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グルマン・ピュスのレストラン紀行


JAMIN(ジャマン)

99%の幸せと1%のがっかり。

2002年は、「ル・ブリストル」で幕を開けた。あしゅりんのお誕生会にかこつけて、またまた「黒トリュフのサラダ」に恍惚として、幸せなレストラン通いの始まり。でも、私の意識は昨年中からすでに、スケジュール帳の5日の欄にある「Le Bristol」を通り越して、10日の欄にハートマークとともに書き込まれた「Jamin」に、完全に向かっていた。

ジョエル・ロビュションが伝説のレストランに作り上げた「ジャマン」。筆頭弟子だったブノワ・ギシャールがこのミシックなレストランに新たな歴史を刻みはじめたのは、96年の秋だった。以来、確実な道を歩みつづけ、こぢんまりとした地味なレストランは、ロビュションの血を強く受け継いだすばらしいレストランとして、密かながらも高い評判を得ている。

ここのパンプルムース(グレープフルーツ)のソルベとタルトを溺愛している私は、その親密で暖かな雰囲気も手伝ってか、なぜか冬場にしかこのレストランを訪れない。行く度に、感動に打ち震えて店を後にするのに、次にトロカデロまでやってくるまでにかなりの時間が過ぎてしまう。席数が少なくて予約が取れない、というのも確かにあるのだけれど、私にとっては冬レストランのイメージが強い、大切なお気に入りの場所。昨年3月以来の嬉しい再訪だ。

久しぶりにトロカデロからクレベールを歩く。すっかりインテリアを変えてイメージ一新の「ラ・ビュット・シャイヨ」で、久しぶりにダヴィッドさんと言葉を交わす。メガネなんてかけちゃって貫禄が出てきたダヴィッドさん、おちゃめな笑顔が相変わらずかわいいね。近いうちに来るね、って約束して(絶対守らないだろうなあ、、、)、急ぎ足でロンシャンへと通りを折れる。

salle「ボンソワー、マダム・グルマンですね?お連れの方たちはもういらっしゃっていますよ。さ、どうぞ、コートをお預かりしましょう」いつもながらに上品で適度にあでやか、スマートな身のこなしがステキなマダム・ギシャールの笑顔と、受付に置かれた美しい花に迎えられる。マダム・ギシャールは、私が今までにサーヴィスを受けたことのあるどんなマダムよりもずば抜けてすばらしい。控えめでエレガントで柔らかく、ちょうどよい華やかさと頭の切れを兼ね備えた、これぞ理想のマダムでしょう。こんな女性になりたい、という憧れの対象でもある。マダムの手からメートルたちの手へと引き渡され、椅子を引いてもらってテーブルに着席。シャンパーニュでチン!して、期待に満ちた数時間に喜び勇んで身を投じる。

デザインは同じだけれど紙質、変わったかな?と感じる、シンプルでお気に入りのカルトを広げると、読んだだけで思わず「うぅ〜ん」と喉をゴロゴロ鳴らしちゃいそうな、いかにもおいしそうな料理が並んでいる。このレストランとは、字面としての料理との相性が抜群なんだ。「レ・ブキニスト」やシリノさんの「オステルリー・ジェローム」、昔で言えば「イヴァン」のように、料理の書き方からしてすでに相性のいいレストランって存在する。嬉しい悲鳴を上げながら苦労して料理を選ぶ楽しみを与えてくれるレストランたち。

ア・ラ・カルトに並ぶお料理にうっとりしたあとに、本日のムニュの内容に真剣に耳を傾ける。このレストラン、日替わりのムニュがこのクラスのレストランにしては信じられないくらいに安くて、しかもめっちゃめちゃ魅力的。他のレストランでは考えられないことだが、私の「ジャマン」体験においては、ムニュを食べてきた回数が断然多い。ア・ラ・カルト、3〜4回しか食べてないでしょう。デセールが、ムニュだとシャリオお菓子の盛り合わせになり、デコラティフな皿盛り愛好家の私としては、それだけでも本来なら遠慮したいのに、くだんのパンプルムースちゃんたちはシャリオに載ってやってくるのと、ここの皿盛りデセールにいまひとつピンとこないのも、習慣に反して私をムニュっ子にさせる要因だろう。いつもながらに、魅力抜群の今夜のムニュ。
パンタードとフォアグラのソシッソン
エスカルゴとマロンのフリカッセ
サンドルのポワレ、ブレットのグラタン
ピジョンのロティ
フロマージュ
シャリオ・デセール
朗々と説明をしてくれるセルヴールの横で、彼がひとつずつ料理を説明するごとに、料理を想像してはうっとりと鼻を鳴らしてしまう。決まり、これで。お肉が駄目な1人はア・ラ・カルトにして残り3人は、ムニュ。テーブル全員ムニュでお願します、なんていうイジワルは、この優しさあふれるレストランで言われる訳ない。

カルトにうっとりしている最中に運ばれてきたアミューズは、「鶏卵のフラン、フォアグラムースを添えて」。(ああ、だめだ、今、これ書いていると、あの味を思い出して、頭がおかしくなりそうだ、、、。た、食べたいよぉ、、、。)つややかな白い陶器に入ってやってきたのは、薄黄色のフラン。フランス風茶碗蒸、という感じでしょうか。スプーンを突き立てると、プルンと震えて鶏のフォンの見事な香りが立つ。先にスプーンを口に運んだ3人が次々と喜びの悲鳴を上げるのを聞きながら、私もゆっくりスプーンを上げる。「分かるよ、その気持ち。そりゃ悲鳴を上げたくなるでしょう。ギシャールの料理にはじめて触れたら」なんて思いながら、ツルリと生暖かいフランを口に入れた瞬間、悲鳴どころかよじれるようなうめき声を上げちゃったね、私は。人間、あまりにおいしいものを口にすると、思わず笑っちゃうのだろうか?しぼりだすようなうめき声のあと、脱力感とともに笑いが襲ってくる。
「アッハハハハ!うっそみたい、何かの冗談?って感じのおいしさだ〜」食べるのが早い他3人は、
「おいしい!おいしい!ほんとにおいしい!」を連発しながら、もうほとんど食べ終わってる。
「下も食べた、ピュスさんっ!?」ひとくち目の余韻からようやく現実に戻りフランを覗き込むと、下のほう敷かれた薄茶のフォアグラのムースが見えている。嬉々としてスプーンを握りなおし、今度はフォアグラとフランを一緒にパクン。卵のフェミンさとフォアグラのマスキュランさが程よく調和し、ツルリとシットリな食感が合わさって、まさに魅惑的な一品。これがアミューズ、、、?こんなアミューズ食べさせられたら、あとの料理が霞んじゃうよ、、、、。あまりに見事なアミューズに遭遇し、胸が痛いくらいに感動しているの感じる。「ジャマン」のこのアミューズを、私は一生忘れないだろうなあ。
「いかがでした?」ルノーに似ている、ここでの私のお気に入りセルヴール君が皿を下げに来て、我に帰る。
「すばらしかった、ほんとうに」思わず言葉が少なくなってしまう。どんな言葉を選んでも、この料理にはふさわしくない。

ニコニコソムリエ叔父さんがデキャントしてくれたお酒は、大好きなペサック・レオニャンからシャトー・オリヴィエのセカンド、セニュリー・ドリヴィエの97年。あの地域ならではの、土っぽさと草いきれが上品にまとまっていて、このレストランに似合うお酒だね。好きよ、とても。

pantade foiegrasさてお料理も本番に入ります。まずは、「パンタード(ほろほろ鳥)とフォア・グラのソーセージ」。透明感のある白いお皿には、フォア・グラやピスタッシュを入れたソーセージにジュレがかかっている。添えてあるのは、田舎パンのトーストや果物に火を通したもの。淡白なパンタードにフォア・グラがコクを添え、ピスタッシュの歯ごたえがいいね。洋なし、ブドウ、アンズなどを焼いたのやコンフィにしたのも、ソーセージとの相性最高。特に、この洋なしとブドウ、見事だねえ。持って帰りたい。色のアクセントに添えられた緑の葉っぱは、何の葉なのかしら?食べてみると、クルミかハシバミのオイルがかかっていて、香ばしい匂いがパンやソーセージに一気に花を添える。すっごいなあ、この葉っぱを添えたセンス!いやもう、お皿の上に乗った10種類ほどの食材の相性のよさに感涙。ギシャール〜、やっぱりあなたはすごい〜!

escargot「ジャマン」のムニュには、必ずスープが入っている。今夜は、「エスカルゴとマロンのフリカッセ」。おっきなエスカルゴちゃんがごろごろ入り込んだ泡のたつヴルーテは、マロンの甘みとフォンの旨みが程よく調和して、さすがの出来。強いて言えば、ここにエスカルゴちゃんたちがいる意味がよく分からないかな。いたって別にいいけれど、いなくたっていいと思う。マロンだけでも完結している。まあ、なにか具がほしかったのだろうけれど、例えばきのこのポワレとか、もう少し別のものでもいいかも。まあ、私が個人的にエスカルゴがそんなに好きでないから思うだけかもしれないけど、栗にはもっと他に合わせてあげたい材料があると思うけど。それこそ、フォア・グラのポワレのかけらとかも合うんじゃないかな。予算オーヴァーか(笑)?いやでも、すごくおいしいのよ。特にヴルーテ部分は最高。焼いた栗もすばらしく美味だし。

bretteお魚はサンドル(スズキの一種)のポワレ。すっと音もなくいっせいに蓋を取られたお皿からは、香ばしい香りが立っている。料理を暖めておく銀の蓋、このレストランは、ア・ラ・カルトのはとてもかわいい取っ手がついているのに、ムニュに使われるのは、取っ手に細工をしていないタイプ。料理が運ばれるたびに、私の視線は、自分のお皿でなくて、お向いの人の目の前に置かれている細工を施された取っ手に行ってしまうんだ。いいなあ、あっちのはかわいくて、、、。

ルノー似のかわいい子は料理の説明ができる立場でないらしく、ここしばらく私の横に立つのは、先輩セルヴールたちばかり。ルノー似はいつもテーブルの反対側。ち、こっち側に来てくれればいいのに。
「ここのセルヴール達の中で、ひとり気に入ってる子がいるんですよー。誰か分かります?」と同席者の皆様に聞いてみると、
「あの子でしょ?」
「ぜったい彼だよ」
「あれしかいないじゃない、ピュスさんの好みの子なんて」と、皆様即答。あ、やっぱ、すぐ分かるか(笑)?

さて、サンドル。柔らか目の身は上品な蛋白さ。スズキ系の魚は大好きだ。カリリと焼かれた表面がいいね。ギシャールは魚の焼き方、いつもすばらしい。サンドルの下には、クレッソン(だったっけ?)のピュレが緑も鮮やかに敷かれ、まわりには赤ワインを煮詰めたソース。品よく作られたブレットのグラタンは、クタクタに煮込んだブレット好きの私には、ちょっと上品すぎるけれど、まあまあおいしい。いずれにしても、魚の味と焼き方が完璧!という料理だ。

pignonお肉は鳩。この間の「ル・ブリストル」でも鳩だったし、最近鳩づいている。3〜4年ほど前に一度、鳩を食べられなくなった時期があった。1年以上続いただろうか?つらかったなぁ、、。鳩のおいしさをもともと知っているだけに、食べられなくなった自分がほんと悲しかった。うまく鳩に復帰できたきっかけは、どこのレストランだっただろう?今となっては思い出せないけれど、鳩に回帰させてくれたそのレストランに感謝しなくては。こんがり焼かれた鳩肉に、肉汁を詰めて作ったらしいソース、付け合わせは赤紫に輝くベトラーヴ(ビーツ)のピュレに載ったサルシフィル(ゴボウ)のソテー。鉄の匂いのする鳩は力強く、鳩の脂が混じった濃いソースで唇をぬらぬらさせながら足にむしゃぶりついていると、狩猟民族の魂が感じられる。この美味な脂の最後の一滴を逃すものかと、指を丁寧にしゃぶっていたんだろうなあ、いにしえの狩人達は。そうしてみたい欲求にかられるけれど、実際のところは、頃合いを見てしずしずと運ばれてくる、セルヴィエットつきの銀のランス・ドワにたたえられた水で指を上品にすすぐだけ。くちびるのぬらぬらもセルヴィエットで拭き取って、残りわずかになっている葡萄酒をひとくち。至福のひととき。

フロマージュ選びは、賑やかに楽しく行われる。「今夜はコンテがすばらしいです」と始まったセルヴール氏の説明を受け、それぞれお好みのフロマージュ選びに余念がない。と、そこへするりとやってくるルノー似。おお、珍しくも私のそばに立ってくれてる!
「コンテがすごくおいしいですよ。ぜひ召し上がってみてくださいね」と、なんと、声までかけてくれる。うれし〜な〜!アミューズを運んでくれて以来、私の側には一度も立ってくれなかったルノー似と、ようやく会話する機会が出来た。よーし、おしゃべるするぞー!と、ニコニコ笑顔を作って首を右にひねって仰ぎ、
「そう聞いたわ。楽しみ、大好きなのよコン、、、、」と、言いかけたところに、左肩に置かれる手を感じる。
「ネエネエ!コンテの他はどうしよう!シェーヴルはどれがいい!?」
「え?ああ、シェーヴル?今時期じゃないから、イマイチですよ、きっと。牛のトロトロ系にすれば?」短いアドヴァイスして、また彼に視線を向ける。まだそこにいてくれたルノー似と、気を取りなおして会話再会。
「ええ、コンテね。いかにもおいしそ、、、」
「ヴァシュランがないよのよねぇ、、。あれはどお?あの紐がついたの。おいしいかしら、ピュスさんっ?」と、左腕を掴まれる。しぶしぶ顔を反対側に向けて、
「ん?あれは、リヴァロ。おいしいよ。あれにしなよ。あと、ポン・レヴェックでももらってみれば?状態よさそうだし」
「シェーヴルは?」
「だから、シェーヴルは夏のほうがいいってば!」
「あっちの白いのは?」
「あれは羊。きらいでしょ?」
「きらい〜!」
「これとこれとこれにしてあげて!」と、フロマージュを切り分けてくれているセルヴールに頼んで、ようやく反対側に目をむけると、なんてこった、ルノー似はすでにその場を去ってしまっている、、、。

「クスン、クスン、、、」フロマージュを切ってもらって一段落して、横に座った友達を恨めし気に見つめる。
「せっかく、彼が久しぶりに横に来てくれたのに、、、」
「え、そうだったの?ゴメン!フロマージュに夢中になってて気づかなかったわ」
「そうや、ひどいわー。あの子がピュスさんに話し掛けてたところだったのに、横から口出しちゃって!」
「ほんとやー。せっかくのチャンスだったのに」
「クスンクスン、、、、」
「いや、ゴメンネー。ほんと、ぜんぜん気づかなかったわー」
「クスン、いいの、、。このコンテが、ほんとにおいしから、、、」ギーちゃんのところに劣らないほどすばらしいコンテと、最後のワインの一滴に恍惚として、ルノー似のことは、頭から消えてしまう。コンテとペサックのお酒に慰められて、どうするんだ、、、。

chaliotさて、ようやくデセールの時間に辿り着きました。エレガントなシャリオに載ってやってくるお菓子達にワクワク。ショコラのミルフォイユ、マングーのシブースト、クルミのタルトなどなど、いろいろ並ぶ中から、やっぱりどうしてもパンプルムースのタルトは外せない。一切れ切ってくれるセルヴール氏にこっそりお願い。
「もう一切れ、ほしい♪」グラス類が用意されたシャリオの上に季節柄用意してあった、丸ごとのガレット・デ・ロワを発見。
「誰も食べてないのね。飾り物?そんなことないわよね」
「もちろんです。召し上がりますか?フェーヴもちゃんと入ってますよ」こちらも一切れ切ってもらって、あとはパンプルムースのソルベと栗のグラス。飲み込みの早いセルヴール氏は、何も言わずとも、パンプルムースソルベを二すくいお皿によそってくれる。

いとしいいとしいパンプルムースのタルトは、年とともにほんの少しずつ感動が薄れていくような気がしないでもないが、こちらの舌が慣れちゃったんだろうね。サクサクのタルトに甘みの濃いパンプルムースクリームはとても美味だけれど、初めて食べた時の感動はもはや得られない。限りなく糖分の少ない、ほんと、これでよく固まってるよ、といつも感心するソルベのほうは、さすがです。ガレットは、そりゃロランのガレットにはかなわないけれど、ソツなくおいしいし、濃厚な栗のグラスもすばらしい。お腹いっぱい幸せいっぱい。すっかり満ち足りて、ミントのお茶をすすりながら、素敵な夜の余韻に浸る。

いい店だ。小さくて天井も低いので、お客様のざわめきがちょっとうるさいのが玉に傷だけれど、お客様もセルヴール達も皆嬉しそうな顔をして小さな空間に集っている。古参新参を全て含め、マダムを中心とするセルヴール達の質の高さは、このレストランのすばらしい美点。仲良しなんだよね、セルヴール達。狭い空間を気配もなくスマートに歩き回り、手が空くとサロンの端に立って待機。楽しそうに小声でおしゃべりしながら笑みを交わしては、めざとくお客様の動きを察知し、サーヴィスをするべくスッとテーブルに近づく。押しつけがましくなく、馴れ馴れしくもなく、距離の取り方がすばらしい。なに?と思わず眉を潜めるようながさつさもなく、あくまでシンプルでエレガントなサーヴィス。ソムリエからコミまで、みんなが同じタイプのサーヴィスをしてくれる。いいよなあ、こういうサーヴィス陣。誰もが同じレヴェルを目的にしている、意識のはっきりした確実なサーヴィス。堅実で嘘がなくシンプル、それでいてチャーミングなこのレストランにぴったりのサーヴィス陣だ。深い幸福感に浸りながら、今夜の幸せを100%にしてくれなかった物を手に取ってみる。

1%のがっかりは、客席に入った瞬間に目に飛び込んできた。席に就くなり挨拶もそこそこに私が発した言葉は、「え、うそでしょ?かわっちゃった、、、、」ろうそくと花。クラッシックなランプに揺らめくろうそくと、銀の一輪挿しに投げ入れられた深紅のバラの花を、私はとても愛していた。テーブルを飾るレトロなこの小道具たちは、「ジャマン」というレストランの伝統と品位を感じさせてくれ、花やろうそくを眺めては、ロビュション時代の「ジャマン」に思いを馳せたものだった。そのろうそくと花が、変わってしまった。銀の器に入ったブーケは愛らしくてセンスもよくなかなか素敵。他のレストランにあれば、喜んで眺めるだろうけれど、どうしてもあのバラ一輪が懐かしい。それでも、まだこれは許せる。悲しいのはろうそくだ。数年前からはやりはじめた、透明ジェル状のろうそく。確かにきれいだし、私も使ってる。でもでも、デザイナーズ系レストランに置くのは分かるけど、「ジャマン」には似合わない。あのガラスで覆われた、クラシックなろうそくランプの方が絶対にいいのに、、、。こんな所で経費削減をしているのだろうか?

「いい時間をおすごしになれました?」
「とても。いつ来ても本当にいいレストランだわ」
「パンプルムースもちゃんと用意しましたし、よかったでしょう?」と、ソムリエ叔父がウィンク。
「ええ。電話でお願いした甲斐があったわ。幸せでした。ところで、ろうそくと花はどうして変えちゃったの?」
「どうしてって、、。まあ、時には変化も必要でしょう?お気に召しませんか?」
「前の、あのクラシックなランプと花瓶が、とても好きだったの。このレストランにとてもよく合っていたのに残念。いつからこれ?」
「10日ほど前でしょうか、、、」2002年から変えたんだ。こんなことなら、年末にやっぱり来ておくべきだったかなあ、、、。

マダムにありがとうとさようならして、冷たい空気の支配する大気に身をこわばらせ、トロカデロまで行ってエッフェル塔を眺める。いつ見てもエッフェル塔の姿は変わらない。エッフェル塔を眺めながらも、私の気持ちはろうそくと花に残っている。マダムに聞けばよかったなあ。前のろうそくのランプと花器はどうしちゃったんだろう?しまい込んであるならば、ぜひ譲っていただきたい。

冬だけでなく、一年を通して今年は「ジャマン」に通おう。エッフェル塔を相手に、そう決心するのでした。「ジャマン」は本当にすばらしいレストランだ。


jeu.10 jan.2002



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