タラッラッラー♪トレッレッレー♪わーいわーい!愛しのMきちゃんが、ようやく日本から戻ってきましたっ!
たっぷり一ヶ月以上Mきちゃんのいないパリで、私のレストラン生活は、すさみきったものでした。(あれ、そうでもないか?結構いろいろ行ったね。お客様が、多かったものね)ようやく帰って来てくれたMきちゃんの、パリ初日のレストラン・リクエストは「コストでマン・ウオッチング」。ひゃあ〜「コスト」ですか、、、。初めっから、気合い入りまくりですね、Mきちゃん。
フランスのレストランで、どこが一番行くにあたってドキドキするかって、それはやっぱり「コスト」です。そんじょそこらの三つ星レストランより、ガルシアやミゲルが手がけた出来たてのレストランより、やっぱりどうしても、私は“フレール・コスト(コスト兄弟)"の前では、緊張のあまりドキドキしてしまいます。
そもそも、フレール・コストの一作品目、「カフェ・ボブール」からして、私は、弱いんです。2年間の工事を経て、2000年の幕開けと同時にリニューアル・オープンしたボブール(国立近代美術館)。先週、数年ぶりのボブールに訪れたおり、向かいにある「カフェ・ボブール」を眺め、数年前にここに通った時のことを、懐かしく思い出しました。あの頃は、まだレストランフリークにもなっておらず、パリで一番イケていたカフェに、ちょっとドキドキしながらも浸っていたのを、よく覚えています。
新しくなったボブールには、フレール・コストが新たに手がけたカフェが入り、一段と素晴らしいパリ名所になりました。バルテュス、マティス、カンデンスキーなどの、もとからの現代アートは言わずもがなが、企画展があまりにも面白く、そのナンセンス的な笑いのアートに、思い切り脱力してしまいました。パリ在住の方、この企画展は見る価値あります。是非是非、きれいになったボブールにいらしてください。
「カフェ・ボブール」に続き、ルーヴルに出来た「カフェ・マルリー」。有名なテラスはさて置き、半地下になった室内にまた、私は虜になりました。昔パリに住んだ頃、ガルニエでバレエを楽しんだ後は「カフェ・マルリー」に場所を移して、芸術の余韻に浸ったものです。真っ赤なベネツィアグラスのシャンデリアが、いかにもコスト的な廃頽感をかもしだしていました。
「カフェ・ドゥ・ラ・ミュジク」や「カフェ・リュック」、「ラヴニュー」や「オテル・クレベール」など、フレール・コストが手がけた作品は多々ありますが、数年前の「オテル・コスト」のオープン以来、パリの最先端スポットは、いまだにこれ以上のものはないと、私は考えています。
コストの名前をそのまま冠したホテル。数年前のオープン以来、このホテル以上の存在感を持ったホテルがあるでしょうか?リッツやクリオンなど、いわゆる老舗のエレガント系ホテルと一線を画し、悪までもスノッブでモード系なシックなホテル。コロニアル調の中庭と、コストらしい怪しい廃頽感が見事にマッチした、それはそれはイケているホテル。そんなホテルのレストランとバーには、夜毎パリの、つまり世界でも最高にブランシェな人たちと、超一流の芸能人達が集うスポットとなっています。
客は言うまでもなく、セルヴィス陣からドアマン、果てはヴォアチュリエ(車係)まで、この空間に存在する人全てが“コスト”という感じで、オートクチュールのデフィレ(ショー)顔負けの華やかさ。顔から体型、服のセンスから立ち振る舞いに到り、みんながみんな“コスト”してるんです。
こんな「コスト」、私は大好きな場所ですが、どうしても行くにあたって、ドキドキ感が付きまといます。美人じゃないしスタイルもよくないし、歩く姿勢もセンスもよくないし、追い返されたらどうしよう、、、。そんな不安を持ちながら行く「コスト」はでも、その見た目の雰囲気よりもずっと、従業員も優しくて居心地のいいところなのです。
デザインが美しい鉄のドアを開けてもらって、深紅とゴールドの廊下を進むと、開けた中庭。夏には、この中庭にテーブルが並ぶけれど、冬は、ここにテントを設置して、優雅な仮住まい仕立て。周りを取り囲む回廊のテーブルは夏冬兼用。それにプラスして、何個かある優雅と廃頽ここに極まり!みたいなバーでも、食事が出来るようになっている。立ち方だけ見ると、いばりんぼのモデルだけれど、愛想はいたっていい受付のお姉さん達に、オーヴァーを預けて席に案内してもらう。
8時半過ぎで、大方のテーブルが埋まった「コスト」は、みんな、打ち合わせしてきたかのように、すってきにおしゃれな人たちばかり。英語やイタリア語の人も多いのだけれど、やっぱりみんな「コスト」な雰囲気。《コストに行くにあたって》みたいな、マニュアルでもあるんじゃないかしら?というくらいに、見ごたえのあるお客様達。
「コスト」だから許せる、店にかかる音楽を聴きながら、シャンパーニュのフルートを傾け、お料理を注文。テーブルを担当してくれるお兄さんが、「コスト」のイメージに反してめちゃめちゃに優しいところが、これまたいいんだ。
「野菜のポタージュ」に「タルタルステーキ、ポワラーヌのトースト、フレンチフライ添え」を、スミス・オ・ラフィットのセカンド、「レ・ゾ・ドゥ・スミス」の95年で味わう。感動的な美味しさの料理ではないけれど、ソツなく作ってあって、それなりに満足できるもの。お酒のリストは、短いけれど、極上品から今夜飲んだような、サンパなお酒まで網羅してあるのが感じいい。
気だるくゆらめくろうそくの炎越しに、周りのテーブルで繰り広げられる、まるで芝居のようなラヴシーンに目を奪われたり、モデル顔負けの素晴らしいプロポーションのセルヴーズに息を呑んだり、エレガントにセルヴィスをする端正な顔のセルヴールを眺めたり、、、。本当ににもう、「コスト」でのマン・ウオッチングは、溜息出るほどに素晴らしい。
夏よりもやっぱり冬だ。夏はどうしても、カジュアル感が入り、ジーンズにティーシャツ(そうはいっても、すごく着こなしはいいのだけれど)もありえるが、さすがに冬は、そんなこと言ってられない。先週よりは気温が上がったとはいえ、真冬の一月。そんな中でもみな、ノースリーブスのドレスや、薄いシルクのシャツに革のパンツにチャーミングなアクセサリーを合わせて、そのセンスのよさを競ってる。
ペサックらしい誠実感とヤンキーになってしまったスミス・オ・ラフィットの明るさを持ったお酒と、コスト味な料理をつまみに、パリきってのスノッブな人たちをたっぷり鑑賞した1月最後の夜でした。
やっぱり「コスト」はいいです。こんなレストラン、他のどこを探してもないですね。これから2月の終わりまで、Mきちゃんと、パリのレストランを楽しむ日々が続きます。
lun.31 jan.2000