心のそこから好き!愛してる!ほんっとに大好き!ギュゥゥゥゥゥ〜ッと抱きしめたい!と、思っているのを、あのシェフは知ってるかしら?知ってるよね、いつも、目がハートになってるはずだもん♪
いや〜、いつもながら、ヤニックは素晴らしいね、ほんっと。「ル・サンク」から一夜明けた昼、ヤニック・アレノの料理を味わい、体中が心底喜んでいるのを感じる。
チュイルリー公園越しの陽光がサンサンと降り注ぐ、華やかで典雅なサロンで、お昼ご飯。昨日の料理がまだ残っていておなか全然空いていないし、今日は夕食もあるから、たっぷり食べられない、、、。いろいろ食べたいものはあるのだけれど、泣く泣く、アントレ1品だけのオーダー。お酒もパス。あーん、悲しいよお。
アミューズを一口食べるなり、その悲しさはますます募る。キチガイ沙汰においしいんだもの。こんなおいしいのに、おなかすいてなくて、アントレ1品しか食べられないなんて、つらすぎる。ヤニックのアミューズ、いつもスープ系だね。今日は、夏らしい、ガスパッチョにマスタードのアイスクリーム。パッサールの店で食べたことある、同じ料理。パッサールのそれも見事、と思ったけれど、記憶が薄れているからかもしれないけど、断然ヤニックのガスパッチョの方が美味だよ。すごい。どうすればこんな味になるのかしら?まろやかで風味が濃く、ジンワリとどこまで奥ゆきがある。五臓六腑に旨みがしっとりとしみわたっていく。スプーン5杯ほどしかないアミューズと、いつもいつも後ろ髪を引かれる別れを繰り返している。感動、の一言。
大好きなクリパンがなくてブーブーだけれど、代わりに、かわいい木箱に入ったパン(なにパンだった?おいしかったのに、忘れちゃった)と巡り会ってゴキゲン。
いつも優しいサーヴィススタッフたちのお顔はまだまだしっかり覚えられないけれど、支配人のアレクサンドルは、そのサーヴィスの質といい物腰といい、初対面の時からかなり好印象を与えてくれている。ヤニックというボー・シェフをしのぎ、スピちゃんにとっては彼が一番!だそうだ。ふむ、ま、Chaqu'un a ses gouts ということだ。
アントレは、「マグロの燻製(燻製、だったと思うよ)、ナスを添えて」。天国だ〜!一口食べて、思わず天井を見上げてしまう。おいしすぎるよ〜、ヤニック〜。あとでヤニックが言うには、マグロのタタキやヅケから発想したらしい1品。トロットロのトロ部分の表面をしっかり焦げ目をつけながら焼き、ちょっと甘く香ばしい香りをつけている。食感、味ともに、文句のつけようがない。添えられた、こちらもトロットロの焼きなすピュレがまた、頭がくらくらするようなおいしさだし、ナスの上に飾られたハーブ類もソツがない。甘くて柔らか、まさに好みとしか言いようのない、完璧に私のツボをつく料理だね。そしてこの、シンプルで余計なものがなにひとつない、静謐なまでに美しい盛り付け。料理はこうあるべきだ。
この美しさは、スピちゃんの「鮭の軽い燻製、ジャガイモ添え ポワローのクリーム」にもつながる。色といい形といい、ほんっと美しい。美しい人がつくる料理は、やっぱり美しく仕上がるんだねえ。「レ・ミューズ」時代からの彼の傑作料理、味見したいのは山々だけれど、また今度食べられるもんね。スピちゃんんとKに堪能してもらおう。
Kが頼んだ、アーティショーとカニのグレックも見事なお味。3月にバンケットで食べさせてもらったときに、感動したっけ。ヤニックが作るアントレ、今まで、最高の感動を味わえなかったものって、一皿もない。すごいことだ。
比べると、プラは、力強すぎるというか、ちょっと疲れてしまうこともあり、できればこの店では、アントレ2皿をいつも頼みたいな、と思うんだ。スピちゃんと私は、アントレ1皿でゴハンを終えるけれど、Kが頼んだ「牛ヒレの骨髄添え」も、ちゃんと味見させてもらう。ヤニックならではの、確実な高度な技術が支える、完成度の高い料理。きっちりおいしいけれど、私はやっぱり、彼のアントレたちにいつもしびれてしまう。
新シェフ・パティシエ、カミーユ君のお菓子は、また今度楽しむとして、プチフールたちと、例のカカオフェーヴの形のショコラに入った極薄キャラメルを平らげ、シェフ!シェフ!と、ヤニックへのラヴ・コール。他のお客様やその他の諸々の人に捕まっていて、なかなかテーブルに来てくれないシェフを、仕方ないから、こちらから捕まえに行く。忙しくて、あんまりお話できなくて残念だったけれど、彼の料理にぞっこん惚れている気持ちだけは、きちんと伝えられた、と思う。心臓がバクバクして、なにしゃべってるかよく分からなくなっちゃうんだけどね、いつも。
ヤニックが「ル・ムーリス」に移る、という話を聞いたのは、1年ちょっと前。移ってから10ヶ月がたったが、その評判はうなぎのぼり。今、もっとも旬なレストランであることに間違いない。今現在のヤニック・アレノの料理は、一度は、ううん、何度でも、味わっておく価値があると思う。
jeu.29 avril 2004