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グルマン・ピュスのレストラン紀行


レ・ブキニスト(Les Bookinistes)

8月は、ヴァカンス中のレストランが多くて困ってしまう。自然、この時期に名前が挙がるレストランは、同じところばかり。お天気がよくてめいっぱいおしゃれしたい時は、ムシュー・リシャルトとムシュー・モントゥイエのエレガントなサーヴィスを味わいに「ル・ブリストル」か、ジョスランやジロームのサンパで暖かなサーヴィスを受けに「ル・ジャルダン」のテラス。お天気が悪くてもめいっぱいおしゃれしたい時は、パトリスとクリストフの漫才サーヴィスを目的に「ル・サンク」のラヴラヴ・テーブル。お天気に関わらずてきとーにおしゃれしたい時は、エリックの愛くるしいサーヴィスを求めて「レ・ブキニスト」の窓際の席。

てきとーなおしゃれで楽しめる気軽さから、ついつい「レ・ブキニスト」に通ってしまったこの夏である。6月、7月はそれでも、それなりに自制していたけれど、8月に入ってからは歯止めが利かない。なんやかんやと人を連れて行き、すぴちゃんたちの最後の夜のお食事も、やっぱりここで、となってしまう。来週はお昼にまた行くし、んー、これでは昔「イヴァン」に通ったペースを超えちゃうなあ。月に4度も5度も通うレストランは、「イヴァン」だけだと思っていたのに、、、。

バスが全然来なくって、すっかり遅刻のすぴちゃんと私。
「すぴちゃん、とりあえず先にレストラン入っててよ。私、よこちゃんたち迎えに行ってくるから」レストランの前ですぴちゃんを残し、セーヌ河岸を小走りに急いで、心配そうな顔して待ってるよこちゃんたちと合流。ふう、やれやれ、今夜もまた大遅刻だよ、、、。

外国人が増えるためか、賑わいの時間が早くなるこの季節。9時を前にしてすでに、ワイワイガヤガヤ楽しそうな人で溢れる「レ・ブキニスト」に滑り込み、いつも変わらず素敵なエリック、いつも変わらずサンパなウィリアム、いつも変わらずすべすべほっぺのキャロル、いつも変わらず優しいジョン、いつも変わらず存在感の薄いポンポン、それぞれにそれぞれらしい歓待を受けながら、いつものテーブルに無事着席。すでに、ジョンに遊んでもらっていたらしいすぴちゃんに「おまたせ!」して、めーけー会の夏のヴァカンス、最後の夜にまずは乾杯!

soupe8月に最初に来た時に、ちょっとだけ味見して虜になってしまった「クルジュ(カボチャの一種)のクリームスープ」。シェフ・ウィリアムが自ら、週末毎に収獲してくるというクルジュの魅力を存分に引き出した、完成度の高いトロリとしたスープに、スライスした生のアーティショーの歯ごたえをアクセントにし、リコッタチーズで味の深みを演出している。今まで食べた「レ・ブキニスト」のアントレ達の中でも、ベスト3にノミネートしたい、すっばらしい料理。「次来たら、絶対これ、自分でオーダーしよう」と誓ったのに、次に来た時には一緒の方にお勧めしてしまい、今回はすぴちゃんに取られてしまい、ちょっぴり不本意ながら、別なアントレを注文。いいんだいいんだ、月曜日来る時には、間違いなくこれを頼んで、思う存分堪能するもんねーだ。

soupeavocatで、今夜の私のアントレは、本日のオススメの方から選んで、「アヴォカのヴルーテ、クルヴェット(エビ)とエストラゴンを添えて」になる。夏らしく冷たく爽やかなこの料理、決して悪くはないけれど、アヴォカに加えられたレモンの酸味が、酸に弱い私にはちょっと強すぎるかな。エストラゴンはあまりお好みではないので、丁重によけてみちゃったりする。エビはまあ、それなりでしょうか。よく出来ているんだろうけど、好みじゃなかった。選んだ私が悪かったよ、ごめんごめん。重なってもいいから、すぴちゃんが嬉しそうに食べてる「クルジュのクレーム」か、前からちょっと気になっていた「スコットランドのソモン」を頼むべきだったね。反省。

「ヴォアッラー!シェフからだよー」この人は、笑顔以外の表情をすることがあるんだろうか?と、つい真剣に考えてしまうくらい、いっつも優しい笑顔のジョンが、料理を運んでくる。エリックもそうだけど、ほんと笑顔が絶えない人たちだ。一度エリックに、「まじめな顔してみて」って頼んだら、一生懸命作ろうとしたけど、すぐ口元と目元にしわが寄ってニヤニヤ顔になっちゃって、何度やっても失敗ばかり。「だめだー、俺、出来ないんだよねー、シリアスな顔って。シリアスな顔は、ウィリアムの守備範囲なんだよ」と、シェフに振ってた。そんな彼の目と口の端に寄るしわを、しわフェチな私は、いたく気に入っている。

話を料理に戻しましょうか。
「シェフが君たちに食べて欲しいって。黄色トマトのヴルーテとトマトのヴァリアシオンだよ。ボナペティ!」
「メルシー、ジョン。シェフにありがとー、って伝えてねー」

ご飯のお茶碗みたいな器に、黄色いトロリとしたスープ。夏の匂いをまだたっぷり持っている甘みと酸がよくこなれたトマトに、薫り高いオリーヴオイルがいいアクセントだね。レンゲにはトマトのコンフィ、も一つおまけに、トマトのブリュスゲッタ。赤いおまけたちに、黄色の主役がいい色のコントラストだ。これでスープまで赤いと、ほんと赤だらけ、という感じになるけど、主役が黄色なところがセンスいいね、ウィリアム。(この日は丸いお皿が下に敷いてあったけれど、翌週行った時に、これを食べているお客様を見てみると、長方形のお皿が下敷きになっていた。長方形の方がずっと可愛い!ナイスな変化ですねー。)ブリュスゲッタに飾ってあるエストラゴンを、またしても注意深く抜いて、おいしくいただく。

turbottin「し、しまった、、、、」プラが目の前に運ばれた時、思わず、自分のフランス語のつたなさを深く反省してしまう。
「チュルボッタン(小カレイ)、私たち二人に」こう頼んだ私の意図は、「一つのチュルボッタンを私たち二人に分けてちょうだいな」だったのだけれど、どうやら「私たち二人は、チュルボッタンをいただきます」と言ってしまったようだ。Turbotin の前にきちんと un をつけなかったんだろうね、私ったら。「分ける」という言葉をちゃんと使えばよかった、、、。

後悔先に立たず。大きなお皿にドデーンと横たわったチュルボッタンは、さすがにうちの猫よりは小さいけれど、迫力満天の大きさだ。ほろりと甘い身、オリーヴオイルのあっさりしたソース、トマトとレモンと玉ねぎのティアン。いかにもここの魚料理らしい、とてもおいしい料理なのだけれど、お願い、この量は許して下さい。黄色トマトのヴルーテも食べちゃってるんだよ、私たち、、、、。おいしいのはよーく分かるのだけれど、どうしても残してしまう。ごめんなさい、ウィリアム。

よこちゃんがオーダーした、「アーティショー入りのマカロニ」が、なかなかイケル。今のカルト、8月にはじめてきた時に食べて気に入った「オマールのパスタ」と今夜のマカロニ、2つパスタ料理を用意しているけれど、これがなかなかお上手だ。秋に新しく横に出来る、ウィリアムとエリックのレストランのコンセプトは、スープ、パスタ、生の魚らしいけれど、きっと素敵においしいパスタが食べられるんだろうね。楽しみ、楽しみ。

abricot「アブリコ(杏)のパン・ペルデュ」と「フィグ(イチジク)のお菓子(どんなんだったっけ?おいしかったのは覚えているのだけれど、形とか、忘れちゃったよ)」をつついて、お腹がはちきれそうな、ディナーを終える。

「カフェやアンフュージョンは?」
「もういいわ、とても入らない。それに、これからまだ遊びに行くから、お茶の時間はまだなのよ」
「夜遊びいくんだ?不良娘達だなあ」

不良娘達は、長い夜遊びをするべく、席を立つ。すぴちゃんたち3人が、たっぷり遊んでもらってお気に入りなったらしいジョンと写真撮影大会している時間を利用して、私はエリックとの別れをたっぷり惜しむ。
「今夜も楽しかったー。ありがと、エリック。じゃまたねー。ジェレミーといい週末過ごしてね」
「ピュスもね。大丈夫?そんな疲れた顔してるのに、夜遊びにしに行くなんて、、、。あんまり遅くまで遊んじゃだめだよ。いい子にしてなきゃ!」さすがにね、遊びと仕事が重なって、ちょっと疲れ気味の今日このごろ。
「は〜い、いい子にしてまーす♪」なんて言いながらも、
「バー・エミングウェイ」に遊びに行く。

ヴァカンス明けで元気いっぱいの、エミングウェイの皆々様。クリストフなんて、トレードマークのくまが全然ないじゃない!久しぶりにヨアンヌが作ってくれるお酒を楽しむ。ヴァカンス前に来た時には、珍しくもコリーンのお酒を飲んだんだよね。「疲れてるの、ピュス?」と、ここでもまたヨアンヌに顔色を読まれる。だめだなあ、最近。年が疲れた表情に出るらしい。困ったもんだ。

疲れているならよせばいいのに、ヨアンヌとコリーン、居合わせたアメリカ人のお客様と一緒に、場所を変えて明け方近くまで、テンション高くペチャペチャおしゃべり。明日きっと、一日寝てるぞ、これじゃあ、、、。夏の終わりの短い夜は、こうしてあっという間に過ぎていくのでした。疲れたけれど、あー、楽しかったー。


ven.31 aout 2001



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