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マリアニエス、エトワールに、感激!

ven.20 mars 2004

2001年10月はじめに書いたメモが残っている。パリ国立オペラ座バレエの2001-2002年シーズンの初日、「ノートルダム・ドゥ・パリ」を見終わったあと、まだ感動に打ち震えている中に書いたものだ。今日明日には、きっと必要になる言葉だろう、と思って。

マリ-アニエス“たぐいまれなプルミエール・ダンスーズだったマリ-アニエス・ジロはいなくなった。次に彼女を観る時には、ダンスーズ・エトワールとなったマリ-アニエスだ。”

結局この言葉は、「ノートルダム~」が終わっても使うことが出来ず、「ラ・バヤデール」では絶対!といわれながらも先延ばしにされ、「ドン・キショット」で何事も起こらなかった頃にははもう、マリ-アニエスのエトワール任命は、彼女の任命に反対していると言われている、現オペラ座総裁ユーグ・ガルの引退後までは実現しないだろう、と、あきらめムードが漂った。翌シーズンの「ラック・デ・シニュ」、一夜限りの極上のオデット/オディールも完璧に無視され、この頃には完全に、彼女のエトワール任命は2004-2005年シーズン、と皆が思うようになった。

マリ-アニエスこの間、彼女の踊りは、エトワールのそれ以外のなにものでもなく、彼女を舞台で見るだびに、オペラ座の理不尽さを呪ってきた。2004-2005年シーズンになれば必ず!必ずエトワールに!先ごろ発表になった来シーズンのプログラムを見ながら、きっと年末の「ラ・ベル~」で任命だね、と、想像しては、来る日を夢見ていた。

2004年3月18日、オペラ・バスティーユでの公演「シンニュ」。この夜、マリ-アニエス・ジロは、ユーグ・ガルからエトワールに任命された。

マリ-アニエス16日に初日を迎えた「シンニュ」の二日目。キャロリン・カールソンの、音楽、衣装、舞台、そして振り付けが鮮やかに完璧に結びついた、このシュールに美しい作品を、私は3年位前に一度見ただけだった。カデールとピエトラによる、強烈に美しい舞台に夢中になり、今回の再演をとても楽しみにしていた。目的はもちろん、カデール。初日はもちろんこの二日目も、ただひたすらにカデールカデールカデールカデール。ひたすらにカデールを目で追いながらも、横で、もしくはソロで舞うマリ-アニエスの、強烈なカリスマ性と舞台支配力にもしびれていた。が、まさか、まさかこんなモダンバレエのしかも二日目でエトワール任命なんてドラマが起こりうるなんて、考えもしなかった。そもそも、来シーズンまで絶対にお預けだとも思っていたし。

マリ-アニエス初日こそ、わずかな期待を込めてしばらく会場に残って任命がないのを確認してため息つきながら席を立って、裏口でマリ-アニエスにブラヴォ!を伝えたものの、昨日は、公演終了後、さっさとオペラ・バスティーユをあとにした。これだけバレエを見ながら、レティティアのときもオスタのときも(こっちはどーでもよいけれど)、エトワール任命を見逃した上、ようやく現場に立ち会ったはずが、何も気づかず帰ってしまった私って、かなり間が抜けている。翌日の今日、初めて任命を知って、喚起しながらも唖然とするばかり。

マリ-アニエス「ノートルダム~」、エクの「ジゼル」、「アパルトマン」、「クラヴィゴ」、「ユールヴァン」、「ラック~」、「キショット」、「リュビ」、、、、、。たくさんの作品で、素晴らしい感動と興奮を与え続けてくれたマリ-アニエス。非公式なエトワールとして評価されつづけてきた彼女への、ようやくの正当な評価。今一度、心からのおめでとうを、マリ-アニエスに捧げたい。「シンニュ」はフィルム撮りが予定されている。マリ-アニエスとカデール、2人の極上エトワールの素晴らしい舞台の様子が永遠に残る。

たぐいまれなプルミエール・ダンスーズだったマリ-アニエス・ジロはいなくなった。次に彼女を観る時には、ダンスーズ・エトワールとなったマリ-アニエスだ。2年半という時を重ねてようやく、この言葉を使える日が来たのを、心から嬉しく思う。

ven.20 mars 2004('04 3月)
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