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グルマン・ピュスのレストラン紀行


モン・ヴィエイ・ラミ (Mon Vieil Ami)

アルザス地方はストラスブールの3つ星「ビュルイーゼル」に行ったのは、99年の夏の終わりだった。今、記憶を手繰ると、採光のよいウッディーなサロンで、パリの3つ星とは違うお客様たちに囲まれ、すばらしいメートルのサーヴィスを受けながら極上の時を過ごしたあと、オーナーシェフのウェスターマンさんと一緒に写真を撮った、というイメージがよみがえる。あの日の日記を読み返してみると、どうも料理がイマヒトツだったらしい。サーヴィスも、メートル以外はダメだったらしい。なのにこうして残っている思い出はすばらしく輝いている。トータルとしてとても印象のよいレストランだったのだろうね。

以来、全く縁のなかった「ビュルイーゼル」だが、12月のはじめに、ウェスターマンさんがパリにお店を開くという。なんと!これは行かねば!と、パリに戻って早々にコンタクトを取り、オープン日翌日に、まずは取材でウェスターマンさんとインタヴュー。いつも思うけれど、偉大なシェフってどうしてこうも人としても魅力的なのだろうか。10月に会ってお話しをしたゲラールさんもそうだった。ひどく優しく、寛容で奥ゆかしくて自然体。シェフとしての才能というよりも人間性に惚れてしまう。充実したインタヴューを済ませて、その場でテーブルを予約。グルマン(食いしん坊)というよりはグルメ(美食家)の友達を誘って、早速お料理を拝見。

ウェスターマンさんの腹心、アントニー・クレモが厨房を仕切るレストランは、「モン・ヴィエイ・ラミ(僕の旧友)」と名づけられた。セーヌ川にたゆたうサン・ルイ島のメインストリートにある。高い天井に梁が通り壁は石壁という、歴史と風情が溢れている店の雰囲気はそのままに、ウェスターマンさんの友人が手を加えた内装は、シンプルシックながらどこか暖かな空気を感じるもの。背の高いターブルドットスタイルの大テーブルと、普通の小さなテーブルが共存。テーブル数がちょっとぎゅうぎゅうだけれど、カジュアルレストランだもん、仕方ないよね。

テーブルにつくと、アペリティフとして、アルザスワインかスパイスを効かせたフルーツジュースがサーヴィスされる。もちろんアルザスワインをいただきます。ビノブランの軽くすっきりした味が、アルザスを思い出させる。

トリのロティジャガイモ添え。シュークルートと豚足付きがアルザス風取材時に、これにしよう!と決めていた、「シュークルートのカラメリゼ、豚足を詰めた鶏、ジャガイモのピュレ」をオーダー。料理名をみると分かるように、まず野菜の名前が、その後に肉や魚の名前が記載されている。野菜へのオマージュなんだそうだ。

シュークルート。ドイツ語にするとザワークラフト。日本語だと酢漬けキャベツ?好きなんだ、これ。ブラッスリーで「シュークルート」という料理を頼むと、ソーセージやハムなど山ほどのシャルキュトリー(豚肉加工食品)の下にキャベツ一個分と思われる膨大な量のシュークルートが出てきて、とてもとても食べきれないけれど、ここのはさすがに上品。手をグーにしたときのサイズのちんまりとしたシュークルートがおいしそうに茶色くカラメリゼされている。鶏のロティにトロトロピュレ。おいしそうだ〜。いただきます!

酸味があっさりしたシュークルート、好み。あんまりすっぱいのは好きじゃない。鶏も、極上の質、とは言わないけれど、そこそこ風味のあるものを使い、中に詰めた豚足のコクが味に深みを加えている。ピュレ?美味♪大好きよ。もっとちょうだい!

かわいい蓋つきのココットに入った野菜と豆の煮込みとイカのポワ友達が食べた、「野菜と豆の煮込み、イカのポワレ」がまたいい。かわいらしい陶器のテリーヌ型に入った料理を、自分でお皿に取り分けていただく。イカの柔らかさ、野菜と豆のしっとりとした煮え具合、どちらも抜群。個人的にはこっちの料理の方が好みだったかも知れないな。次来るときには、これを頼みましょう。

カイザーのパンはそつなくおいしく、気のおけないでもスタイリッシュな雰囲気の中、アルザスのアクセントが効いたチャーミングなお料理がいただける。悪くない。セルヴールくんたちがまた、いい男たちなんだよね。ポイント高し。客席からは見えないけれど、厨房にもいい男が何人かいるのを、私は知っている。見えなくても、いい男が作っている、と思うだけでもちょっと嬉しい♪(え、そんなことない?)

ウェスターマンさんの朴訥な優しさがたっぷり詰まったレストラン、という感じかな。私は好きだね、こういう店。日曜日が開いているというおりこうさん。日曜日に行きたい店が出来てよかったよかった。


Ven.12 dec. 2003



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