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グルマン・ピュスのレストラン紀行


アトリエ・メートル・アルベール(L'Atelier Maitre Albert)

3つ星レストラン「ギー・サヴォア」は、セカンド・レストラン展開を積極的に行っている。「ラ・ビュット・シャイヨ」や「レ・ブキニスト」がその代表格だが、昨年秋だったか冬だったかに、また1件セカンド・レストランを出して、あっという間に人気店に仕上げた。名を「アトリエ・メートル・アルベール」というその店は、いっつも満席状態が続いていて、なかなか行く機会に恵まれなかった。「早い時間ならいいですよ」と、なんとかテーブルを1つ用意してもらい、ようやく赴くレストランは、他のセカンド同様にカジュアルシックな雰囲気を期待して行ったら、店内なんだかちょっとクールシックな空気を漂わせていて、ちょっとひるむ。う、もう少しおしゃれして来るべきだった?

シックなウェイティングルームとバーを抜けたところに広がる客席は、照明をぐっと落として雰囲気たっぷり。片側には大きな暖炉がしつらえられ、反対側にはグリルされている肉たちがオープンキッチンに見渡せる。この店のスペシャリテは、グルグルと焼かれる各種肉。焼肉が売りの店なのだ。

「あ、僕、きみのこと知ってる、、、」コートを預けたあたりで、3〜4人の従業員に囲まれたとき、そんな遠慮がちな声が聞こえた気がしたのは空耳だったろう。だって、みんな知らない顔ばかりだもん。ギー・サヴォア系列のビストロだから、昔馴染みだった店々から誰か知っている人が移っているかもしれない、とは思っていた。でも、私たちを囲んでいるのは知らない人ばかり。やっぱり空耳だね。

薄暗い照明がムーディーなサルの端っこの方のテーブルに案内され、ロゼ色のシャンパーニュをチン!したところに、カルトを持ってやってくるセルヴール君。にっこり微笑むその笑顔に、な〜んか心当たりが、、、。
「ジョン!?」
「ウィ!サヴァ?さっき、入ってきたときに気付いてたんだけど、あんまりしばらくだったからきみかどうか、ちょっと自信なくってさ」空耳じゃなかった、、、、。はあ、いつもの頃ながら、どうしてこうも、私って人の顔を覚えられないんだろう。ジョンといえば、「レ・ブキニスト」でさーんざんお世話になったじゃないねえ、、。

「ゴ、ゴメン。薄暗くてよく見えなくて気付かなかったわ」と言い訳。
「髪型変えたから、ちょっと雰囲気が違ってたかもね」とフォローを入れてくれるジョン。優しさは変わらない。誰が知ってる人がいるに違いない、と注意しながら入店したというのに、この有様。全くもって情けない。おまけに、
「僕も君のこと知ってるよ!ブキニストで何度か会ってる」と、いとしいエリックの後任だったディレクター氏までいるときてる。全く顔、覚えてない。我ながら、ほんっとに全くもって情けない、、、。気を取り直して、料理選びと注文を終える。

リヨンソーセージとジャガイモ、サラダアントレは、本日のアントレから「リヨンのソーセージ、ジャガイモ添え」。ジャガイモに心引かれて選んだのは言うまでもない。このソーセージ、ほんとはきちんとした名前がついていたのだけれど、忘れちゃった。ちょっと癖のある味で、好き嫌いが分かれるかな。私も、2〜3枚でいいや、この味なら。ビストロ料理なのに、大きな皿にはサラダ菜だけがドレッセされ、エシャロットを効かせた温かなソーセージとジャガイモはココットに入って別でやってくる。自分で混ぜ合わせるなり横に添えるなりしてサラダを作ってね、ということか。まあまあ、かな。ソーセージの味との相性がよいか悪いかに尽きる。ジャガイモ、サラダは、可もなく不可もなく。

小鴨ちゃん。美味!プラは、かわいいカネット(仔鴨)ちゃんの串焼き。好き、カネットちゃん。ジューシーで柔らかく品のある独特の風味にちょっとうっとり。焼肉屋だけあって、ロゼの焼き加減も決まっていてなかなかよろしい。なんで鴨って、こんなに上品なのかしらねえ。ポマールの、こちらもまた品のよいワインがよく合う。

ポレンタの代わりにつけてもらったジャガイモのピュレ、たっぷりもらってゴキゲンなのだけれど、肝心の味がイマヒトツというかごく普通でちょっぴり残念。カネットちゃんのソースも美味で、これに絡めて食べるとおいしいのになあ。もちょっとピュレがおいしかったら、かなり上出来の一品になる。素直にポレンタを食べておくべきだったのかな。今度はポレンタ、試してみようね。

瓶に入ったかわいらしいデセールたちジャムの瓶みたいな容器に入ったデセールがかわいくって、お腹いっぱいだけど、ついつい頼んでしまう。シャリオにズラリと並んだ瓶たちの中身は、ムース・オ・ショコラ、リ・オ・レ、プルーン・コンフィ、クレーム・キャラメル。2個選んでよい、と言うので、ムースとクレームを選択。おっきな白いお皿に、薄いカトルカール(パウンドケーキ)がちょんと乗る。選んだ瓶はそのままテーブルに。自分でスプーンですくってお皿に盛ってね。

デセールちゃん、アップ。なかなかおいしいなにはともあれ、とにかくプレゼンがとってもかわいいよね、このおやつたち。ものすごくクラシックなビストロデセール4品を、こんなにかわいくアレンジするあたり、さすがはサヴォア系、とでも言いましょうか。お味もなかなか悪くない。キッチリおいしくいただける。今度はリ・オ・レを試してみよう。しかしこれ、量多いよ。ひと瓶でたっぷり一人前はある。次回は、2人でこのデセールを1つ注文しましょうね。

早い時間に入った私たちが店を出る時間には、店内は満員御礼。ターブルドットになるバーコーナーも満席。ウェイティングに2組のお客様。はやってるんだねえ。偉い偉い。年中無休で、夜のオープン時間が早い上、週末は夜中過ぎまでオーダーを取ってくれるのもありがたい。マーケティングをきっちりやった、ギー・サヴォアらしいスタイルの店、って言えるかな。またね、ジョン!


dim.26 mars 2004



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