homeホーム

グルマン・ピュスのレストラン紀行


「ドゥ・ラ・ガルド」(De la Garde)

アラン・パッサールと「アルページュ」が好きだから、と言うわけではないのだけれど、彼の弟子レストランづいている今日この頃だ。この1〜2年、パッサールの弟子たちの活躍が目立っている。2000年秋にオープンしたパスカル・バルボの「ラストランス」、昨年秋にオープンした「シャマレ」(オーナーシェフの名前は忘れた)共に、オープン後数ヶ月で1つ目の星を獲得するという快挙。一気に、エコール・パッサール(パッサール学校)の名声が高まった。料理の腕というかエスプリが抜群のパッサール、下の子たちを育てる才能も持っているのかしらね。

「知ってる?もう1人、独立したヤツがいるんだよ。秋だったかなあ。すごいいい評判取ってるみたいなんだ。僕、友達と来週行くけど、一緒にどお?」と言う「アルページュ」のメートル・ドテル、ロランの言葉に飛びついて、エコール・パッサールの最新卒業生の店、「ドゥ・ラ・ガルド」を体験をしてみる。

店内アンヴァリッドから程近い、静かなアヴニューに建つこぢんまりとした店。午後の陽光がのどかに差し込んで気持ちい。チープに、でも一生懸命居心地よくかわいらしく飾ってる店内。入り口脇のポットのコレクションがチャーミング。

ヨアン・マラッチーニは、ただいま26才。料理の世界に入って11年目にして自分の店を開いたごくごく若いオーナーシェフ。ほんとは10年で独立したかったんだって。出身はもちろんオーヴェルニュ地方。この若さで店を持つあたり、さすがはこの地方の出身者。素朴な、でも所々に個性が散らされたカルトを好もしく眺める。シェフのちょっぴり無骨な誠実さが伝わってくるような料理たち。「ピエ・ドゥ・ポーのガレット仕立て、ランティーユ添え」と「鴨のハチミツ風味、生姜を効かせたカブ添え」を選んでみる。

ウイキョウスープアミューズはフヌイユ(ウイキョウ)のクリーム仕立て。フヌイユの香りって、そんなに好みのものじゃないけれど、柔らかくまとまっていてよろしいんじゃないかな。ピマン・デスプレット(唐辛子の一種)が振られているのは、最近の料理の傾向だ。

豚足のお菓子仕立て、レンズマメ添えさて、ピエ・ドゥ・コション(豚足)。コロッケ仕立てになっている。中のピエ部分はとてもおいしいのだけれど、揚げ加減がちょっとベタベタだなあ。ランティーユ(レンズマメ)の煮込みの上に乗っかっているからべたついちゃったのかしら。カリカリの揚げたてだったらよかったのになあ。それ自体はきっちりとおいしく料理されているピエ。ランティーユだって美味だし、上に飾られたサラダ菜類だって悪くない。揚げ方だけの問題だ。それにしても、これ、量多い。これだけでお腹いっぱいになっちゃうよ。もちょっとちっちゃいといいのにね。

アカザエビのテンプラそんなときに限って、おまけがやってくるんだよね。「ラングスティヌ(アカザエビ)のテンプラ仕立てよ。シェフから。食べてみてね」とマダムがニッコリ。こちらは笑顔が引きつる。ああ、この後、まだ鴨があるのに、、、。

長米を衣にしてサクリと揚げたラングスティヌは、可もなく不可もなく。エビ自体は普通においしいけれど、取り立てて感動するような味でもない。揚げ方も普通。お米がちょっとカリッカリすぎる部分があるのがイマイチ。「アルページュ」を彷彿させるエミュルジョンときれいな色のクリームがいい感じ。そしてお約束のピマン・デスプレッドの赤が皿に散っている。

鴨のハチミツ風味、生姜を効かせたカブ添えすでにお腹いっぱいの状態で迎えてしまったかわいそうな鴨。おいしいよ、きっちり。潔い焼き加減もいいし、インパクトのあるソースも美味だ。カブはあまり好みじゃないけど。なにはともあれ、お腹がいっぱいなの〜。量も結構あるしね。本来なら全部食べてあげたいところなのに、悲しいことに半分以上残してしまう。ゴメンナサイ、シェフ。今度、お腹すかせてこれ一皿だけ食べに来ます。

デセールに立ち向かう余力があるはずもなく、膨らみきったお腹を抱えてゴチソウサマ。パッサールや「ラストランス」のバルボが作るような、フェミニンで軽やかに震える感動はない。料理自体、どちらかと言うと男性的だもんね。今日食べたものに関しては、こちらの体調の問題もあって今ひとつの盛り上がりだったけれど、最高の状態で食べれば、誠実で奥行きのある、年のわりにかなりこなれた料理を出すんだろうなあ、という感触は得た。

そんな予感どおり、一月後に訪れて、ちょっとだけ味見させてもらった「舌平目の牛骨髄巻き」は絶品。力強く堂々とした料理で、マラッチーニの才能はこれなんだ!と、しみじみ堪能させてもらう。人気店な理由がよーく分かった。しっかりお腹をすかせて、たくましく美味な料理たちを楽しめる店だね。ただ、私はやっぱり味見程度で十分かも。エコール・パッサール出身者のレストランたちの中では、私の好みはやっぱりダントツで「ラストランス」です。ずーっと行ってないなあ。あの、風に舞うようなさわやかな料理が食べたいな〜。ずっと借りっぱなしの傘も返さなくっちゃいけないしね。


jeu.13 fev. 2003



back to listレストランリストに戻る
back to list15区の地図に戻る
back to list予算別リストに戻る


homeA la フランス ホーム
Copyright (C) 1999 Yukino Kano All Rights Reserved.