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「カザノヴァ」怪しく美しいロランにピュスうっとり

「ラック〜」の合間を縫って、ガルニエで上演している「カザノヴァ」を見に行く。

アンジュラン・プレルジョカフという振付師を、どうしても理解できない私。数日前には、プレルジョカフによる講演会を聞きに行き、彼の世界への理解を深めようとしたけれど、なにがなんだかやっぱり???想像していたよりもずっと普通っぽくって控えめな感じのプレルジョカフに代わり、ブリジット総裁がベラベラしゃべりまくっていたのでよけいに分からなくなっちゃったのかもしれないけどさ。

Casanovaとまあ、何も理解できていないまま「カザノヴァ」鑑賞。2年前のシーズンに一度だけ見たそれは、?????????????という感想しか残らなかったっけ。オープニングのオレリーとロランがすごくきれいだったのが印象的だった。そのオレリーが怪我で出ない代わりはジェラルディヌ・ウィアール。ほんっとにどうでもいいダンサーだ、、、。そういえば、初演のファースト・ディストリビューションって、ニコラも入ってたんだよね。世にも珍しい、ニコラとオレリーが同時に舞台にいるシーンを楽しめるはずだったのが、あの時もニコラ、確か怪我でヤン・ブリダールに代わったんだっけ。そんなことを考えているうちにバスティーユに比べると本当にため息が出るくらい美しいガルニエの照明が落ち、懐かしい人間の体の器官をデザインした幕が上がる。

Casanovaシュールで怪しく美しく、と思えば怠惰で耽美で情緒的、そしてさらに奇妙でグロテスクな「カザノヴァ」の、一番の魅力はやっぱりロラン・イレールというダンサーだろうなあ。オープニングのパ・ドゥ・シス(と言っていいのかな?とにかく6人のダンサーが踊るのには間違いない)でのクールで品のあるキレのよい動きに魅了される。「コンクール」で見せてくれた渋くシャープな踊りも素敵だったけれど、こんな妙に色っぽさと激しさが錯綜する踊りを披露するロランって、本当に輝いている。ラストのロモリとのパ・ドゥ・ドゥなんて最高だね。悲壮感を帯びた肉声がまた、聞いてて惚れ惚れするんだ。苦悩に歪むお顔もまた一段と美しく、まったくもってよろしいよろしい。

大舞台を退いてしまい、バジルもジークフリートも踊ってくれなかったのが、しみじみ残念。エレガントと色気が同居する、ほんっとに飛び切りのダンサーだ。マニュエルと並ぶヌレエフ・ダンサーの代表格だけれど、この二人を比べる限り、私はやっぱりロランに軍配を上げてしまう。カッパみたいな前髪には笑ってしまったけれど(土曜日にはきちんと撫でつけてカッパでなくなってた)、ロラン・イレールというダンサーが発する美にうっとりする。

Casanovaマリ−アニエスのパワフルで茶目っ気たっぷりの体の動きは、こういう作品で本領を発揮する。なんという存在感と魅力を発しているんだろう。ミニマムの衣装の外側に見える筋力あふれる肉体にはちょっとびっくりしてしまうけれど、マリ−アニエスってやっぱりすてきだ〜。長い長いセリフは、やっぱり今回もよく理解できないけど、ま、いいか。愛してるよ!

対するヤン・ブリダールも、やっぱり私、好きなんだ。どこか投げやりでどーでもいい感じ。ぶっきらぼうに、でも決めるところは決める、彼ならではの雰囲気ある動きを、私はとても気に入っている。

ロモリ、ステファニー、それにジェラルディヌは、それぞれまあまあかな。どうしてもオレリーと比べてしまうジェラルディヌには申し訳ないけど、所詮レヴェルが違うもんね。素敵だったのになあ、オープニングや、ヤンとのパ・ドゥ・ドゥのオレリー。それにしてもなんでまあロモリって、こんなにもいろんな作品に出る訳?「プティ/ロビンス」、「ラック〜」にこの「カザノヴァ」。11月の「ロック/キリアン」も決定してるし、全作品、出っぱなしじゃん。いい加減、ウンザリする。どうしてまあよりによって、こんなにもロモリばかり見なくちゃいけないのだろう?これがカデールだったら、、、。せめてロランやニコラだったら、と思うと泣けてくるね、全く。

Casanovaその他のコールのダンサーたちは別に可もなく不可もなく。ダンサーたちのせいではなくて作品のせいだと思うけど。

2年前に比べれば、少しは楽しめるようになった(気がする)「カサノヴァ」。少なくともオープニングとラストは大好きだ。つまりはロランがしっかり出ている場面、ということかしらね。長すぎるのもよくないと思う。休憩なしの90分は、この作品じゃつらすぎる。オープニングの長さはあのままでよし。ラストは逆にもう5分くらい足してくれてもいい。その間のなにがなんだかよく分からないプレルジョカフ・ワールドを半分くらいカットしてくれると、もう少し楽に見られるんだけどなあ。

とまあ、たった2回しか見なかったのであまりいろいろ言えないけれど、思っていた通りあまり感動のない「カザノヴァ」鑑賞会となったのでした。ま、ロランを久しぶりに堪能した、ということでよしとしましょう♪

mer.23, sam.26 oct.2002(02年10月)
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