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6.ジョゼとルテティアの「カス−ノワゼット(くるみ割人形)」の巻

mar.28 nov.2000

ジョゼとルテティアちゃんの「カス−ノワゼット(くるみ割人形)」が終わる。彼らの初日は11月14日。この夜からちょうど2週間かけて、彼らの公演を4度楽しませてもらう。

3月の昇進試験でプルミエールになったレテティアちゃん。それ以後、特に目立った役はやらせてもらえず、いわば、この「カス−ノワゼット」が、プルミエールになったお披露目みたいなものになる。

Casse初日の夜は、主役デビューの興奮か、硬さが残ったものの、それがまた愛らしく、ジョゼの絶妙なリードで、なかなかみごとな踊りっぷりだった。

マニュエルとエリザベスという予定外のキャスティングの夜を挟み、3日後、それから更に5日後に観たルテティアちゃんは、すっかり踊りがつややかになり、グラン・パ・ドゥ・ドゥのラストも含め、興がのった素敵な舞台になった。

この二晩は、アラブのダンスに大好きなヤン・ブリダールと、マリ−アニエス。ゴージャスな大柄カップルが印象的に、雰囲気たっぷりに紡ぐアラブのダンスは、それはそれは妖艶に美しく、圧倒的な拍手の嵐を受けていた。

マリ−アニエス、ほんっとに上手くなった。表現力はもともと非常に豊かで、コンテンポラリーなダンスなんか、彼女なしでは振付師が頭を抱えてしまうだろう。技術面でまだ少し完成度が低く、クラシックの場合、それが目立ってしまうことがあった彼女だけれど、観る度に上手くなっていくこの半年。なんてったって、存在感と華がある。彼女が、オーレリーちゃんに引き続くエトワールになる日を楽しみに待ってるんだ、私は。

ファニー・フィアちゃんは、華やかにテンポよく、小気味いいルイーズを披露するし(ほんの少し運命が彼女に味方してたら、ファニーがクララだったのにね)、お気に入りのエマニュエルは、少女のような顔でパストラルを美しく跳ぶし、ろくなキャスティングでないとはいえ、毎回それなりに楽しませてもらった。

ジョゼとルテティアちゃんを最後にもう一度、と、ほぼ同一のキャスティングで観る「カス−ノワゼット」の4回目。

Casseさすがにもう、曲の細かな流れも振り付けもだいたい覚えてきた。子供たちの顔だって区別出来ちゃうもんね、もう。初回に比べ、それぞれの踊りがいい意味でも悪い意味でもこなれてきているのも分かる。

可愛さ二重丸の子供たちは、はじめの頃は上手くてをつなげなかった動きの速いステップを器用にこなすようになってる。カール・パケット君が出ている招待客の踊りも、スカートに引っかからない。

ジョセたちの、グラン・パ・ドゥ・ドゥのラストなんか、いったい何秒足が上がってたんだろう?初日は3秒ほど。2回目は2秒弱。3回目も2秒ちょっとくらいだったフィニッシュの時間が、今夜はたっぷり5秒はあった。すごい!すごい!!難所とされているあの部分、よくもあんなに続けられたものだ。エリザベスなんか初日に足、落としちゃった、って聞いてるし、私が観た時にも、1秒持ったか持たないか、ってレベルだったもの。今夜の彼らのすごさがひときわ光る。

とは言っても、今夜のレテティアちゃん、ちょっと踊りが雑。慣れちゃったからなのか、いい意味での緊張感がない。こまかな動きのつま先の丁寧さが足りなかったり、ピルエットのラストがぐらついたり。2回目に観た時が一番よかったかな。

Casseジョゼは最高。毎回素晴らしい踊りを披露してくれる。我ながらびっくりするくらい、ジョゼに感動している「カス−ノワゼット」。私が今まで観ていたジョゼって何だったんだろう?どうして、今まで飽きるほど観てきたジョゼと、こんなに違うの?体の線のきれいさでは、おそらくこのバレエ団ナンバーワンなジョゼ・マルティネスの舞台に、心から酔った4晩だった。

ヤン?いいよお。もちろん。それなりに。大好きだもん。でも、やっぱり彼はエトワールの器じゃないのかなあ。マリ−アニエスと踊ったアラブのダンスはダイナミックで圧倒的。素晴らしかった。でも、ミュリエル・ハレを相手に踊る今夜はイマイチ。ミュリエルにマリ−アニエスやデルフィンヌのような存在感がないのがそもそもいけないけれど、それくらいカヴァーして魅せる踊りが出来るようにならなくちゃね、ヤン。

なんの間違いか、2回、ヤンがドロッセルマイヤーと王子を踊る夜がある。だーいじょうぶー、ヤン?ちゃんと踊れるの?好きなだけに、ちょっと不安。お気に入りにのヤン、それにこちらも大ファンのバンジャマン・ペッシュが踊る後半の「カス−ノワゼット」。ジョゼのそれとは全然違う雰囲気の舞台を披露してくれるんだろうな。楽しみにしてます。

大きな拍手に包まれて、ジョゼとレテティアちゃんがカーテンコールに答える。観客の拍手に答えた後、両端に寄って、舞台のダンサーにも丁寧にご挨拶。そう、今夜が彼らの最終日。お世話になりました、ご挨拶だ。

Casse「カス−ノワゼット」の公演は、やっと折り返し。これから後半が始まり、ノエルのレヴェイヨンまでまだまだ続くけれど、なんだか私にとっては、一つの公演が終わってしまった感じがする。この週末から観る「カス−ノワゼット」は、きっと新鮮な気持ちで観に行くことになるんだろうな。まずは、マニュエルと未来のシルヴィー・ギエムと名声高いスジェになりたての女の子。引き続き、ヤン、それにバンジャマン。

オペラ・バスティーユに通う夜は、これからも続く。

素敵な夜に、一つだけケチがつく。
12月を迎えつつある夜としては恐ろしく暖かく、バスティーユのカフェのテラスでお茶まで出来る。暖房はついてるし、やっぱり寒いけど、こんな季節に外に座れるなんて信じられない、と、いい気分でメトロへ。せっかく空気がきれいなんだから、今夜から始まるシャンのイルミネーションを愛でに行こう!と、フランクランでウキウキ階段を上ったそこは、くらーいくらーい夜道。遠くにエッフェル塔がキラキラ青く輝いてるけど、シャンのイルミネーションはかけらもない。今夜から、って書いてあったのに、、、。思いきりうなだれ、とぼとぼとクレマンソーまで歩き、家路へと向かったのでした。


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