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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ジョルジュ (Georges)

なんでこんなところの待ち合わせにしちゃったんだろう。夕立が降る寒いなか、オテル・ドゥ・ヴィルの広場に佇む。うー、寒い。早くレストランに行きたいよお。

昨日の夜中、ドラマティックな雷と大雨がパリを襲い、たった一週間の夏らしい気候が終わってしまった。ぐっと気温が下がり、夕立まで降る寒空の中、今夜はボブール(国立近代美術館を含むポンピドゥー・センター)へ。今夜の目的は、絵ではなくてレストラン。ボブールの上に出来た、コストの新作「ジョルジュ」で夕食。

新作、といっても出来たのは3月。その後、アンヴァリッドにも新しいレストランを作ったから、コストの最新作ではないけれど、オープンから4ヶ月がたった今も、話題のレストラン。

atomoボブールの下で受付を済ませてエレベーターでレストランに上がる。グレーの空をバックに、雨上がりの霧の向こうにエッフェル塔が霞む夜8時。250席はありそうな、広大な空間のレストラン。巨大な繭みたいな空間で有名な「ジョルジュ」は、まだ日中の雰囲気が残って客の入りもまばら。それが、空の色が藍になる1時間後の午後9時には一分の隙もなく人で埋まり、入り口のところにはウェイティングの人がひしめくありさまとなる。

ヴァカンス中、しかもさすがに4ヶ月も経っているのだから、落ち着いている頃でしょう。こーんなに広い空間、満員にはならないよね。なんて考えは、一気に吹っ飛んでしまう。すごい、この人の数は。

atomo高い天井、パリを一望する広い視界の大きな空間。DJが作り出す音楽が流れ、スラリとしたバラが一輪飾られたボーッとした光を放つテーブルを囲むのはしかも、「コスト」から流れてきた?って感じのクールな人々。こんなヴァカンスシーズンでしかも観光名所ボブールにあるレストラン。さぞかし観光客で賑わっているだろう、と思って来たのに、とんだ誤解。profitteroleヴァカンスに出かけていないスノッブなパリジャンがみんなしてここに来ちゃった?みたいな雰囲気が漂っている。

言うまでもなく、従業員のおねーさんもおにーさんも、モデル顔負けの顔とスタイル。うっひゃ。ちょっと着てくるもの考えたほうがよかったなあ。

crabお料理の方は、「コスト」や「アヴニュー」と同じ料理がほとんど。飽きちゃうんだ、ちょっと。すっごく美味しい!っていう訳でもないしね。まあ、この手のレストランは、雰囲気を楽しむところだから、料理については文句を言うまい。

carte薄い紙を折りたたんだカルトや流れるようなフォルムが美しいカトラリーは素敵だ。担当の可愛いお姉さんに頼み込んで、カルトをゲット。メルシ、お姉さん。

ジャック・ガルシアがタッチしていないコストの新作は、なんだか昔のコストを思い出す。ちょっとひねった機能美。軽いテンポとコケティッシュさ。お金はかけていない気がする。見せかたが上手いんだ。テーブル、椅子、途中でぐんと落ちるライトの光量、toillet洗面所の作りまで、ボブールという空間に占めるレストランとしてピッタリだ。

Air、Surface、Abstraction をテーマとしたレストラン。ボブールの6階と大きなテラス、広大なサル、そして、あれ?アブストラクション(抽象)は何を指しているのかしら?あの繭のオブジェを中心とした、近未来的な内装?それとも料理の名前?まあ、何はともあれ、とても気持ちいい空間ですね。

「ジョルジュ」のクールな雰囲気を堪能して、喧燥がいっそうに高まる夜中、すっかり雨の上がった外に出る。ボブールのユニークな建物の横にある「カフェ・ボブール」を覗く。あれ、椅子、変えたんだ?内装もちょっと変わった?それだけは以前と変わらない素敵なセルヴールにプティカルトをもらう。

そういえばこれが、コスト兄弟の初めての作品だったけ?あれ、違うか。でも、かなり初期の作品だよね。懐かしいな、昔よく来たっけ。左上に「ジョルジュ」、右前に「カフェ・ボブール」。10年にわたるコストの変遷を一瞬に見る。10年前も今も、コスト兄弟はパリのレストラン・ホテルシーンに君臨している。


lun.24 juillet 2000



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