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グルマン・ピュスのレストラン紀行


[SIRHA]'99(食の国際見本市)
  1. −23日−会場のイメージ
  2. −24日−クープデュモンド・ドゥ・ラ・パティスリー(一日目)
  3. −25日−クープデュモンド・ドゥ・ラ・パティスリー(二日目)
  4. −26日−ボキューズ・ドール(一日目)
  5. −27日−ボキューズ・ドール(二日目)

−23日−会場のイメージ

リヨン郊外で開かれる[SIRHA](食に関するあらゆる業種の国際見本市)に行くためにTGVに乗り込む。

寒い。
リヨンの駅のホームに降り立った時に全身で感じたのは、山の寒さだった。ここ数日のパリの暖かさにすっかり油断していた。震えながらエキスポ会場行きのバスにゆられ、郊外に作られた大きな会場に到着。

regumes気が遠くなりそうな広さの会場には1000を超える展示スタンド。食品を取り扱う業者は勿論、ショーケース、トラックやレジスター、ヒーター、家具に制服やカーテン、カルトやパンフレットにカトラリー、オーヴンにパン焼き釜、果てはプールまで。食の周辺に位置するありとあらゆる業者が集まる、一大食業界のサロンだ。

espagna初日の今日は、とりあえずざっくりと会場を見学。基本的にプロを対象としたこのサロンは、アマチュアなんて入る余地がない、って感じ。どこのスタンドでもシャンパーニュが振る舞われ、熱心なネゴシアシオン(商談)valrona1が繰り広げられている。コルシカのビールやヴァローナのショコラやショコラをソースに使った料理を突ついたりしながら、2年ぶりに開かれたサロンの熱気に身を任す。

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−24日−クープデュモンド・ドゥ・ラ・パティスリー(一日目)

サロンに平行して、様々なコンクールが開かれている。魚、豚肉加工品、ミネラルウォーターを使ったカクテル、ビールを使ったカクテル、painパンなど、多種多様なコンクールの中で何といっても目玉なのは、今日、明日と2日に渡って開かれる「クープ・デシュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」(お菓子のワールド・カップ)と後半2日に開催される、「ボキューズ・ドール」(直訳で、金のボキューズ)の2つの国際コンクールだ。今回のリヨン来訪の目的も、この2つのコンクール観戦。そんな訳で、今日は「クープ・デュ・モンド〜」の初日。

お菓子のワールドカップ、という名前の通り、3人ずづのチームとなったパティシエ(お菓子職人)さんたちが世界18カ国から参加しての大会。テーマは、ショコラを使ったアントルメ、グラス(アイスクリーム)のケーキ、皿盛りデセール、それに飴細工。

11時に入った会場では、朝の6時前から仕込みを始めていたというパティシエさんたちが、各国のブースの中で忙しげに働き、司会者がちょうど審査員の紹介をしているところだった。

cmこのコンクールの司会者は、フランス2(国営テレビ局)の料理ジャーナリストのフェルニオさん。とっても楽しくて素晴らしい司会をしている。参加国からそれぞれ1人づつ来ている審査員(もちろん、お菓子職人)と、ジャーナリスト側の審査員(つまり食べて側)の紹介。おお、ピエール・エルメだ。久しぶりだなあ、彼を見るの。もう日本に永住しちゃったのかともっていたよ。フォション、ラデュレとパリの輝かしい二つのお菓子屋さんで一世を風靡して、日本にブティックを出したエルメさん。相変わらずズーンと大きくって、帽子をかぶってない。各国の審査員を良く見ると、みんないかにもお菓子屋さん、って感じで楽しい。お気に入りはデンマークのおじいちゃん先生。偉いマイスター、って感じではあるのだけれど、にこにこ笑顔がチャーミングだ。この審査員の紹介の後の後に、いよいよお菓子が運ばれてくる。

華々しい音楽に乗って、まずはショコラのアントルメ。艶やかにグラサージュされたアントルメ、粉を降ってマットな落ち着きを見せるアントルメ、丸のもの、三角のもの、どれもこれもうっとりするほど美しい。ドイツのグラサージュのなんと艶やかで滑らかなこと。上に飾られた紫の飴細工の色の美しいこと。ベルギーのアントルメの、飴のゴールドとミルクのショコラの薄い色がなんてきれいに組み合わされていること、、。溜息のつきっぱなしで、ショコラのアントルメのプレゼンタシオンが進んで行く。

続いて、グラス。こちらは、限られた時間の中で作成するのが結構難しいのか、国によって、出来がバラバラ。ショコラに比べると、見た目の美しさでは一段劣る。

そして次は、大がかりなオブジェ。氷細工、飴細工、そしてショコラをベースにした3つの大きなオブジェを完成させる。それぞれ、幅は30センチ前後、高さは1メートル、といったところだろうか。これは氷が圧巻だ。朝から、大きな氷に電動のこぎりやノミをあてて作り上げた氷細工の透明な輝きに、華やかな色をつけた飴とショコラのオブジェが寄り添う。言ってみればお菓子の彫刻だ。お菓子作りは芸術だな、としみじみ感動。

最後はアシエット(皿盛りデセール)。先のショコラやグラスは時間のせいか、グラサージュがあまかったり、ショコラが固まっていなかったりしたものもあったが、アシエットのデコラシオンはどれも完璧。その国特有の果物や香辛料を使い、自国をアピール。国で取れる甘いワインと一緒にサーヴィスしたりしている国もちらほら。

お菓子は崩すものだ。究極まで追求されて完成された完璧な美しさを崩して初めて、お菓子を味わうことが可能になる。視覚の美しさも大切なのはもちろんだ。でもしかし、料理も同じ事なのだが、この美しさを崩さないと味覚でその魅力を確認できないものなのだ。そして最終的にこの味覚が、お菓子にとっても重要なファクターとなる。持てる限りの技術を凝縮して作り上げられた作品がつぎつぎとナイフを突き付けられてゆくのを見ると、なんとも言えない感情に襲われる。そう、絵画や本のように、目に見える一番美しい形でいつまでも残るものではないのだから、大切に大切に、つかの間の美しさをその瞬間に愛でてあげなくてはいけないものなのだ。

これで全種目終了。朝の6時から仕込みが始まり、終了したのは6時過ぎ。各チームともきれいにスタンドの片づけをして、最後にシェードをおろして、今日の競技のお終い。

シャンパーニュを飲みながら、目の前で繰り広げられてたコンクールに思いを馳せていると、近くで何やら日本酒らしきものが、セッティングされている。なんだなんだ?と見に行くと、SIRHAの日本支部が主催する、ソワレ・ドゥ・SAKE(お酒の夕べ)がこれからここで行われる、とのこと。「李白」や「賀茂泉」、「梅錦」など20種ほどの銘柄が用意され、鏡割り用に樽まで運ばれている。期せずしてSAKEを堪能。全く知識のないSAKEについてこれは何だあれはどうだ、と聞きに来るフランス人をかわして、久しぶりに美味しい日本酒を堪能。いや、ワインもいいけど、日本酒もいいねえ。シャンパーニュと日本酒ののみ過ぎで、すっかり気持ち良くなって、さあ帰らなくちゃ、と思った頃には、終バスの時間を過ぎていた。

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