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オペラ座の男性トップダンサー総出演!豪華で素晴らしい「ベジャール特集」

フランス人は、モーリス・ベジャールが大好きだ。マルセイユが生んだこの振付家を(ダンサーとしてよりも、やっぱり振付家としての名声が高いよね)、とても愛している。私は、といえば、まあ別に、、、。彼の作品、あまりよく知らないし。オペラ座で唯一見たことがあるのは「ル・コンクール」。これは大好きだった。ストーリ性、演出、舞台装置から振り付けまで、とっても好み。もちろん、馴染んでいるオペラ座のダンサーたちが踊ったから、というのもあるだろうけど。あとは、みんな画像でだけ。どれもこれも、、、。ああ、「春の祭典」はよかったなあ。「トゥ・プレ・デ・ゼトワール」でちらりと映った「第九」も好みだと思う。パリにもよく公演に来るベジャールと彼のダンサーたちだけれど、いかんせん人気でなかなかいい席が手に入らないと言うのもあって、あいも変わらずオペラ座一筋の日々。そのオペラ座のプログラムで行われる「ベジャール特集」。

14日(水)

フランス人のお国芸グレーヴ(ストライキ)の影響で、前日の初日公演はキャンセルになっちゃって、今日から公演スタート。っとにもう、フランス人のグレーヴ好きには敵わない。今日だって、交通機関はほとんど麻痺。一日、いかにして移動をするかでテンヤワンヤだった。最後の仕事場が幸いバスティーユから近く、テクテクテクテク歩いてバスティーユ入り。ぎりぎり開演前にたどり着き、チケットゲット。グレーヴのせいで、お客様の入りも今ひとつかな。それとも、グレーヴにもかかわらず、これだけ入るのはさすが、と言うべきか。もらった席は、2列目ど真ん中。前に座るのは、ル・フィガロのバレエ評論家。ツルリンな頭のてっぺんがちょっと邪魔なのが玉にキズだけれど、ま、いいでしょう。

「火の鳥」ラストシーンまずは「ロワゾー・ドゥ・フー(火の鳥)」。1970年に、パリ国立オペラ座のためにベジャールが創造した作品は、このカンパニーが生み出した史上最高のダンサー、ミカエル・デナールにささげられたもの。20年以上に上演されることのなかったこの作品が、今夜、ニコラ・ル−リシュの体躯によって再現される。熱い。体中の血が沸きかえる。アドレナリンが高くなる。

そもそも、敬愛するストラヴィンスキーの音楽が好きだ。それまであまり好きではなかったストラヴィンスキーと「ロワゾ〜」に、激しい音を立てて恋に落ちたのは、6年ほど前にパリでウィーンフィルの音に触れたときだった。背筋がビリビリ震え、息が止まりそうだった。最近は、演奏会に行く機会もめっきりと減り、このバレエ組曲を生で聴くチャンスはほとんどない。あの夜が最初で、次はこの間の秋の、マリインツキー公演の時。夜中近くでもう眠たい。ヴァシニョヴァが踊る火の鳥を、半分寝ながら聴いたっけ。音は悪くなかったはずだけど、感動的ではなかった。ウィーンフィルという、生ける奇跡のような音のイメージは、もう記憶にあまり残っていない。なんちゃってオケのパリ国立オペラ座の音とウィーンの音を比べられないのは幸せと言うものだ(笑)。

いいよね〜、この旋律。低音弦からはじまり、幾つかのクライマックスを経て荘厳なラストへと向かう音のつながりが、とてもとても私は好き。演奏会ではなくバレエ公演の中で聴くと、この音楽がバレエ用に作られた、という事実を再認識する。オケも頑張ってる。全然悪くないよ。饒舌で印象的。

そんな音楽に乗って、ニコラが今夜は極上だ。100%とは言わない。「キショット」や「アルレジエヌ」で一度ずつだけ見せてくれた最高を知っているから。でも90%の実力は出してるでしょう。音楽自体がもたらす感動もあるのだろうけれど、なんだかやけに素晴らしい感動と興奮を与えてくれる。そのダイナミックでパワフルな跳躍は健在だけれど、今夜のニコラのインパクトは足よりも腕。知らなかったよ、ニコラがこんな腕の動きが出来るなんて。まさに“鳥”だ。それ以外の何でもない。舞台の上で繰り広げられる、一羽の鳥の動きに魅了される。表現力豊かにしなやかにパワフルにうねる体から、一瞬たりとも目が離せない。おおおお、これぞ、ニコラ・ル−リシュだ。なんともいえないカリスマ性と迫力を兼ね備えた、類まれなダンサー。分かってる。ニコラよりも絶対にミカエル・デナールの方が、もっと恍惚とした火の鳥を演じたであろうことは。叶うものなら、33年前に戻ってデナールの「火の鳥」を見たい。でもそれが叶わない今、このバレエ団にニコラがいてくれたことに感謝するのみ。だって、ニコラ以外、誰がおどれる、この強烈な役を?

今回、配役は、ニコラ以外は、まずバンバン。怪我ばかりで、今回だって踊れるかどうかはなはだ不安だけれど、まあ確かに、バンバンはかなりいいと思うんだ。場合によってはニコラよりもいいくらい、バンバンはきっとこの役が似合う。6月はじめ、踊ってくれることを心から願おう。そして笑っちゃうことに、カールもこの役に挑むんだ。どーして?そりゃまあ、他に役にぴったりするダンサーは確かにいないよ。他のどのエトワールもこの役のタイプじゃないし、プルミエにだってこの役を踊れるようなダンサーはいない。でもカール???笑いを通り越してあきれ返るばかり。「初演のミカエルが金髪だった。今回も、金髪のダンサーが欲しい」とのたまった(らしい)ベジャール。結果、オペラ座ディレクションは、かわいくてかわいくて仕方のないカールをこの役に抜擢した。カールがどんなひどい火の鳥を踊るのか、想像するだに恐ろしい。

今夜は、ラストに登場する準主役、フェニックスを踊るカール。ほんとなら、バンバンが初日のフェニックスだったはずなのにぃ、、、。グリコのおにーさんを彷彿させるカールの登場に思わず吹き出す私。前に座るルネ・シルヴァンのつるりん頭に唾、かからなかったかなあ。汗が飛び散り激しい息遣いが聞こえる、熱い熱いニコラが踊り果てた後に現れるカールは、笑えるだけ。別に悪くはないけれど、なーんの感動もない。これは役のせい?ううん、カールのせいだよね。あー、バンバンで見たかった。

周りを固めるダンサーたちも、まーまーかな。ニコラの横に立つローレンスがなかなか。あまりきちんと見る機会がないのが残念。結構好きなんだけど。ナタリーはこういう役にはピッタリだし、怖い顔のカレンもいい感じ。男性陣は、私にとってはどーでもいいダンサーたちばかりだけれど、嫌いな方のステファンが悪くないのは認めなくちゃいけないね。カールが火の鳥を踊る日は、ステファンがフェニックスを踊る予定。カールよりまともかもしれない。

シンプルな舞台、印象的な振り付け、饒舌で熱い音楽、そしてニコラ・ル−リシュというダンサーの力を存分に楽しめる、体が熱くなる素敵な作品だ。

あがった息を静めるに足りないくらいの小休止のあと、スルリと上がる幕の向こう側に、凍れるようにピュアなライトに照らされて、マリ−アニエスとジャン・ギーがいる。あきれるほどに美しい、「オピュス・サンク」マリ−アニエスとじゃんぎー「オピュス・サンク」という作品。ウェベルン作曲の、簡素で思い出したかのように刻まれる音が、こちらもまたシンプルで幾何学的な振り付けにピッタリとマッチしている。好きよ、こういうの。バランシンをウルトラシンプルにした感じ。あらゆる動きが、人間の体を美しくするために考え出されたみたい。

マリ−アニエスの、人間離れした腕が足が、時に饒舌に時にいさぎよく動き、私の視線を釘づけにする。ひゃ〜、きれいだ〜。こういう役は、アニエスのほうが似合うとは思うけれど、マリ−アニエスはマリ−アニエスで十分過ぎる印象と迫力、そして美しさを兼ね備えている。アニエスとの対比が楽しみだな。ジャン・ギー?ああ、あんまり見なかった。別にいいんじゃない。体の美しさはこの作品にあってる。思索的な弦の音に操られるように動く二人の体。なんだか妙に心引かれる小品だ。

マニュと、編み物をする四人の女の子再び小休止の後、「フラーズ・ドゥ・クワチュオール」。ベジャールが、マニュエルのために振付けた、世界初演作品だ。はっきり言って????マニュへのオット・クチュール作品な以上、マニュ臭いのは致し方ないのだろうけれど、それプラス、作品の意味が分からない。この悲鳴の意味は?この女の子たちの意味は?この語りの意味は?この雑音の意味は?

ベジャールの最近の作品を画像で見かじる限り、あまり好みではなかったけれど、これも、同じ系統な気がする。ベジャールの作品、私は多分、古い方が好きなんだなあ。「オピュス・サンク」も1967年の作品だし。しかし、30年以上も前に「オピュス〜」や「ロワゾ〜」を作ったベジャールってやっぱりすごい。はいはい、分かった。あなたはマニュね、って感じで終える。2回だけ、ジェレミーが踊る。ちょっと楽しみ。

アントラクト後は、「マンダラン・メルヴェイユー」。生意気にも、カデールを差し置いてロランが初日の配役。ま、いいけどね。バルトークの音楽もスリリングな作品は、ロビンスの「ザ・ケイジ」をちょっと彷彿とさせる。魔性の女が男を陥落していくストーリー。この魔性の女がポイント。男性ダンサーが女装して踊る。初日はアレッシオ。これが妙に美しい!はじめ舞台に出てきたとき、目を疑った。誰これ!?イザベル・シアラヴォラを男にした感じかなあ。体自体がマッチョなので、男性ダンサーだ、ということはすぐに分かるけれど、顔、きれいなんだよねー。あだっぽい流し目、つややかな唇が、妙に色っぽい。うひゃ〜、アレッシー、きれいだー!帽子をかぶって顔がよく見えないその他大勢にいるはずのセバスチャンを探す余裕がない。オドリックはすぐに分かったよ。あの姿勢の悪さと背の高さで(笑)。

アレッシオに陶然と見とれているうちに、ロランの登場。いいですね、さすがに。貫禄の演技。淡々とした演技の中に、ロランのキャリアと才能が光る。ほんと言うと、期待はもう少し高かったのだけれど、アレッシーを見るのやセバスチャン探しに忙しく、なかなかロランに集中できない私が悪いんだ、きっと。また次の時にちゃんと見るよ、ロラン。今夜でも十分だけどね。

「牧神の午後」のラストを思い起こすシーンが暗くなり、会場は、この日4度目の拍手が響き渡る。満足げなベジャールが舞台に立ち、大きな拍手を全身に浴びている。私も負けずに拍手を送る。男性エトワール総出演(ちなみに、男性プルミエも総出演)という、超豪華キャスティングを実現させたベジャール。「オピュス・サンク」を抜かし、男性ダンサーのためにある作品ばかり。パリオペラ座の男性陣の実力を堪能できる、内容の充実した、素敵な公演だ。

16日(金)

初日と全て同じキャストの二日目。改めての感想は特にないかな。ストラヴィンスキーとニコラはより一層胸を熱くしてくれるし、カールは相変わらずグリコのお兄さん。ほんとに、どんな火の鳥を踊ることやら、、、。

マリ−アニエスにはため息あるのみ。ジャン・ギー、しっかり彼女を支えてあげてよ!ジョゼと一緒に踊る日を楽しみにしてるよ。マニュはいつもながらにマニュマニュしい。お上手だけどね、作品自体がやっぱりピンと来ない。フランス人はこれ、好きらしくって、おっきな拍手とブラヴォ!が沸き起こる。

「中国の不思議な役人」ロランと、きれいなアレッシオアレッシーは一段と妖艶にあでやかに、うん、少しずつ女らしさが身につき始めてきてるんだね(笑)。公演後、「すっごくきれいだったわ!」とアレッシーに告げると、「ほんと?気に入ってくれた?」と嬉しげ。横に立つミュリエルは爆笑。いいなあ、至近距離でアレッシーの化粧した顔が見られて。わたしも見たい♪

今日はしっかりロランも堪能。ふむふむ、さすがですよね。半分引退した感のあるエトワールの、会心の演技。よくもまあ、これだけ瞬きしないでいられるねえ。とまあ、だいぶ作品にも慣れてきて、流れとの呼吸も合ってきた。さあ、いよいよ次はカデールだ。この役、ロランもいいけれど、カデールにもすッごくよく合うはず。ああ、日曜日が楽しみだ〜。

18日(日)

神様メルシー!一昨日に引き続き、一列目、しかも真ん中。指揮者のタクトがちょっと邪魔だわ、と贅沢な文句を言いながら席に着き、1時間半後のカデールに思いを馳せつつ、とりあえずはニコラ鑑賞で我慢する。

いいねえ。ニコラがこうやって、舞台いっぱいに迫力を散らしながら踊るのを見るのって、幸せを感じる。振り付け自体のよさもあるのだろうけれど、なんだかとってもニコラがいい。こうやって至近距離で調子のいいニコラの踊りを目にしていると、彼のパッションというか力強さが、直接神経に響いてきて、恍惚状態に陥る。ニコラだけが味あわせてくれるトランス状態にしばし漬かって、「火の鳥」を堪能。

「オピュス・サンク」エルヴェとデルフィ今夜の「オピュス・サンク」は、エルヴェとデルフィヌ。あら、デルフィヌ、マリ−アニエスと衣装が違う。マリ−アニエスは黒のタイツだったのに、デルフィヌはエルヴェとおそろいの白いタイツだ。アニエスはどっちなんだろうね。

エルヴェ、素敵だ。このダンサーがエトワールになるのは確実。問題は、いつなるか。まあ、カデールの引退まで、もう少し待ってちょうだい。今シーズンは、ジークフリート、アミンタと、強烈な主役デビューを二つも果たしてくれた。ジークフリートは、ジャン・ギーはもちろんジョゼよりもずっとよく、バンバンを逃した私にとっては最高のジークフリート。アミンタは、マニュに負けず劣らずの質の高い役作りだったし、彼は本当にオペラ座の至宝になるだろう。初めて彼を認識したのはいつだったっけ?2シーズン前の「ソンジュ〜(真夏の夜の夢)」だった。技術はまだ未熟ながら、なんともいえない舞台支配力とふてぶてしいまでの存在感に、ん?誰、このお尻のおっきなダンサーは?って思ったっけ。あれから2年近くがたち、エルヴェは、目を見張るばかりにテクニックを向上させ、いつの間にどうやって?と思わせるほどに、ロマンティックでリリックな表現力も身につけた。この表現力は、多分天性のものだろうね。存在自体がロマンティックなエルヴェ。バジルやデジレなんかは似合わないだろうけれど、ロミオやデ・グリューなんかをやらせたらものすごいだろうね。今度の「マノン」、シャン・ギーやマニュあたり、ちょっと怪我してみればいいのに。そしたらエルヴェのデ・グリューが見られる。

そんなことを思いながら、エルヴェにみとれる。キレがいい。ジャン・ギーに比べると、若いからなのかな、一つ一つの動きがあくまでもシャープ。なが〜い手足がシュンシュンッと空を切る。サポート面はまだ完璧とは言えず、時々顔をこわばらせてデルフィヌを支えているけど、ソロ部分は圧巻ですね。顔の小ささ、体の美しさ、テクニック、まさにこの作品を踊るにふさわしいダンサーだ。

デルフィヌは、きれいだけれどそれでおしまい。マリ−アニエスが与えてくれたゾクゾクするような怪しい美しさは彼女にはない。この作品にはそういう美しさは必要ないのかもしれないね。優等生的に、一つ一つのフォルムをきっちり優雅にこなしていく。私はもう少しパッションがある動きの方が好きだけれど、これはこれでいいのだろう。好みの問題でしょう。ただ、エルヴェと並ぶと、年が目立ちすぎる。幾つになったんだろう、デルフィヌ?体力の衰えが、顔にも体にもそしてテクニックにも出てきちゃってるのが悲しい。3年位前には大好きだったのになあ。こうやってみんな年を取っていくのね、、、。

マニュはもういい(笑)。3回見てもやっぱり???が頭に渦巻くのみ。横のマダムも???アントラクト中、二人してマニュに???し、カデールの美しさについて私は彼女に語りまくる。

で、そのカデールです♪

「中国の不思議な役人」カデールふわああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。こんなにも高い期待をさらに上回った演技を見せてくれるカデールって、一体なに?強烈だ。ロランが霞む。あれは一体なんだったんだろう?って感じ。登場シーンからしてインパクトが全然違う。人力車から降りたカデールは深々と帽子を被り、一番低くて近いところにいる私からですら、その美しい目がほとんど見えない。目の表情を排除して、鼻と口、あごのラインだけが伝える、淡々とした中国の役人像。目の印象がないだけに余計高度な表現力が要求される、腕や脚の動き。すごいよ。けれん味溢れる演技は、他の誰にも真似できっこない、カデール・ベラルビというダンサーならではのもの。帽子をとったのちの演技も圧巻。ああ、なるほど、こういうストーリーだったのか、と、カデールの何気ない、でも完璧に計算されつくされた細かな演技を目にしては、作品の流れを納得する。あ〜、なんでこんなダンサーが存在するんだろう?レスコー、アルベリッヒ、アムール、ベラ・フュギュラ、ティバルト、アパルトマン、アブドラム、ロットバルト、ペトルーシュカ、、、。彼が演じる様々な役を見るたびに、カデールの新しい一面を見せつけられ、そして私はより一層、このダンサーの魅力にはまっていく。

今夜は、マロリーが女役。マロリーが女装するなんて、似合いすぎてしゃれにならないなあ、と、彼の初日を楽しみにしてた。昨日、ガルニエにNDT公演を見に行ったら劇場でマロリーに遭遇。同じベンチの横に座っているマロリーをしげしげと眺めてしまう。この顔、化粧しないで全く素のままで女性になれるよ。あ、無精ひげだけ剃った方がいいねえ。

そんなマロリーは、まじにしゃれにならないくらいに美しい。もともとの体の線の細さが女っぽいったらもう、、、。アレッシーはマッチョなので、一目で、ああ男性が女装しているんだ、って分かるけど、マロリーの場合はそうはいかない。ちょっと離れたところから見たら、これ、女性だと思っちゃうよね、というくらい、体の線から身のこなしまでおんなおんなしているマロリー。いいなあ、カデールとキスできて。うらやましい。

ギャング団のボス、みたいな役のヤン・ブリダールがまたいいんだよね!ロラン&アレッシーの日はロモリが踊るから全然見てなかったけれど、今日は、カデールとマロリーの合間を縫って、チラチラとヤンも観察。なんて表情をするんだろう。「クラヴィゴ」のカルロスに負けず劣らずすばらしい!酷薄で悪魔じみて、かなりの狂気が混じっている。みんな、この地味な役の表情まで目にしていないみたいだけれど、気をつけてヤンを見ていると、その表情に唖然とする。大好きだよ、このダンサー。

カーテンコールの挨拶時にも、きっちり中国人しながら出てくるカデールに最大の賛辞を拍手で送りつつ、いつまでもいつまでもその麗しい顔を眺める。カデール・ベラルビの才能に触れられて、私は本当に幸せだ。

mer.14, ven.16 et dim.18 mai 2003(03年5月)
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