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世界初演「ドガの踊り子」作品はイマイチ?でもアニエスとヤンヤンのチャーミングな美しさにうっとり。 |
3日。 50日ぶりのバレエ♪3月13日の「アパルトマン」を最後に、オペラ座バレエ抜きの日々。長かったなー。 久しぶりのガルニエで見る作品は、パトリス・バールの世界初演作品「ラ・プティット・ダンスーズ・ドゥ・ドガ」。つまり「ドガの踊り子」ですね。去年「コッペリア」を見て以来、バールの作品を全く信用していない私。つまんなかった、あの「コッペリア」。ジョゼと、かわいい子たちをそろえたコールだけが楽しみだったっけ。この公演も、配役はイマイチ。アニエス、ヤンヤン、レティティアくらいかな、見たいと心から思うのは。主役は、初日を飾るレティティアが半分以上の公演をこなし、残りはオスタと新プルミエール・ダンスーズの
それなりに面白かったけれどヤンヤン抜きのパスポートでがっかりした気持ちを、夜の公演は慰めてくれる。会場が暗くなったところでアナウンスが入る。「今夜は、母親役はモラン、アボネ役はサイズになりました」。う!?あ!?お!?サイズって言った?言ったよね?うっほほ〜い、ヤンヤンが踊るんだ!?だからパスポート、出なかったんだねっ。すっかり嬉しくなってイスにきちんと座りなおす。オスタ&バールは見る気がしないものの、アニエス、そしてヤンヤンを見るために、しっかり気合を入れなくちゃね。指揮者が登場し拍手が沸く。「ラ・プティット・ダンスーズ〜」が始まります。
ダンサーたち。 バールは思っていた通り。まったくつまらない踊りを、ごくお上手にこなしてる。役も振り付けもたしかにつまらないけど、ジョゼが踊ればもう少しどうにかなるだろうに、、、。まあでも、想像通りだから許せる。 ろくでもないだろうと覚悟していたオスタは、そのかなりの覚悟をこなごなにするような、それはそれは恐ろしい演技を見せてくれる。今だに夢を見ているようだ、あれ、本当にエトワールなんだよねえ?大体スタイルからしてチュチュが似合わない、彼女。長いスカートならまだ我慢できるけど、足を見せる衣装は、彼女のちんくしゃさが余計に増長されて見てられない。ソロで踊ればわざとらしい演技が鼻につくし、アニエスと踊れば彼女にぶつかって流れを壊すし、コールと踊れば埋もれて存在感がなくなるし、ほんっとにこのダンサーは、どうしてこうも始末が悪いんだろう。情けない、というか呆れかえる。愛する妻の初日を見にきた旦那の姿が見える。一度聞いてみたい。正直なところ、妻の踊りをどう思ってるのか。 それに比べ、アニエスの美しさと素晴らしさときたら。オスタにぐったりした神経を優しく甘くなでてくれるような、優美で気品溢れた踊りでうっとりさせてくれる。バールがパートナーなのがほんと残念。ジョゼとだったら、「パキータ」や「ディアモン」で見せてくれた息を呑むような華やかな輝きを堪能できただろうに。でも十分。アニエスのかわいらしい演技と素晴らしいテクニックに魅了される。 もう1人のエトワールさんは、ま、友情出演ですね(笑)。演技力はさすがだけれど、やっぱりテクニックが追いつかない。これはモランだけのせいじゃなくて、振付家のせいでもあるけれど、長いソロにも退屈しちゃう。この夏の「ジゼル」で引退してくれるのかなあ?カデールと踊るんだよねえ、やれやれ。やってられないよ。
ブルノー、エルヴェ(クルタン)、ジャン−フィリップが踊るドゥミ・ソリストの役もなかなか。やっぱりエルヴェ、いいよねー。目立たない部分の何気ない遊びというか演技の芸が細かい。最近すっかり影が薄いけど、やっぱり好きです、このダンサー。ジルさんもいいね〜。ロマンティックなヴィオロニスト。こういう役、適役。細くて華奢でフェミニンな動き。久しぶりにジルさんのよさを実感。 女の子たちでは、こちらもドゥミ・ソリスト組の、キャロリン・バンスちゃん、ミュリエルがいい感じ。キャロリンかわいい。いつも半開きの口が好きよ♪ミュリエルもお上手。この間のコンクール、私だったらミュリエルをまずプルミエールに上げたのになあ。もっと躍らせて欲しいダンサーだ。 びっくりしたのがアリスちゃん。2幕のソリスト、怪我人が続出したのか、カドリーユのアリスちゃんが躍らせてもらってる。キャバレー歌手の役なのだけれど、これがとってもいいんだ。あだっぽくて妖艶で。1幕での娼婦役もダントツ雰囲気があってすてきだった。テクニックはもちろんまだまだだけれど、目を惹きつける動きと顔の表情がすてきだな。 音楽は悪くない。バレエ音楽と言うよりは、いまどきの映画音楽、という感じ。でなければミュージカルやショー音楽。一度聴いただけで覚えてしまいそうなフレーズだらけ。フランス人にはあまり受けがよくなく、浅はかで軽々しいといえばそれまでだけれど、それはそれで悪くない。夜毎、フランス人が肩をすくめる横でアメリカ人が音楽最高だわ!と言うのを聞かさせるのには、笑ってしまうけど。そう、ラスヴェガスのショーのノリに近いものがあるのかな。スペクタクル性抜群。 スペクタクル性と言う点では、舞台も同様。舞台の上にガルニエのシーンを再現したり、いかにもパリのキャバレーらしい舞台を作ってステレオタイプな頽廃時期のパリを演出したり。オペラ座のレッスン場も当時のものを丁寧に再現。舞台構成、とてもいいね。うん、スペクタクルだよね、この作品。計算された演技力とかテクニックの深さとかがあまり要求されない(っていうか、要求されてもできないダンサーが出てる?)。饒舌に感情表現する音楽とショー的スペクタクル性で楽しませてくれるんだ。だから、華やかでない部分に飽きるんだろうなあ。ソロやパ・ドゥ・ドゥより、群舞の踊りのシーンのほうがなんだかワクワクして楽しいもん。変な作品。 ストーリーはいいね。実話に基づいた、踊り子の話。ふーん、悲劇だったんだ。今とは、その社会的立場が全く違う当時のダンサー(踊り子)。あの時代の風俗文化がよく分かって面白い。 まあ、想像通りの出来だったよね。アニエスとヤンヤン、そして衣装の素晴らしさを堪能できただけでよしとしよう。スピちゃんに付き合って、出待ちなどしてみる。なかなか出てこないアニエスを待ちながら、スピちゃんは、アニエスに話しかけるためのフランス語の習得に一生懸命。最後の最後に出てきた 5日。 確かに作品自体も悪い。でも、オスタもかなり悪い、というのを実感する。そう、今夜はレティティアの日です(^^)。なんだってまあ、オスタの日が前から2列目ど真ん中で、レティティアの日が10列目のちょっと横の方の席なんだろう?人生って理不尽だ、、、。でもね、遠くからでもレティティアのよさはよく分かる。もちろん、感動的な演技と踊り!とは言わないよ。振り付けも振り付けだし、レティティア自体も演技面ではまだまだ未完成。でも、例の素晴らしいテクニック、持ち前のチャーミングなかわいらしさとで、オスタとは比べ物にならないくらいまともなプティット・ダンスーズを演じてくれる。 演技だって、昔に比べれば上手くなったよね、レティティア。少しずつだけれど徐々に成熟してきている彼女の演技。あと数年もすれば、素敵なジュリエットやマノンが踊れるようになるんじゃないかな。虐げられていたプルミエール時代からレティティア大好きな私としては、彼女の成長がとても嬉しい。 そのほかは特に感想なし。アニエスとヤンヤンはより一層チャーミングに素晴らしく、バールは相変わらずつまらなくお上手に、それぞれ踊っているのでした。 6日。 思ったよりも仕事が速く終わったので、ダメもとでガルニエに駆けつけると、ラッキーなことにまだチケットが残ってた。またまた前から2列目の中央席。どーしてオスタの日ばっかりこんないい席なんだろう?まあいいや、今夜はアニエスの最終日。2回しか見られないと思っていたアニエスを堪能しましょう。 なかなか照明が落ちない。7時半をたっぷり10分は回っただろうか。いつもは係員が出てきて「ケイタイの電源は落としてね」とか、配役変更を告げるのだけれど、なぜかなぜかディレクトリスのブリジットさんが舞台の袖に出てくる。なに。どうしたの?ブリジットさんがでてくるなんて初めて。一大事!?と戦々恐々として見守る中、「今夜は、クレルマリ・オスタに代わってメラニー・ユレルがプティット・ダンスーズを踊ります」とブリジットさんが告げる。おや、オスタ、直前に怪我したのかしら?どうせだったらレティティアに代わってくれればよかったのに。まいいか、メラニーも一度見ても悪くないでしょう。 確かに悪くない、オスタよりはね。でも別にたいしたこともない。どーでもいい。気持ちは、アニエスとヤンヤンで十分報われている。それにコールの子達やブリダール演じる、ドガをイメージした黒服男を見ているだけで満足だ。 今夜は、キャバレー歌手をステファニー・ロンベルグが踊る。メラニーと一緒にプルミエールにあがったダンサー。まあまあ上手いと思うけど、個人的には大して好きじゃない。今年のプルミエールは二人そろって顔が怖くてイヤだよ。プルミエは、アレッシオとエルヴェという、いい男二人のそろい組なのに。 ところで、オスタ。怪我で出なかったのかと思ったら、なんとなんと、今夜が踊る日というのを忘れて劇場入りしなかっただけなんだと。どーいうんだろうねー、このダンサーはほんっとに。自分の公演日を忘れる?聞いたことないよ。全くどこまでも始末が悪い、、、。どうせだったら、毎回公演日を忘れてくれればいいのにねえ。 9日。
アニエスの役を踊るデルフィヌにはちょっと肩をすくめる。アニエスと比べちゃいけないけれど、やっぱり全然違うんだよねー、美しさと気品が。旦那と息子が見に来てる。あと10年もすれば、ここの息子もマチューのようにオペラ座の期待の新人になるんだろうね。せいぜい5〜6歳だと思うけど、すでに完璧なダンサー体系。ママに似て小顔でよかったね。 映画とミュージカルとキャバレーショーを足したような、なんだかよく分からない公演が終わる。期待通り、というか期待しなかった通りの「ラ・プティット・ダンスーズ・ドゥ・ドガ」。まあ、こんなものでしょう。さ、次に行こう、次。ニコラ、ジョゼ&アニエス、マニュエル、ロランとカデール、それにマリ−アニエスにアレッシオ、怪我が治っていればバンバンとエルヴェまで登場し、セバスチャンやオドリックたちも踊る、豪華絢爛大好きダンサー総出演の「ベジャール特集」が、もうすぐに始まるんだもんね! |