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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ル・ビストロ・デュベール (Le Bistro d'Hubert)

Le Beaujolais Nouveau est arrive!
beaujolais街中にこんな文字の看板を目にする今日は、ボジョレ・ヌーヴォーの解禁日。色鮮やかなさまざまなポスターがそこら中のカフェやビストロ、レストランのウィンドウや店の前に出された樽にべたべたと貼られている。
うちの側のワイン・バーにも大きな垂れ幕。こんな寒い日は家に閉じこもっていればいいのに、店内は人だらけ。ま、お祭りみたいなものだもんね。

寒い寒い夜風に震えながら「ビストロ・デュベール」のドアを開ける。「ボンソワール!」と明るい声で可愛らしいセルヴーズ(女性の給仕人)が出迎えてくれる。コートを預け、席に座って周りを見渡すと、フロアの給仕はみんな女性。パリでは珍しい完全なオープンキッチンからはおいしそうな匂いが漂っていて、カウンター席まである。可愛くお茶目なデコラシオンが、上品さを崩さずにカジュアルな雰囲気を出している。

beaujolais私たちが一番乗り。人がいないうちに、と店の中と厨房を撮らせてもらう。
「あ、写真?ちょっと待って、ポーズ取るから!おい、おまえもこっち来いよ!」とカメラ目線を向ける中のコックさんをパシャ。
「彼はシェフのファブリス、こちらはスゴン(2番手)のアランよ」とセルヴーズの一人が紹介してくれる。
「こんばんは。どうぞよろしく」もう一枚パシャ。

verreお約束のボジョレ・ヌヴォーと鴨のリエットで友人と乾杯。酸味の強い、バナナの香りがほのかなボジョレーを傾けながらIさんの到着を待つ。

15分後「遅いね、Iさん。車止める場所、みつからないのかな」。
30分後「うーん、まさか忘れてないよねえ、、」携帯に電話してみるが、電源が切れてる。
40分後「お腹空いたよお。Iさーん、、、。9時になったら、始めちゃおうか、カウンターに席変えてもらって?」
8時45分「や、遅くなってごめんごめん」Iさんが無事到着。周りを見ると、20ほどのテーブルは全部埋まり、賑やかで暖かな空気が漂っている。お客様も従業員もみんなニコニコ。厨房からはジュージューいい香り。いいなあ、こういう雰囲気。

ムニュ・オルディネール(オーソドックス・メニュー)とムニュ・デクヴェール(発見・メニュー)の二つから構成されているカルトから選んだ私たちのお料理はもちろんデクヴェール。お酒はムリスのクリュ・ブルジョワ・エクセプショネル、Ch.Dutruch Grand Poujeaux '93。では、いただきます。

アントレは「アルゼンチン産牛のカルパッチョ」。真っ赤な赤が見た目に美しい。薬味の塩と胡椒もきちんと粗く挽かれてとてもいい感じなのだが、味はまあまあかな。濃すぎる塩が、優しすぎる牛を食べちゃった、って感じか。かといって、牛だけの味は薄すぎるし、、。ノワゼット(ハシバミ)のヴィネガーかなんかでマリネする方が、美味しいんじゃないかなあ。今一つ、味のハーモニーに欠ける。見た目が美しいだけに残念。

bicheプラは「ビッシュ(雌鹿)のポワレ、シャテーニュ(栗)・ソース」。ビッシュちゃんのお肉はちょっと固めだけれど、なかなか美味しく焼けている。添えてある、浅く火を通したジャガイモも美味しい。シャテーニュはもう少し甘くどろどろになっている方がいいな。アクセントにオランジュの皮の甘煮を散らしているが、もっともっと甘みのある果物の実の部分の方がビッシュにはよく合う。

フィギュ(イチジク)やコワン(マルメロ)のコンフィなんかいいのになあ。アントレもプラも、発想はいいんだけど、味のハーモニーがちょっとあっていない。

お酒は素敵。93年とまだ新しいお酒なのに、とてもそうは思えない香りと味。「いや、お若いのに練れていらっしゃいますな、、、」という雰囲気の、この年にしては素晴らしい出来。「いや、美味しい。大当たりだねえ」、とコクコクコク。

デセールのショコラのケーキは、アルマニャック(ブランデー。コニャックに似ている)に漬けたグリオット(小さなサクランボ)が滑らかなショコラの味を引き締めてとてもいい出来。うん、これは良く出来てるな。

珍しいことに11時過ぎにはほとんどのお客様が帰ってしまったレストランで、12時過ぎまで楽しむ私たち。「じゃ、行こうか?」とIさんがなかなか腰を上げなかったのは、セルヴーズの一人がいたく気に入ったせい。ファニーという名の、この可愛らしいセルヴーズと一緒に写真を撮って、今夜のディネの締めくくりとする。

はずだったのに、Iさんたら(わざと?)テニス大会の成績表をテーブルに忘れて、またレストランに逆戻り。ファニーともう一度おやすみなさいをかわして(なのかな?私たちは外で待ってたから、知らないけど、、、)車に向かう。

雰囲気はとてもいいし、内装もなかなか面白い。とても居心地のよいレストランなのだけれど、このお料理で190フランは高すぎだな。「イヴァン」の一番安いムニュよりも11フランも高いもの!お昼にふらっと寄るのがいいかもね。


jeu.19 nov.1998



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