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グルマン・ピュスのレストラン紀行


「ル・カメレオン」(Le Cameleon)

木曜日になると、「カメレオン」に行きたくなる。

一度も日記に書いたことはなかったけれど、この一年、大いに気に入って通っているビストロだ。モンパルナスの小道に佇むいかにもビストロ的な店は、毎夜、食いしん坊たちが集って大賑わい。手作り燻製ソーセージ、各種テリーヌ、インゲンサラダ、ブーダンなど、肩のこらないとびきり美味なゴハンを食べさせてくれる。

初めて行ったとき、連れて行ってくれた友達が耳打ちした。「木曜日はね、極上のアッシ・パルマンティエを作ってるんだよ」。ひき肉とジャガイモピュレの重ね焼き、アッシ・パルマンティエ。英語で言えばカッテージ・パイ。私がフェティックに愛している料理で、これだけはおいしく作れる自慢料理でもある。牛ひき肉、鴨ひき肉、トリュフ入り、ポトフの残りなんかをつぶしたものにトロトロのピュレを重ねてチーズを振って焼くこの料理が、私は本当に好きでたまらない。初めてここで食べたゴハンは、木曜日でなかったので、「鴨のテリーヌ、緑コショウ風味」に「オーヴェルニュの燻製ソーセージ、ジャガイモピュレ添え」。もちろんどちらも絶品で、ピュレの味にいたっては恍惚状態。このピュレで作るアッシ、どんなにおいしいのだろう?とうっとり想像しながら夜を過ごした。

以後、「カメレオン」に行く日は木曜日、と決めている。プラは、馬鹿の一つ覚えのように、アッシ、アッシ、またアッシ。アントレは、「クルジェットのサラダ」、「インゲンのサラダ、フォアグラ&マグレ添え」、「ブーダンのサラダ」あたりを、その日の気分で。

夏であろうと冬であろうと、お腹があまり空いていなくても、ジャガイモ料理を1週間食べた後でも、ここに来れば必ずアッシ。そして今夜もまたアッシ♪

女6人、かしましく楽しいお夕食。ユーゴ・ボスの香りに包まれた心はオンナのセルヴールと新年のご挨拶を交わして、席に着く。

キールで乾杯して料理選び。といっても、私の料理選びはいたって簡単。アントレだけ決めればいいんだもんね。こちらも、アッシに引けを取らないくらいに気に入っている、「インゲンサラダ、フォアグラ&鴨マグレ」を選び、オススメのボージョレーをトクトクとグラスについで、極上カジュアルゴハンの始まり始まり。

インゲン&フォアグラ&鴨マグレのサラダ自家製フォアグラの薄いスライスと燻製鴨胸肉を添えたインゲンのサラダ、お気に入り。トゥールーズにいたときに、こういう料理、よく食べたよね。これにジェジエ(砂肝)が入れば、完璧なるトゥールーズ風だ。ジェジエのサラダはまた別にカルトにあるけれど、そっちよりも、甘く芳香高いフォアグラといぶした香りがいい感じの鴨が入ったこちらのサラダのほうが私は好き。細いインゲンも大好きよ。ワインがすすむ。自家製ブーダンのサラダも絶品なのだけれど、こちらはアッシ同様、運がよくないとお目にかかれない品物。勢いよく平らげて、アッシを待ちわびる。

アッシ。巨大です「ヴォアッラ〜!アツアツだから気をつけてね」と運ばれてくるアッシにまずはうっとり。見るからにアッツアツそうなアッシちゃん、新年明けましておめでとう。今年もたくさん食べさせてね。

野菜ブイヨンで煮込んだ牛肉をほぐしたものにトロットロピュレ、表面はカリカリのチーズ。ハフハフしながら頬張るアッシ、たまらない。私って、どうしてこうも、ジャガイモ料理が好きなんだろう?この国に来て一番堪能している食材は間違いなくジャガイモだ。次はショコラかなあ。熱いうちこそおいしい!と、「おっきすぎるよ〜」とひるむ友達たちを尻目に、ペロリと自分のアッシを平らげ、同じくアッシ、でも食べられちゃう「食べきれない、、」と残されたアッシにまで手を出す私。アッシ・パルマンティエ協会から表彰されてもいいと思う。そんなのないのかな?じゃ、作ろうかな、自分で。

家庭料理の代表メニューだし誰もが知っている料理なのに、なぜかレストランやビストロでお目にかかることはほとんどない。昔々、フランスを代表するレストラン「ミシェル・ゲラール」で鴨とトリュフのアッシを食べたっけね。おいしかった。でもアッシはやっぱり、こういう店でバクバクと頬張りたい料理だ。

極上アッシと、コクのある素晴らしいボジョレー、それにキッチリおいしいサラダをいただき、大満足。今夜は、初めてオヤツを味見してみたけれど、別に試さなくてもよいかな(笑)。いつもはゴハンでお腹いっぱいになりすぎて頼んだことのなかったけれど、さすがに女6人集まれば、誰かがオヤツを欲しがる状態になる。カフェについてくるプチマドレーヌとショコラがそれなりにイケルので、この大量ゴハンのあとの甘味はそれで十分だ。

何度食べても飽きることのない「カメレオン」のアッシを、今年は何度食べられるだろう?叶うことなら、毎木曜日の夜は必ずここでゴハンを食べたいくらいだ。アッシのことばかりになってしまったけれど、ソーセージや仔牛のトロトロ、ペッパーステーキなど、肉料理は何でも美味。付け合せがピュレでない場合は、ピュレに変えてもらうのをお忘れなく!こんな店があるからフランスは素敵だ、としみじみ思う、極上ビストロです。

Jeu.8 jan.2004



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