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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ブノワ (Benoit)

「ブノワ」は、パリで唯一、ビストロでありながらミシュランガイドで星を得ている老舗高級店。歴史ある名店が、この春、アラン・デュカスグループに経営権をゆだねて、多いに注目を浴びていた。日本に作ったブノワは、南仏的なイメージを持つ店だけれど、こちらの店は、従来のブノワのよさをそのまま残したクラシックビストロ。何も手を加えず経営をしていく、とデュカスの言。シェフや客席スタッフを新たに、いよいよ新体制でのブノワが秋にスタート。期待度100%で、さっそくディナーに赴く。

寒いビストロ日和。扉を開けて店内に入ると、あったかくて気持ちのよい喧騒とテンションの高さに包まれる。あ〜いいな〜、これぞビストロって感じで。

くたっとした、でも妙に凛々しい感じの真っ白なナップとセルヴィエット。ぎゅうぎゅうに詰まった小さめのテーブルに、テキサス人なら絶対お尻がはみ出しそうなサイズの椅子。木枠に入れられた大きなカルト。レトロな装飾が美しい飾り皿。 いいね〜、気品あるビストロ、って感じで。もうこれだけで分かる。ここ、絶対においしい!

食べたいものが、本当に本当に目白押し。しかも、エスカルゴのパセリバターだのパテアンクルートだのフォアグラだの舌平目のノルマンディ風など、泣きたいくらいにビストロ的な料理がずらずら。シャンパーニュ&グシェールを味わいながら、料理選びという世にも楽しい悩みに立ち向かう。いつもながらの、レストランで一番楽しい瞬間。もちろん、好みのレストラン、での話。あまり本意でない店だと、どれを選べば失敗しないか、という、切ない悩みを抱えることになるもの。来週も来るから、と、次回の分もシミュレーションしながら、今日は、セップとプールフザンをいただくことに決定。秋だもの。秋に敬意を払わなくちゃ。

セップセップのポワレ。銀の蓋つき器に入ってシズシズと運ばれてくる。目の前で蓋が開けられたとたんに、私の心は森の中にひとっとび。湿った土の匂いと腐った葉っぱの間からポコンポコンと顔を出すセップ狩りを、空想の世界に楽しむ。かぐわしい匂いに存分に想像力を働かせたら、パリの現実に戻ろう。ごく小さめのセップ。調味料は、本当に本当に最低限。時々、パセリとニンニクの香りに負けてしまうセップポワレに出会うけど、ここではそんな恐れは皆無。セップ本来の香りはこういうものです!と断言するごとく、ごく控えめな味付けの中に、なんともかぐわしく繊細なこのキノコの香りが全面に出ている。ブラ〜ヴォ!セップ料理って、こうあるべきだ。デュカス系レストラン「オ・リヨネ」のシェフでこの店に移ってきたシェフ・ダヴィットに心の中で拍手。

雉カスレと比べて悩みに悩みぬいた末に選んだプール・フザン(雉のひな)のココットは、選び取ってあげた価値大あり。柔らかく瑞々しい滋味たっぷりのフィレは、この鳥の繊細さをを饒舌に語り、腿はそのいたいけな歯ざわりと味わい深さをしっかり表現。内臓のパテはトーストに塗られ、たくましさとかぐわしさを見せつけてくれる。肉汁をすってふっくらとしたキャベツの蒸し煮みたいなのが、これまたおいしい。しみじみ。うん、この形容詞に尽きる。しみじみとしたおいしさが、体中じんわりと浸透していく。そんな一品だ。幸せ〜。

ショコラのお菓子横のテーブルに運ばれた、世にも可愛いプロフィトロールを見て、絶対に私たちもあれだね!と決めておいたのに、オーダーの段階でなんと、「ゴメンネ、もう終わっちゃったんだ、プロフィトロールは」と、無常な言葉を告げるセルヴール。泣きながら、クレーム・アンヴェルセ(プリンですね)、タタン、クレープ・シュゼットと、こちらも笑えるほどビストロ的なおやつたちをオーダーする。

料理に比べると、おやつはちょっと落ちるかなあ。クレーム・アンヴェルセは甘すぎる。タタンはなかなか。シュゼットは普通。まあ、これはもともと好きなおやつではないから。プロフィトロールの代わりにこれで涙を止めて、と、セルヴールがサーヴィスしてくれたガトーショコラにヴァニラアイスクリームを添えたのが一番おいしい。私たち、おやつ選ぶセンスないなあ(笑)。

甘いけれど悪くないプラリネと、悪いどころか一口食べて残してしまうマドレーヌで、夕食の締めくくり。いや〜、ほんっとによく食べたね。ビストロのはしくれ、量はやっぱりたっぷり目。よく食べたと思う。我ながら偉い!おいしいものは、最後まで調子よく食べられるんだよね♪最後のお客様となって、シェフ・ダヴィッドとごぶさたしてました、の挨拶して、来週のテーブルを指定して、さようなら。ビストロ万歳!


jeu.29 sep. 2005



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