top
「クレメニス&ブラウン&プレルジョカジュ&バランシン」

「バランシン&ロビンス特集」と平行してガルニエで上演される、「クレメニス&ブラウン&プレルジョカジュ&バランシン」。全ての作品を見たことがないながらも、配役のよさに期待を膨らませ、それなりにワクワクしながら赴いた16日のジェネラル(ゲネプロ)で、体が固まる。なにこのプログラム?先週、初日を見たバスティーユの「イヴァン・ル・テリブル」が今シーズンきってのつまらない公演だと確信した矢先に、「イヴァン〜」よりひどい公演じゃないかしら、これ、、、、。とりあえず、一つずつ、取り上げてみましょう。

アレッシー、セリーヌとジルさんまずはクレメニスの「パヴァーヌ」。お馴染み、ラヴェルのピアノ曲がアンニュイに流れる中、カデール&ノルウェン&ロモリが踊る。淡々とした動きがなんだかとてもつまらない。カデールの印象的な動きをもってしても、あまり視線を向けたくないロモリのお顔と、ごく平凡なノルウェンの動きの方が強すぎて、カデールの魅力すら堪能できない。ノルウェンねえ、、、。久しぶりに出てきたと思ったら、こんなつまらない踊り。プルミエールになってから、本当に全然ぱっとしなくなっちゃって残念。訳が分からないまま、7分がぼんやりと過ぎる。

キャロリンと、、、オーレリア・ベレかな。それかローレンス。どっちだっていいや続いて、ブラウンの「グラシアル・デコイ」。「パヴァーヌ」がすばらしく見えるくらい、こちらはもっと訳が分からない。無音の中、舞台奥には4枚のモノクロ写真が次々と映し出され、舞台には2〜4人の、ふわりとした白い衣装に身を包んだ女の子たちが体を動かす。見るに耐えうる動きをしてくれるのはミテキだけ。他は、キャロリンにしろローレンスにしろ、ううううう〜ん。その他二人は問題外。知り合い曰く、「ミテキはベクトルの法則を知っている」と。なるほどね、そこがポイントなのか。他の4人が繰り広げるごくごくつまらない動きをミテキがすると、妙に遠心力や重力が働く感があって、思わず目がひきつけられる。いいダンサーだね、ミテキはやっぱり。昇進コンクール、受ければいいのに。頭の中が真っ白になったまま、18分の終了。ふう、疲れる公演だ。

白のタンクトップがアレッシー、暗めの色のシャツがバンバン全く期待していなかったプレルジョカジュの「アン・トレ・デュニオン」が、前半の疲れを吹っ飛ばしてくれる。うわあ、はじめてだね。プレルジョカジュの作品を気に入るのって。先の2作品があまりにつまらなかったからかもしれないけど。ロラン&ロモリが繰り広げる、二人舞台は、ゲイの物語なのか友人の物語なのか今ひとつよく分からないけれど、とにかくいい。静謐でちょっとシュールな雰囲気の中、息のあった精密な動きが目を釘付けにする。ロラン、いいね〜っ!この役、カデールもやるのよね、楽しみ。(と思っていたら、カデールはロモリの役、と後で知った。)ロモリの怖しい顔にもかかわらず、ロランを見ているだけで見ごたえのある作品。あっという間の22分。ようやく見るに耐えうるダンスが登場。

最初がヤンヤン&マリ−アニエス、二つ目がロラン&オレリーアントラクトを挟み、ラストはバランシンの「リーベスリーダー・ヴァルツェー」。舞台端にピアノが置かれ、4人の歌手がブラームスのリーダーを高らかに歌い奏でる横で、エトワールたちが総出で、美しい衣装に身を包み華やかなウィンナー・ワルツを踊る。と言えば聞こえはいいが、実際は退屈極まりない作品。

アニエス&ジャン−ギー、オレリー&ロラン、デルフィヌ&マニュ、レテティア&バンバン、と、それはもう、豪華絢爛ラインナップ。エトワール6人だよ。現時点で踊れる状態にある女性エトワール全員と、ロラン&マニュ、それにバンバンまで贅沢に使ったこの作品にとっても期待していたのに、なにをするかって、ズンチャッチャズンチャッチャとエレガントにワルツを踊るのみ。前半はダンスシューズで、後半は一応トゥシューズを履くけれど、つまらないったらつまらな〜い。日本から来た知り合いは、「デフィレを見てると思えばいいわ。普段、こんなにまとめてトップダンサーたちの顔をじっくり見る機会はないし」と、それなりに妥協しているけれど、私は結構ウンザリ。確かに配役的には、1名を抜かしてすばらしい。でもその1名の出来はいつもながらにとても悪く、アニエスの美しさを破壊している。ロラン&オレリーはそれはそれは美しくエレガントで、このカップルは見ていて厭きない。でも他はどれもこれも、うううう〜ん。各カップルの踊りが5分ずつだったら楽しめたかもね。55分という時間が果てしなく長く感じ、終わったときにはほっとしてしまう。

そんな、前代未聞のつまらない公演のゲネ、そして初日を乗り切り、翌週は同じ公演の第2配役。カデール&ジェレミーの「アン・トレ・デュニオン」だけを楽しみにしてガルニエに向かう。

なのに、なのに〜、なの〜にぃ〜!開演前のアナウンスが無常にも、「ジェレミー・ベランガールの怪我のため、“アン・トレ・デュニオン”は、アレッシオ・カルボヌとバンジャマン・ペッシュが踊ります」と告げる。最前列で椅子から滑り落ちる私、、、、。な、なんのために来たの、私は?

すっかり絶望した私をそれでも、アレッシー&ヤンヤン&バンバンが救ってくれる。

「パヴァーヌ」を踊るアレッシーがすばらしい。ロモリとは話が違う。相手のセリーヌも抜群にいい。ジルさんは、まあ、、、。ほとんど見なかった。カデール&アレッシー&セリーヌという配役で出すべきだよ、この作品。すばらしい作品になるはずだ。

「グラシアル・デコイ」は相変わらず問題外。ミテキが、5秒しか出てこない役を演じたため、さらにひどい有様になる。困ったね、この作品。

「アン・トレ・デュニオン」、カデールを見られなくしたジェレミーがひどく恨めしいけれど、アレッシー&バンバンの見事さに感動する。うわぁ、いいねえ。やっぱりこの作品、両方ともいい男でないと苦しい。アレッシーとバンバンという、大好きな二人のダンサーのよさを満喫。ああでもやっぱり、カデールが恋しい。どんなにすばらしくこの作品を踊ってくれるだろう。ジェレミーのバカ、、、。

今日一番の驚きは、「パヴァーヌ」でも「アン・トレ・デュニオン」でもなく、ラストの「リーベスリーダー・ヴァルツェー」。エトワールがゼロの第二キャスト、めっちゃめちゃいいじゃん(笑)!なにがいいかって、まずは、ジャン−ギーの役を踊るヤンヤン。うわあ、すてきだ。ぜんっぜん違う、ジャン−ギーが踊るのと。相手のマリ−アニエスも華やかに軽やかに、なんとも輝かしいカップル。マニュの役を踊るバンバンと美しいナタリーのカップルも素敵。バンバン、こっちの役のほうがずっと合ってる。バンバンの役は、今夜はクリストフ・デュケンヌ。どーでもいいけど別にイヤじゃあない。相手のイザベルは、美しい体を見ている分にはOK。ロラン&オレリーの役は、ニコラ・ポールとドロテが踊る。いーよねー、ドロテ。そりゃもちろん、ロランを相手にしたオレリーのかぐわしい魅力には劣るけれど、愛らしくチャーミングにクルクルクルリとワルツを踊る。ニコラの控えめなサポートも悪くない。と言うわけで、7割ヤンヤンのおかげ、1割バンバンの役のおかげ、1割ドロテのおかげ、1割ナタリーの美しさのおかげで、あれほどひどいと思った「リーベスリーダー・ヴァルツェー」を、それなりに楽しむ。え、もう終わり?という55分。

もうこの作品、第一キャストでは見たくない。6人の公式エトワール、1人の非公式エトワール、1人のなりそこないエトワールによる第一キャスト、つまらなすぎ。2人の非公式エトワール、1人のプルミエール、4人のスジェ、1人のコリフェ(この日はまだコンクール前だったから、ね)、見るに耐えうる。配役の重みから言えば、信じられないことだけれど、だってほんとだもん。

いずれにしてもつまらない作品。もうひとつのプログラムでのバランシン3作品はどれもこれも見事で、バランシンに対する私の意識を変えてくれたのに、この作品のせいで、また元通り、バランシンと聞けば肩をすくめるようになっちゃうよ、、、、。あー、もう一つのプログラムのバランシン3作品が恋しい。早くそっちをまた見たいな。

今シーズンの中で、間違いなく一番つまらないプログラム。気合を入れずにガルニエに来よう。カデールが踊る「アン・トレ・デュニオン」を少なくとも一度。それだけ叶えば、あとはもう、どうでもいいや。カデール、アレッシー、ヤンヤンにバンバンという、だーい好きなダンサーが集った公演なのに、すっかり投げやりになってしまう。

16,17,22,23,27 dec. 2003(03年12月)
top