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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ル・プレ・カトラン(Le Pre Catelan)

ロラン・ギャロスの始まりと共に、本格的に初夏になるパリ。何て気持ちいいんでしょう!気持ちいいんでしょう!!気持ちいいんでしょう!!!太陽がこんなに素敵なものだなんて、忘れていたわ。

こんな日は、テラスでのお食事に限る。この夏に行こうと思って作成した《テラスが素敵なレストラン》リストの最後の方に名前を記された、「ル・プレ・カトラン」のテーブルを予約する。

ボワ・ドゥ・ブローニュ(ブローニュの森)の中央、緑が濃い樹々の中に隠れている白亜のお城。これが「ル・プレ・カトラン」。表側のサロンでは、ロラン・ギャロス関係の集まりが開かれていて人で賑わっている。裏のレストランに周って、名前を告げる。

terrasse「お待ちしてました。どうぞこちらへ」と案内されたのは、陽光と緑に包まれた中庭のテラス。初夏を謳歌するのにぴったりの、爽やかで上品なテラス。いいねえ、こおいうの。このテラスを見ただけで、これから過ごす午後の楽しさが想像できる。

大き目のフルートにたっぷり注がれた デュヴァル−ルロワのミレジム(90年)をゴクリと喉に流すと、体中に爽快感が流れ込んでくる。やっぱり夏はシャンパーニュだなあ。逞しい泡と構成を持ったデュバル−ルロワのシャンパーニュは、このまま食事の相手も出来そうな存在感。こういうコクのあるシャンパーニュ、好きだわ。

建物同様に真っ白なお昼ムニュのカルトを吟味して、「緑アスペルジュのリゾット」に「アニョーのロティ、ポム・ドフィノワ添え」それに、デセールも今注文してください、とのことなので、「ペシュ(桃)のコンフィ、パン・デピスのグラス」を選択。お酒は、コート・ドゥ・ブレイのシャトー・オ−グレロ96年。

rizottoアミューズの「マクロ(サバ)のパリパリ包み」に続いて運ばれてきたリゾット。すごい!!と絶賛するほどのものではないけれど、まあ、いいんじゃない。アスペルジュの火の通し方も悪くないし、パルミジャーノもちゃんと削りたてだし。

プラの仔羊ちゃん。うーん、ちょっと香りが赤ちゃんじゃないなあ。ちょっと大きくなりすぎてるぞ、このアニョー。ロゼ(レア)でね、って頼んだ焼き方はよく出来ている。ガルニのグラタン・ドフィノワは面白い。普通のグラタンと違って、一度潰して形をボールにして焼き直してある。ムスカド(ナツメグ)の香りがいい感じだ。

「なかなかね、いいと思いますよ、これ!試してみて!」とソムリエ君が薦めてくれたコート・ドゥ・ブレイのお酒は、まだまだ若く、フルーティーで気のおけない感じ。ここ数年、評価が急上昇している地区だけに、一生懸命作った!という健気さが見え隠れしている。暑い暑い去年の夏を過ごしたボルドーから、この地区を訪れたことを思い出す。今日みたいに暑い日だったっけ。

「どう?美味しい?」と、聞きに来るソムリエ君と、素晴らしいお天気から6月にボルドーで開かれるVINEXPO(世界的に有名なワインの国際見本市)まで、あーだこーだとおしゃべり。
「行くんですか、VINEXPO?」
「多分。ちょっと日程と相談中なんです。あなたは?」
「6月は仕事。8月に行こうと思ってるんだ、ボルドーには」
「そうよね。6月なんて一番気候がいいときに、ヴァカンス取ってる場合じゃないわよねえ」

パンは美味しい。ちょっと柔らか目の普通のパンとシリアルパンは、なかなかよく出来ている。が、なにぶん、この間の「ピエール・ガニエール」のとんでもなく美味しいシャテーニュ(栗)のパンの記憶がまだ鮮明なだけに、どうしても比べて負けてしまう。ごめんね、美味しいパンなのに。周りによってきたスズメちゃん達は大喜びで、ぱくついている。この後のお散歩のときのスズメの為に、と、パンのかけらをそっとカバンに忍び込ませる。ハイジの気分だ。

30程あるテーブルは満席。みんな楽しそうな笑顔を振りまいている。聞こえてくる話題は、ロラン・ギャロスとフット(サッカー)、それにこの夏のヴァカンス。昨日のリーグ杯の決勝戦の信じられないラストについて、興奮気味に話している横のテーブルの叔父さま方。それを聞きかじって、
「いやあ、あれはマンチェスターUの実力だよ」と話題を展開するその横のテーブルの叔父さま。
「カフェルニコフがねえ、、。信じられないわ」と首を振るのは奥のテーブルの素敵な女性がいれば、端の席からは、これから先、一週間のお天気の予想に余念のない叔父さまの声が聞こえてくる。メートル氏と楽しそうにお話している恰幅のいい叔父さまは、
「いやあ、この日はもうヴァカンスに出てるよ。ちょっと無理だなあ」と、夏にここで行われるらしいソワレのお誘いを断っている。

いいなあ。小鳥のさえずりをBGMに、出てくる話題はどれもこれも楽しいものばかり。夜のご接待はもちろんのこと、デジュネ・ダフェール(ビジネス・ランチ)というものもあまり存在しないフランスらしい、お昼の光景だ。仕事のお話はアプレ・デジュネ(お昼の後)、ということらしい。

ちっちゃなクレーム・ブリュレに続き、デセールが運ばれてくる。このデセールも周りのテーブルに運ばれてる料理も、プレゼンがなかなか素敵なものが多い。さすがはロビュション先生の弟子。見た目にも素敵なお料理を出してくる。甘く煮られたpecheペッシュに冷たいグラス。パン・デピス(香辛料入りのパウンドケーキ)の香りがほんのり立ち昇るグラスが美味しい。

このレストラン、グラスの評判がいい。バジリクやシコレ(縮れたレタスみたいなもの)なんかのグラスも作っている。味見してみたいな、今度。

プティ・フールをつまみ、マントのアンフュージョンを飲んで、深々と椅子に沈み込む。きーもちーなー。このまま寝ちゃいそうだ。こういうだらだらしたご飯、大好き。日差しの強い午後の3時間を、パラソルの影の元、優しい風を感じながら過ごす。

今日の午後に「ル・プレ・カトラン」を選んだのには訳がある。すぐ側のバガテル公園のバラ園を観るのも、今日の目的の一つ。てくてくと、日陰を選んでバガテルをお散歩。アンソニーのバラの庭、ってこういう感じだったに違いない!というくらい美しいバラ園。この先一月に渡り、次々とバラが咲きほころぶ。バラ園で花を愛で、芝生をウロウロしている孔雀を眺め、ポンポンと咲き乱れるデイジーを摘んで首飾りを作り、カフェでペリエを飲んで過ごす夕暮れ。

初夏の到来の歓迎パーティーのような、美しい午后を過ごす。


jeu.27 mai 1999



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