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グルマン・ピュスのレストラン紀行


レ・ブション・ドゥ・フランソワ・クレール(Les Bouchons de Francois Clerc )

久しぶりに「レ・ブション」に行く。

古いカーヴを改造して作られた店内は相変わらず盛況。8時半過ぎにドアをくぐると、バーカウンターには席が空くのを待つ人たちがグラスを傾けている。お気に入りの地下のテーブルに案内してもらって、カルトを開く。

crepinetteあれも食べたい、これも素敵そう、と魅力的なお料理が目白押しのアントレ達の中から「ラングスティンヌ(手長エビ)のクレピネット」に、こちらはすぐに決まった「仔牛のロースト、ルブロッションのファルシ仕立」をプラとしての今夜の夕食。相変わらずいけまくっているカルト・デュ・ヴァンとにらめっこして、お酒は、ジュヴレー・シャンベルタンの90年、フェヴレイの作品を選んでみる。

ラングスティンヌのそぼろを網脂にくるんでソテーしたクレピネットは、ジュヴレーに合わせるには、添えてあるクルスタッセ(甲殻類)のソースを以ってしてもちょっと味があっさりしすぎのきらいもあるが、優しく口溶けがいい。量もコンパクトで、これからプラ、フロマージュ、デセールと続く夕食のアントレとしては、なかなかのものではないかしら。

rotiルブロッション(サヴォア地方(アルプス)特産の、ウォッシュタイプの牛のフロマージュ)を中に詰めて、オーヴンでロティされた仔牛ちゃんにはブラヴォ!強い匂いを放ちながらとろりと溶け出してきているルブロッションに、仔牛の柔らかくあっさりした白い肉がピッタリ。添えてあるジャガイモのピュレも、「ラ・ビュット・シャイヨ」や「ロ・ア・ラ・ブシュ」には及ぶべくもないが、十分美味しい。フロマージュと合わせる仔牛、って食べたの初めてかも。うーん、いけている。素晴らしい香りと口当たりを持った今夜のジュヴレーが、華を添えてくれる。

fromage相変わらず美味しいパンとオリーヴバターも堪能しながら、フロマージュへ。ムニュに組み込まれているフロマージュは「自分達でお好きなだけどうぞ!」と、大きなプラトー・ドゥ・フロマージュ(フロマージュを盛り合わせた籠)をテーブルに置きっぱなしにしてくれる。奥の席の英国人グループは「誰がこんなにチーズを頼んだの?全部食べていいの?ロックフォール(フランスの有名青カビチーズ)はあるのにスティルトン(英国の有名青カビチーズ)はないの?なんてこった、こんなにイングリッシュがいるのに!(今夜の「レ・ブション」は英語圏の人々で大賑わいだった)」と嬉しそうにジョークを連発してる。ポン・レヴェック、ヴァシュラン、名前を知らないカレー風味のシェーヴルをパクッ。そして美味しいパンと、ジュヴレー。う〜ん、幸せ、、、。

デセールは「フォンダン・ショコラ、グラス・ヴァニーユ添え」。カンゾウ風味のカスタードがいけていた。このお店のスペシャリテはスフレなんだけれど、連れが注文したので、私は味見だけ。熱々のスフレのふたを突き破り、グリオット(ちっちゃなサクランボ)のソースをたっぷりかけて、ボナペティ!アフハフ、ととろとろふわふわのスフレを口に運ぶ。ああ、美味しい、、。

コーヒーでお腹を落ち着け、横のテーブルのご夫婦とおしゃべり。ニュージャジーからやってきたこのご夫婦、かなりの食いしん坊。「明日、帰らなくっちゃいけないんだ、、。でも今夜ここに来られてよかったよ。フランス人の友人が是非ここにしろ!って薦めてくれてさ」と、お酒で真っ赤になった顔を嬉しそうにくしゃくしゃにしている。「本当に、お料理は美味しいし、お酒は素晴らしいし、雰囲気はいいし、、」と奥様もべた誉め。「フランス最後の夜に、楽しい思い出が出来て良かったですね」と言うと、「明日帰るけど、またすぐに戻ってくるよ!そしてまた、ここに来るよ」と叔父さま。

シェフが変わったのか、以前とはちょっとだけ味の雰囲気が変わった「レ・ブション」だけれど、お料理が美味しいことには変わりないし、お酒は相変わらず涙が出るほど安い。そして質もいい。ワイン好きには、ほんとたまらないレストランですね。

ごちそうさまでした。


jeu.15 oct 1998



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