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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ブノワ (Benoit)

6日ぶりに「ブノワ」です。嬉しい♪

「よいの、続けてで?他のところでもいいよ」という友達に、「いえいえ、もちろんここでよいのよ。通えるものなら何度でも食べに行きたい店だもの」と答えて、ブノワへゴー!ほんと、通えるものなら通いたい。でも無理だ。ビストロとは言えども、高いんだもの。気軽に通える、という店では、残念ながら、ない。でもまあ、それは当然。料理に使われている素材のよさを考えれば、とても40〜50ユーロ程度で片付くはずないもんね。材料を考えると、仕方ない、この値段の高さは。

それにつけても、アラン・デュカスは偉いなあ。この、超有名ビストロを買って、イメージを変えず、古きよき伝統を全て残して経営を担っている。前のオーナー、プチ一家は、他にも買い手がいたのだけれど、どうも気に入らず、売りしぶっていた。最終的に、デュカス君になら任せられる、と決意。いい決意だったと思うよ。おかげで、パリの名物ビストロの命が消えずにすんだ。

支配人のイヴァン−ポールの満面の笑みに迎えられる。彼のサーヴィスは、むかーしむかし、といっても5〜6年ほど前だけど、一度だけ、受けたことがある。「ラ・グランド・カスカード」というブローニュの森の中にあるレストランで。なかなか印象的な(どういう意味かはさておき(笑))応対をしてくれて、この、顔を覚えないことにかけては誰にも引けをとらない私が、先週ここに来たときに、これだけの時のブランクを経てなお、なんとなく思い出したんだ、彼のこと。このとき一緒にレストランに行った友達にあとで、「ねえ!あのメートルがいた!」と報告してたら大笑いしてた。彼女もよっぽど印象に残っていたらしい。それはさておき。

今夜の料理選択はしごく簡単。なんせ、先週の段階でほぼ決めていたのだもの。おおっ!と心を惑わせるような“本日の料理”もないので、すんなり決定。ピンクシャンパーニュをすすったあとは、まずジロールを迎えましょう。

ジロール先週のセップ同様、ごく小さくて味がしっかり乗ったジロールちゃんたちが、わらららら〜とお皿に乗っている。味付けはプロヴァンス風にニンニクパセリ。ボルドー風でエシャロットワインというのも選べる。ミニミニジロールちゃんたちは、キュッと引き締まった味をその小さな体にギッシリ詰めていて、口の中に、食べるという幸を思い切り広げてくれる。セップが、おおおおお〜ぅ、、、というイメージのおいしさなら、こちらは、うきゃきゃきゃきゃっ!って感じのおいしさ。

パテアンクルート味見させてもらった、パテアンクルートがまた、傑作!これだよ、これが、パテアンクルートというものなんだ、と恐れ入る。

おまけ!と、イヴァン−ポールがホタテのポワレを運んでくれる。レモン&バターという、フランス料理の歴史書に載っていそうな、正真正銘オーソドックスなホタテの食べ方。レモンの酸味とバターの香ばしい甘み、酸味に深みを与えるケイパー、そしてカリカリクルトン。ホタテそれらをまとった、世にも見事な高質なホタテが、ごく浅い火を入れられている。食材自体の味、味付け、火入れという、フランス料理の3大ベースを、見事なまでに高度なレベルで表現した作品だ。今までのホタテ経験のベスト2かも。1位?もちろん、ブリファーさんのホタテのサラダ♪

カスレ続いてカスレ。やっほ〜。先週、断腸の思いで退けたカスレといよいよご対面だ。期待を裏切らない、ううん、期待以上に見事なカスレに心ときめく。クタクタになっていない豆が見事。普通。離乳食っぽくなったクタクタ豆だもんね。これほどまでに形を残して、しかも食感はふくよかで柔らかく、味はしっかり中まで染み入っているすごいなあ。御節に入っているつやつやの黒豆みたいだなあ。各種ソーセージや肉類もとろけるようなおいしさで、もう止まらない。たっぷり2人分はありそうなカスレを、ほぼ食べ切ってしまう。

プロフィトロール(シューのお菓子)おやつはもちろん、前回、悲嘆の涙にくれたプロフィトロール。小さなシューにヴァニラアイスクリームを詰めて、上からアツアツのチョコレートソースをかけるのが定番なのだけれど、ブノワのそれは、演出が超おちゃめ。普通のシュー皮だけが乗ったお皿が運ばれ、小さな銅鍋に入ったチョコレートはチーズフォンデュ風にガスバーナーの上にサーヴィスされる。チョコレートがグツグツしたところで、銀のポットに入ったアイスクリーム運ばれ、大きなスプーンでポットリと皿に落としてくれる。あとは、自分でチーズフォンデュ用の長い串にシューをさして、鍋でグツグツいっているショコラに浸してパクリとやり、ハフハフしたところで、アイスクリームをたっぷりほおばる。これを、6度繰り返せば、大満足のおやつ時間の完成だ。

いいアイディアだよね。アツアツショコラのせいで、アイスクリームがすぐに溶けてしまい、最後の頃には、世にも醜いものがお皿に残ってしまうプロフィトロール。このやり方なら、いつまでもお皿はきれいだし、いつまでも熱いショコラと冷たいグラスも味わえるし、なにより楽しい。肝心のお味も、きっちり美味。

ババでもってその店の価値を図っている、という友達に味見させてもらったババも素敵。もっとも、私はあまりババ好きではないので、普通に素敵、と思っただけだけれど、ババ通の友達に言わせると、類まれに高質なババだ、とのこと。なるほどなるほど。よく分からないけど、とりあえず、なるほど、と頷いてみる。

たっぷり食べて、たっぷり飲んで、たっぷりおしゃべりして、たっぷりの3乗分の幸せを体に詰めた夜。ブノワは、食べる悦楽を満喫させてくれる、美食の喜びを知っている人たちが集う、とってもいい店だ。タバコの煙とマドレーヌという欠点はあるにしても。こんな店がある街に住めて、やっぱり幸せだよね。


mer.5 oct.2005



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