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グルマン・ピュスのレストラン紀行


シェ・ミシェル (Chez Michel)

パリに戻って初めての外食は、ジビエを堪能。野生肉の旨みとたくましさにしびれる〜!

ガール・デュ・ノールの近くにある「シェ・ミシェル」は、前から一度行ってみたいビストロだった。メディアに紹介されることは稀だけれど、耳に入ってくる話では、どうやら極上ビストロの一軒。ようやく願い叶い、足を踏み入れることなどまずない地区へと、ドキドキしながら向かってみる。

サンパで気の置けない雰囲気。男の人向けかな9時を回って到着した小さな店は、人人そしてまた人でい〜っぱい。1つだけ残っていた丸いテーブルに腰を落ちつけ、まずは乾杯!何の気になしにシャンパーニュを頼んでしまったけれど、ピノーやポモーなど土地土地のアペリティフはもちろん、私が大好きな、でもめったにお目にかかることの出来ない、ナチュラルワインの軽い発泡ロゼが置いてあったりして、ああ、こっちにするべきだったかな、と薄切りのソシッッソン(サラミ)を口に放り込みながらちょっと後悔。

ブルターニュ料理を得意とする店なので、ほんとなら旬が始まったホタテやその他の貝類、魚を食べるべきかもしれないけれど、黒板に書き出された本日のオススメは、リエーヴル(野ウサギ)、マルカッサン(仔イノシシ)、ペルドロー(ヤマウズラ)、ビッシュ(雌鹿)ら、ジビエ(野獣)の肉がこれ見よがしに並ぶ。こんなラインナップを見せられたら、ジビエを頼まないわけに行かないじゃないねえ。折りしも今シーズンは、まだジビエ未体験。嬉々として、ジビエに立ち向かう。

セップのフリカッセとフォアグラのポワレ。最高!アントレは、こちらも本日のオススメから「セップのフリカッセ、フォアグラポワレ添え」。セップ、好き。好き好きだい好き。いわゆる日本のマツタケに当たるセップ、今シーズンは、9月の終わりに「ル・サンク」でタルト仕立てになっているのを食べたきり。あれもとびきりおいしかったけれど、今夜のセップも泣かせるなあ。シンプルに軽く煮込んだだけのセップには、じんわりニンニクの香りがしみていて、しっとりしなやかな口当たりも絶妙。テクニック上手だね、シェフ。名を、ティエリ・ブルトンという、実力派。帰り間際に挨拶だけしたけれど、なかなか素敵な顔をした好感度大のシェフだ。

さっくりとポワレしたフォアグラのコクのある柔らかな甘味、それにアクセントを添える塩の振り方もマル。なんてことのない料理だけれど、それだけに一層、シェフの腕の確かさを感じる。

野うさぎコンフィとレンズマメ、フォアグラのテリーヌ。安定感のあるおいしさ味見させてもらった、リエーヴルのコンフィとレンズマメ、フォアグラのテリーヌ仕立ても、赤身の肉を持つウサギの雄々しくたくましい香りがお見事!レンズマメのコクと混ざり合い、無骨な、それでいて気骨のある作品に仕上がってる。

それにしても、パン、おいしいね。料理に負けずにたくましくて。どこのなんだろう?

ヤマウズラ。下にジロールが敷いてあるプラは、大好きなペルドロー。オーダー時に焼き方を聞かれなかったところに、シェフへの信頼感を募らせていたけれど、期待通り、過不足のない完璧な焼き方で、ダイナミックにサーヴィスされるヤマウズラちゃん。血の滴り具合、血がほんのり混じった、いまだ生きているかのように歯に立ち向かってくるしっかりとした噛み応え、そして咀嚼した後に広がる、大地を感じるたくましい滋味と香り。う〜ん、うまいっ!これでなくっちゃ、ジビエは!嬉々としながら細くでも密度の高そうな骨を手に腿にむしゃぶりつく。血が騒ぐね、こういう料理を食べると。付け合せのジロール(ラッパだけ)も風味が濃くて、しっかりとヤマウズラちゃんに寄り添っている。

味見したホタテの焼き方も完璧ならば、ビッシュ(雌鹿)の肉の決めの細かさやソースの力強さも絶品。いやいや、頭が下がります。

クイニ・アマン。うーん、パン・ペルデュはおいしかったのになあしいて言えば、デセールが失敗だったかな。ブルターニュ物を、と選んだ「クイニ・アマン」は、固くてフォークがうまく立たず。どう贔屓目に見ても、イマイチだと思うんだけれど、、、。クイニはやっぱり、パティスリーで買えばいいや。私は、エルメのが好き♪

味見させてもらった、「パン・ペルデュ(フレンチ・トースト)」はおいしかったな。料理に出た物と同じ、カンパーニュ・パンを使っていると思う。カンパ-−ニュでパン・ペルデュを作るの、はじめて見た。添えられたラム漬けバナナの味もすばらしく、とろけるような焼き上がりのパンもなかなかで、これはいい。同じく味見組の「リンゴとカリンのタルトタタン」もまあまあ。タタン自体、あまり好きなおやつではないけれど、カリンのあっさりとした味と独特の歯ごたえが好感持てる。今度来たら、「パン・ペルデュ」かな。ううん、デセールはきっと頼まないや。料理の量は、フランスサイズにしても結構多い気がする。2皿食べたら、かなりおなかいっぱい。あえてデセールに手を出さなくてもいいんじゃないかな。

朴訥で気のおけないつくりの内装は居心地がいいし、サーヴィスもそれなりにサンパ。なによりもシェフの実力が見事!ムニュ・カルト(プリフィックス)で30ユーロはお値打ち。もっともこの夜は、オススメからジビエやセップなど高級食材ばかりを頼んじゃったので、値段はそれなりに上がったけれど。それにしたって、あのジビエの仕立て方は、そんじょそこらのガストロノミーレストランに全く引けをとらないよ。あの味でこの値段なら、超お値打ちでしょう。ジビエの季節が終わらない間に、もう一度行きたいなあ。そしてそのあとは、ブルターニュの海の幸を満喫してみたいな。

数少ない私のお気に入りビストロのリストに、新しく1店追加された夜でした。


Mar.2 dec. 2003



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