄すぎる。物語をピシッと引き締める、強烈なキャラであるチバルトをカデールが踊ると、会場中が息を呑んで視線が彼にくぎづけになるのに、ステファン演じるチバルトは、ともすればどこにいるのか分からないくらい、あまりに薄い存在感。最前列で観ていてすら、本来あるべき強いチバルトの視線の迫力が全く感じられない。なんだかなあ、違う物語になってるぞお。
仕方ないか、人足りないんだから。「真夏〜」とこっちをかけもちして、この時期だけで3役も踊ってるダンサーまでいることだし。こういうこともあるよ、うん。と、必死に自分を納得させるのだけれど、チバルトから他に目を移すと、これまた胃がいたくなるような光景が次から次へと続いている。
おい!おい!!おーい!!!そのベンヴォリオを、なんとかしてくれー!カール・パケットのベンヴォリオにぐったり脱力してしまう。下手な訳ではない。なにかの間違いで昇進した、とはいっても、れっきとしたプルミエ・ダンスーなんだから。ただ、ベンヴォリオなのに、全然ロミオに共感していないし、ただ踊っているだけなんだもん。もともと、かなり体操部系の踊りをするカールくん。「真夏〜」では、わざと演技をするキャラ2種を踊って、それなりに素敵だったのだけれど、ベンヴォリオみたいに、わざと、ではなくて、でも感情を上手にたっぷりと出さなくてはいけないキャラは、カールくんにはちょっと辛い。なんてったってねー、この間の冬には「くるみ割人形」で、花のワルツの群舞踊ってた程度なんだから、それをこの半年で、いきなり上手くなれ、というのが間違っている。
ほんと、なんでプルミエになったんだろうねえ?スジェをもう一年やらせたって、全く問題なかったはずなのに。まあ、それだけ期待が高いということなのだろうけれど、大変だ、カールくんも。2年前までは、「コリフェにしては素晴らしい!将来がとても楽しみだ」と思われていたのに、今じゃあ「おいおい、プルミエなんだから、もちょっと頑張ろうよ!」だもんね(笑)。その上、これは彼のせいではないのだけれど、背が高く大柄なカールくんの周りは、マニュエル、キルレをはじめ、アレッシオくんたち、ちび軍団が囲む。自然、カールくん1人にょきっと飛び出て、おまけにシャープな動きを得意とする皆様の中、孤独に大きな体をもてあまし気味な踊り。ちょっとこれはねえ。アニエスがジュリエットを踊った時も、1人巨人になってしまったけれど、カールくんも同じ状態。かわいそうだ。
とまあ、納得がいかず、くすぶりはじめたイライラが爆発したのは、パリスが出てきた時。嘘でしょ!?ちょっと待ってよ、なにこれ?我慢にも限界があるっ!!!オペラ・バスティーユにちゃぶ台がなくてよかった。あったら、あまりの怒りに、ちゃぶ台ひっくり返しているところだったよ。
ステファン・ブイヨン。この春にカドリーユからコリフェに上がった若者。マリ−アニエスのパートナーとして、名前は知っていたけれど、顔も踊りもよく知らなかったダンサー。「おっきいのよ、体が」と、知人が前に話していたけれど、今目の前にいるそれは、おっきい、というよりも、ぬぼーっとした猫背で姿勢の悪い、顔立ちすらぱっとしないただの男。木偶の坊。思わず抱いたイメージはこうだった。
どうしてバレエ団に、ううん、そもそもどうしてバレエ学校に入学できたんだろう?思わず真剣に問うてみたくなるくらい、パリ国立オペラ座の美的基準から完全に外れている。顔はしかたないにしても、その猫背!ダンサーとは間違っても思えないような姿勢の悪さを前に、自分の目にしているものが信じられなくて、頭がくらくらしてくる。マリ−アニエス、あんな男でいいのかい?
「アハハ、確かにねえ。でもリフトは上手いから」と、後日、泣きながら訴えると知人はこう言うけれど、確かにあれだけ安定感がある体格していれば、リフトくらいは上手いでしょう。でもでも、あの姿勢とあの顔はちょっと許し難い。だって、パリスだよ!?キャプレットやモンテーギュの若者たちとか、アクロバットの若者の1人だったら許せるけれど、パリスだよ?若かりし頃のジョゼが麗しく気品高く演じた、“あの”パリスだよ?前半は、ステファン・ファヴォランが演じていて、あーあ、やっぱりジョゼのはよかったなあ、と思っていたけれど、もう、ファヴォランでいい!ブイヨンに比べれば、100倍ファヴォランのほうがいい。少なくとも、ファヴォランのパリスは、観るに耐えられた。
チバルト、ベンヴォリオで、我慢の限界に達していた緊張感は、いやに頬紅を濃くはたいたパリスの登場でプツリと切れて限界をはるかに飛び超えてしまい、マニュエルとモランのすばらしい踊りもむなしく、途方に暮れたまま3時間を過ごしたのでした。
この悲しさを慰めてもらおう、と美輪おばちゃんのところに駆けつけると、おばちゃんの姿はなし。「ヴァカンスなのよ〜」と、語るマリの美しい顔を目にしてようやく、悪いものを見てしまってげんなりしていた心が立ち直り、気分を変えて、いつもの通りに美味しいハモンセラーノやトルティーヤ、タコサラダで、スペインワインをグビグビやったのでした。
13日。
9日の「ロミオ〜」には心底参ってしまった。13日は、大好きなアレッシオ君が一度だけメルキュッシオを踊るので絶対に行こう、とずっと前から楽しみにしていたのだけれど、またあのチバルトと、そして思い出すだけでも恐ろしいパリスを目の当たりにするのは、いくらなんでも許して、お願い。どうせ16日の最終日にも観なくてはいけないのだから、13日は「真夏〜」の最終日に行きましょう。大好きなエルヴェ・クルタンがパリ国立オペラで踊る最後の舞台でもあるしね。ああ、アレッシオ君、ごめんね。あなたのメルキュッシオ、とても楽しみにしていたのだけれど、、、。
と、月曜日の夜と火曜日、嘆きながら金曜日の予定を考えていたら、おっと、またしても「ロミオ〜」の配役変更だ。これでかれこれ10回以上は変更になったよね、波瀾万丈の「ロミオ〜」だわ。今度はだれが怪我したの〜?と、ぼんやり配役を見ていると、え?え!?え〜っ!?ホントにっ!?パララララ〜♪タリラララ〜♪なーんと、カデールがチバルトに復活!
先月の29日をもって、今シーズンの日程を終わらせていたカデールが、嬉しいことにチバルトをまた踊る。うーれーしーよー!これで話は決まった。「真夏〜」にうっとり見惚れる場合じゃない。愛するカデール、そしてアレッシオ君観に、バスティーユに行きましょう。
そんな訳で、冷たい雨のなか、心躍らせながらバスティーユ詣で。もう観られない、と思っていただけに、カデールの再登場は、今シーズン一番嬉しかった出来事かもしれないな。カデールのすばらしさ、今日の「ロミオ〜」を観られる幸運について、とくとくと連れに語って、ワクワクしながら幕が上がるのを待つ。こんな時に限って、前から11列目。ちぇ、月曜日と席を代えて欲しい、、。
マニュエルとモランのカップルは、更に磨きのかかったすばらしい踊りを披露してくれる。マニュエルのロミオはますます完璧に近くなり、普通拍手が起きないところで、観客がたまらずに拍手を送ってしまう。ファヴォランも、「よかったー、今夜は荷が軽くて」みたいにくつろいでパリスを踊る。ベンヴォリオは今回のファースト・ディストリビューションだった、クリストフ・デュケンヌ。怪我人続出で、ラッキーなことになんと2回もロミオを踊らせてもらうことになったデュケンヌのベンヴォリオはなかなかよろしい。
さて、楽しみにしていたアレッシオ君のメルキュッシオだが、んー、まあ可愛いのだけれど、まだまだこれからかな、という感じ。一生懸命頑張っているけれど、しょせんまだ修行が足りない。コンテンポラリーだと、テクニックそのものの魅力で素敵に見せてくれるアレッシオ君の踊りだけれど、メルキュッシオみたいに、雰囲気作りが大切な役には、まだまだ経験不足。まあでも、いい経験になったよね。これからも頑張れ!
そしてカデール。お髭をそってしまって、ちょっと麗しさの増したチバルト。ああ、どうして彼が舞台に出るだけで、こんなにも雰囲気が変わってしまうんだろう。「すごい!あの人が出てくると、目が離せない。あの目!なんて強烈で存在感があるの!」初めてパリ国立オペラ座のバレエを観た連れが感嘆する。そうだろう、そうだろう。カデールの持つ、あの独特の雰囲気。周り中の空気を浄化してしまう、神々しく緊張感の走る存在。キャプレット家の舞踏会のシーンなんて、あまりに雄々しく美しい魅力に、頭がクラクラしてくる。ああ、あの鋭い視線の先に、私がいればいいのになあ。思いがけずにもう一度、カデールのチバルトを堪能して、興奮の中で3時間が終わる。
月曜日と同じバレエを観た、と信じがたい今夜の「ロミオ〜」。興奮覚めやらぬまま、更に強く降り落ちる雨をものともせずに、今夜もまた美輪おばちゃんちに赴く。おばちゃんたら、今週ずっとヴァカンスでいないらしいのだけれど、代わりに今夜も相変わらず美しいマリの顔を眺めながら、ひどくご機嫌なアプレ・スペクタクルのひとときを過ごす。
16日。
パリ国立オペラ座の2000−2001年シーズンが終わる。「ライモンダ」から「ロミオとジュリエット」まで、ヌレエフで開けてヌレエフで閉じたシーズンとなった。
ほんとはね、13日でラストにしたかった。今夜は、カデール踊らないし。誰も怪我をした訳ではないのに、変更になった先週後半の配役。思うに、9日のひどさに呆れて、「これはいくらなんでも、オペラ・ナショナル・ドゥ・パリの威信に関わる」と、ディレクション側が慌ててカデールを呼び戻し、どうにかその名声にふさわしい舞台作りに奔走したに違いない。で、さすがのカデールも「俺、15日からヴァカンスなんで」と、最終日だけはどうしても都合がつかず、やむを得ず9日の配役でいくことになったんだろう。(と、想像している。多分、当たらずとも遠からず、だ。)今回観た6回の「ロミオ〜」の中で、1〜2を争う出来栄えだった金曜日をもって有終の美としたかったのだけれど、まあ今夜は、「ロミオ〜」の最終日のみならず今シーズンの最終日でもあるので、やっぱり観ておきましょうね。
さすがは最終日。先週の月曜日や金曜日とは打って変わって、ぎっしり人で埋まったオペラ・バスティーユ。今度ここに来るのは、11月の「ラ・バヤデール」の時。その前に、オペラで「リゴレット」を観に来るかもね。もうすっかり、冬の様相を呈したパリだろう。ラストの悲劇を彷彿させる、悲しく美しい前奏曲に包まれながら、シーズン最後のバレエに浸りはじめる。
マニュエルとモラン、ほんとうにいいなあ。この2人、そもそも相性もよくて、よく一緒に踊る。今までも、「白鳥の湖」や「くるみ割人形」などを観てきたけれど、今回の「ロミオ〜」みたいに心から感動したのは初めてだ。全ては、モランを評価できるようになったおかげだ。よかったー、モランを好きになれて。秋の「ジゼル」、カデールのお相手はきっと彼女だろうし、楽しみだね。
初めて観るジェレミーのメルキュッシオは、キルレとドゥラノエ未満、アレッシオ以上。まさに、ジェレミーの実力通りのメルキュッシオ。テクニックは文句なし。表現力がもう少しね、というところか。「真夏〜」のパックの出来は完璧だったのに、メルキュッシオはいまひとつ。まあ、ジェレミーのキャラクターに、パックはあまりにもピッタリすぎた、というところかな。
カールくんのベンヴォリオ、ステファン・ファヴォランのチバルト、ステファン・ブイヨンのパリスは、さすがに覚悟していただけに、先週ほどのショックはない。なるべく観ないように観ないように気をつけながら、我慢できる範囲でときどき視界に入れてみる。すくなくともブイヨン、今夜は頬べにをつけてなくて、ほっとしたよ。あれには本当に、我慢がならなかった。割れるような拍手の中、マニュエルに肩を抱かれて笑顔で挨拶をするモラン。一生懸命に拍手を贈りながら、バレエに溺れてしまった今シーズンに思いを馳せる。
カデールの静謐なアブドラムに息を呑んだ「ライモンダ」。シュールなコンテンポラリーの真髄に興奮した「フォーサイス」。ニコラの元気がよすぎるアポロンに笑ってしまった「バランシン他」。グレーヴ(ストライキ)の嵐で混乱を極めた中、わずかに一度だけ見られた「ジュワイユー」のきらびやかな美しさ。ジョゼ・マルティネスというダンサーを心から評価した「くるみ割人形」。透明感のある美しさ、妖しい迫力、笑いに満ちたコメディーと、バランスよく楽しめた「ロビンス」。計りきれないカデールの才能と、マクミランという振り付け師に魅せられた「マノン」。神秘と秘めやかな華麗さに包まれた世界を見せてくれた「ジリ・キリアン」。頭がワヤになってしまった「ノスフェラチュ」。そして、その作品構成で私を夢中にしてくれた、ノイマイヤーの「真夏の夜の夢」に、ラストを飾る壮麗な「ロミオとジュリエット」。
39回。10月の終わりから今日までに観たパリ国立オペラ座のバレエ公演。え、オペラ?聞かないで、、、。たったの2回。「トスカ」と「ホフマン物語」だけ。いや、観たかったのはやまやまなのよ。「ドン・カルロ」も「パルジファル」も「ファウスト」も、とても観たかったけれど、全然チケットが取れなかったのだもの。仕方ないよ。
どれを取っても、座った席まで覚えている、楽しかったバレエの夜。(え、9日の「ロミオ〜」?いやあ、あれはひどかったけれど、あれはあれで、楽しめた部分もあったからいいのだ。1人、可愛い子を発見したもんね。)来シーズンは、ゲランの引退公演となる「ノートルダム・ドゥ・パリ」から始まり、エクのシュールでドキドキする「ジゼル」と続き、愛しいカデールの作品ものるし、ラストはベジャールの「コンクール」。どんな幸せと興奮をくれるのかを楽しみに、秋までバレエ抜きの毎日を過ごそう。
こちらも、おそらく秋までごぶさたするに違いない美輪おばちゃんのタパス屋で、おばちゃんがどんどん注いでくれるフィノをあおって、惚れきっているバレエ団と今シーズンの別れを惜しむのでした。
パリ国立オペラ座のバレエは、この世で最高の芸術の一つだ。
lun.9, ven.13 et lun.16 juillet 2001(01年7月)