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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ミシェル・サラン(Michel SARRAN)

電話をしたのは火曜日の午後。

「あの、木曜日のお昼、予約したいんですけど」
「ああ、ごめんなさいね、木曜日からヴァカンスなんです」
「え?じゃあ、水曜日の夜は、、?」
「夜はもう、いっぱいなんです、、」
「じゃ、水曜日のお昼でお願いします!」
「お待ちしております、マドモワゼル・グルマン」

さて、水曜日のお昼。授業が終わり、そそくさとみんなとバイバイして足を向けたのは、皆さんご存知の「ミッシェル・サラン」。なんやかんや言って、この一月で3回目のサランさん家訪問だ。

相変わらず暑い暑い街をてくてく歩いて、サランさん家の門をくぐる。
「ボンジュール、メドモワゼル!」とニコニコ笑顔のマダム・サランとまずはご挨拶。相変わらずチャーミングなマダムは、今日はケンゾーの可愛らしいチャイナ・ドレスで決めている。
「お元気でした?夜の席を用意できなくてごめんなさいね。さあ、どうぞこちらへ」と、マダムの案内で、お庭のテーブルへ。

緑の椅子、オレンジの飾り皿に真っ白なナップ、木漏れ日を注ぐ樹々に石畳。周りのテーブルには、オリーブをあしらったお料理、、。これだけ見てると、本当に南仏の雰囲気。とてもトゥールーズにいるとは思えない。ああ、碧く輝く海に行きたいなあ、、。
「やあ、いらっしゃい!もう、トゥールーズにいないのかと思ってましたよ!お元気ですか?」と、メートル・ドテルのトゥールーズ訛りに、我に返る。

桃のリキュールをたらしたシャンパーニュとアミューズから始まり、小さなカニのビスク(甲殻類のスープ)、子牛の腿の煮込み、フロマージュの盛り合わせにプチフール(小菓子)とカフェ。お酒はコート・ドゥ・ガスコーニュの白に、コート・デュ・ローヌの赤。パンはもちろん、あの美味しいオリーヴ・パン。

飲んで食べて幸せを満喫した頃、サランさん登場。髪をすっきり切り揃えて、すっかり夏支度のサランさん。明日からのヴァカンスは、アルマニャック地方の田舎にある、母親の経営するオーベルジュに行くらしい。
「ムシュ・ゲラールの所からそんなに遠くないところなんだよ。彼に会えるの、楽しみだな」とサランさん。ひとしきり、ムシュ・ゲラールの偉大さについて語る。この夏のヴァカンスで、秋からの料理をゆっくり考えるのだそうだ。

「トゥールーズを離れちゃっても、また是非来て下さいね」とにっこり笑うサランさんは、マダム共々いつもとってもチャーミング。レストランのデコラシオンは弟が仕切り、ムニュ(コース料理)で出している白ワインは従兄弟が作り、お母さんが一番最初のお料理の先生だったというサランさんのレストランは、本当に田舎の家族経営の宿のような、のんびり和やかな雰囲気に溢れている。3週間前にお父様を亡くしたばかりのサランさんは、悲しげなそぶりも見せず、南の太陽のようなあったかい笑顔で私たちを包んでくれた。

ボン・ヴァカンス!サランさん!秋にまた、サランさんのお料理を味わえるのを楽しみにしてるね。


ven.19 juin 1998



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