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「ラ・ベル・オ・ボワ・ドルマン(眠れる森の美女)」

ながーい間、バレエ日記をお休みしていた。 3月にシンニュ三昧、5月にキショット三昧した後、昨シーズン一番楽しみにしていたカデールが踊るエクの「ジゼル」を、仕事とはいえ、一度も見られなかったのにあまりのショックを受け、昨シーズンはそのままオペラ座通いをやめちゃった。今シーズンに入っても、いまひとつ気乗りのしないまま、シーズン最初とその次の公演は、それぞれ1度しか行かずに終わっていた。ていたらくな秋が終わり、冬。ガルニエとバスティーユでそれぞれ連日連夜公演が行われる時期を迎え、オペラ座の喧騒もなんとなく高まってくる。オペラ座の興奮というか雰囲気の高まりに押されるようにして、本格的にオペラ座復帰をしよう。

11月20日(土)

プロローグより。オーロラの誕生を祝福する6人の精たち年末恒例のバスティーユ公演。今年は、「ラ・ベル・オ・ボワ・ドルマン(眠れる森の美女)」。オペラ座なので当然ヌレエフのヴァージョン。5〜6年ぶりだ、この作品見るの。懐かしいね。マニュ&モランの???なカップルを見たあと、ロラン&シルヴィーという目の覚めるようなカップルを堪能したっけ。20日を超える日程で6組ほどのカップルが予定されている中、初日の栄誉を担うのは、レティティア&ジャンギー。

オーロラ姫初挑戦のレティティアは、うーん、どう贔屓目に見てもイマイチだなあ。かわいいし、雰囲気はオーロラにピッタリ、と期待したのだけれど、オーロラに必要な技術って、レティティア向きじゃあないのかも。クルクルチャキチャキが得意なレティティアには、オーロラの緩やかで気品ある動きがどうもつらいらしい。やっぱり彼女はキトリ向きなのかなあ。レティティアびいきの私の目からしても、さすがにブラヴォー!をいう気にならないくらいの出来。2幕はよかったかな、強いて言えば。

ジャンギー、ついに復活してしまったか。彼が舞台に立たないすばらしい時期が終わりをむかえた、、、。怪我している間、かなり重症で、もうグラン・パ・ドゥ・ドゥの復帰は無理、と聞いていたのになあ。まあいいか、少なくとも技術だけはそれなりに楽しめるでしょう。と、珍しくも寛容に存在を許したジャンギーだったが、あまりの出来の悪さに唖然としてしまう。2幕、最初のヴァリアシオンの最初の10秒はまあまあ見られたものの、その後はもうなにがなんだか、、、。長い長い2つ目のヴァリアシオンにいたっては、いつ終わるの〜?寝るから終わったら起こしてね〜、くらいの有様。感情のカケラもなく、技術も光らず、1人黙々とバーレッスンでもしてるのか?みたいなジャンギー。目も当てられない、、、。

青い鳥はバンバン。まあまあ。悪くないけど、期待が高すぎるだけに普通に見える。エマニュエルが見たいなあ。前日のジェネラル、ジャンギーのワガママでデジレを踊らされたバンバンの代役で青い鳥を踊ったエマニュエル、この世のものと思えない出来だったらしい。パートナーのメラニーは、期待が全くないだけに、それなりに思える。いい悪いの判断なんて、結局は対期待、によるものなのかな。

ネコ、6人の精、5つの宝石、その他諸々コールたちは、どれもこれもいまひとつ。ああ、4人の王子様をやった、カールとヤンヤンがかわいかった。マヌケな役だけど。

ローズアダージョ。本当に美しく見事なアダージョでしたとまあ、ピンとこないというかなんと言うか、いたってつまらないできに終わった初日の「ラ・ベル〜」。この後は、デジレはバンバン、マチュー、ボッレ、オーロラはミリアム、オレリー、マリ−アニエスをそれぞれ一度ずつ見られればもう十分かな。

12月24日(金)

と、とりあえず主要カップルは一度は見ようと思っていたのに、バンバンは怪我をして本人の初日を待たずして降板するわ、私は大風邪引いて、バレエどころの騒ぎじゃないわと、散々な11月下旬からの数週間を過ごし、気がつくと、マチューもミリアムも一度も見られずに終わってしまった。かわいくて愛らしくて完璧なオーロラであったはずのミリアム、残念。まあ、また数年後に見られるでしょう。マチューのデジレも悔やまれるが、仕方ないよ。彼もこの先長いしね。

悔やんでも悔やみきれないのが、怪我で降板してしまったバンバン。そもそも、ジェネラル(ゲネ)の時に、2日連続で踊るのヤダ、とわがままを言ったジャンギーの代役で急遽ジェネラルを踊らされ、それが災いして怪我してしまった。ジャンギーのバカバカバカー!おまけに、やることなすこと訳が分からない新しいオペラ座のディレクターは、「ラ・ベル〜」が始まった頃、こう公言した。“ラ・ベルで新しく2名のエトワールを任命します”。どう考えたって、その1人は、バンバンだったはず。なのに一度もデジレを踊ることなく、戦線離脱してしまったバンバン。なんてまあ、不幸な星の元に生まれているんだろうねえ。

3幕。青い鳥。カール&エレで、もう1人のエトワールは???青い鳥しか踊らないものの、カールかエレ、という可能性くらいしかない。まさかミリアムをいきなり、というわけないし。でもカールかエレ???止めてくれ、、、。カールは問題外だし、エレもまだクラシックにおいては力不足。と、戦々恐々としたエトワール任命騒ぎだったけれど、結局誰もノミネされなかった。

12月24日

で、風邪もようやく一段落して、ひと月以上ぶりに「ラ・ベル〜」と再会。オレリー&マニュという黄金カップルの2日目を楽しむ。数日前の彼らの初日、2幕が終わったあと、舞台裏でボヤ騒ぎがあって、結局3幕が中止になってしまったそうだ。さぞかし、マニュもオレリーも不完全燃焼だったことだろう。この間の分まで踊るぞ!とばかりに、二人そろって弾けてる。

オレリー&マニュオレリー、完璧ですね。あまりの美しさ、気品、テクニックの崇高さ、オーラに、ただただため息が出るばかり。レティティアの出る幕じゃない、、、。誰もが認める、今のオペラ座が世界に誇る一輪のあでやかなバラだ。老け込み始めてしまったアニエスを尻目に、今が旬とばかりに、凛と美しく舞台を支配するオレリー。柔らかで強靭な肢体が表現する、息を呑むようなテクニック。オーロラの全てを理解しているような演技や細かな動き。

レティティア、メラニー、ミリアム、アニエスそしてゲストでザハロヴァが既にオーロラを踊っていて、みんな口をそろえてミリアムが最高!と言ったけれど、間違いない、オレリーが最高だよ。これから初日を迎えるマリ−アニエスとどっちがいいだろう?今夜は第4ヴァリアシオンを踊るミリアムもそれはそれは可憐でオーロラにピッタリだけれど、まだ技術が追いつかないもんね。貫禄と風格まで身につけた、オペラ座きっての大エトワール、オレリーに、熱い熱い拍手が送られる。

同じくオレリー&マニュ。マニュ、カツラがよく似合う。ジャンギーのカツラ姿は怖かった、、、マニュも頑張った、うん。ジャンギーに比べれば10倍いいし。さすがに年には勝てず、3幕後半は、肩や指の辺りに疲れを感じるものの、さすがはヌレエフの子供。ヌレエフ系の王子様の役作りなら僕に任せて!といわんばかりに、イキイキと舞台を飛び回る。相変わらず、周りのコールはもちろん、ときにはオレリーすら眼中になし!という感じで、1人マニュワールドを形成しているけど、観客へのアプローチや喜ばせ方などは、さすがだよね。でもやっぱり、私は彼のアラベスクがイヤ、、、。ああ、早くボッレが見たい。キショットで、私を感動の嵐で包んでくれた、あのアラベスクを拝みたい。

6人の精。真ん中がエミリープルミエールになったばかりのエミリーが踊る第6ヴァリアシオンもなかなかいいし、こちらもコリフェにあがったばかりの、贔屓にしてるローラの第1ヴァリアシオンも悪くない。将来楽しみにしてるよ、ガンバレローラ!

王子様には、未来のエトワール間違いなしのジョシュアが、スジェにあがった喜びをそのまま顔に出しながらドーランを塗られた茶色い肌の奥でかわいい目をして踊っているし、コールで踊るのは今夜が見納めになるエマニュエルはやっぱりひときわ目立ってる。5つの宝石のファニーは、復帰直後と思えないすばらしさで、初日のノルウェンに改めて頭を抱えてしまう。どうして彼女がプルミエールなんだろうねえ?

青い鳥のカール&エレがよいのに、ちょっと驚く。エレはまあ、エレなので、こういうのは苦手。にしては一生懸命やってた。びっくりしたのは、カールの出来。あの重たい体でこの役は無理だよ〜、と思っていたのに、ちょっと体が締まったカールの青い鳥は、とても軽やかでよいなあ。普段のカールからは想像できないいい出来だ。既にこの役でカールを見ていた友達が、「びっくりするよ、きっと。カールにしてはかなり上出来。きっと気に入ると思う」と言っていたけど、まさにその通り。久しぶりにカールを評価。

初日に比べて全然いい出来の24日。華々しい舞台に満足して、ノエルのレヴェイヨンを楽しむのでした。さあ、残るはいよいよ、マリ−アニエス&ボッレ!エマニュエルの青い鳥に、セバスチャンのネコという、私にとってはゴールデン配役。見逃さないようにしなくちゃね。

と、意気込んで29日にバスティーユに行くものの、トホホホ。マリ−アニエスの降板ニュースが飛び込んでくるわ(アニエスが代役だってさ)、チケットは手に入らないわで、結局、見られず。26日の彼らの初日がすばらしかったという話を聞いていただけに、とても楽しみにしていたのにな。

とまあ、結局、年末事情&風邪のせいで、たった2回しか見られなかった「ラ・ベル・オ・ボワ・ドルマン」。今シーズン唯一の、チュチュ系グランクラシックバレエ。なんとなく消化不良に終わってしまったけれど、仕方ないね。2005年は、たくさんバレエを見られますように!

20 nov. 24 dec. 2004('04 11月、12月)
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