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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ル・ディ ヴァン (Le Dix Vins)

わーいわーい。今夜は久しぶりにMきちゃんとのレストランだー!なんとまあ、3週間ぶり。信じられないねえ、こんなに長い間会わずにいられたなんて。良く耐えたわ。久しぶりのランデブー、行きたい2件のレストランはそれぞれ、改装中とお目当てのデセールがない、との事なのでほっておいて、今夜は新しいレストランを開拓。

モンパルナスの下町、パスツールに久しぶりに足を向ける。日の暮れかける8時過ぎ、静かな小道にひっそりと佇む「ル・ディ−ヴァン」。ワイン・バーとして、界隈で知られる密かな名店だ。小さなカフェを改造して作ったような、こじんまりとした店内は、ワインにまつわる様々なオブジェで飾られ、小さなテーブルにはロウソクの光が柔らかくチラチラしている。いい雰囲気じゃなあい?それにしても、お客様、いないけど。

ぼんやりしてるんだか大人しいんだかよく分からない感じの、主人が出て来てテーブルにつかせてくれる。

黒板に書かれた本日のカルトはアントレ・プラ・デセール、それぞれ4つから選べて、100フラン!いい値段だよね。サクッとお料理を選んで、お酒のリスト。carteさすがはワイン・バー。とても可愛らしく凝ったカルトを用意してある。

まずはアペリティフ、とシャンパーニュのページを開くと、これがまた可愛い可愛い。4種類あるグラスのシャンパーニュのお値段は、50フランからなんと30フラン!こんな安いシャンパーニュ、存在するんだ、と、二人してびっくり。

「とりあえず、シャンパーニュ。どれがいいかしら?どれも知らなくて、よく分からないの」と、店のオヤジに聞くと、
「どれってねえ、、、、う〜ん、どれだろう、、、、???まあ、これなんかいいんじゃない」と、自信なげにつぶやくオヤジ。おいおいオヤジ、あなたがこのレストランのワイン、全部選んでるんでしょ(笑)?何ともいい雰囲気の、お茶目なオヤジだ。

シャンパーニュ飲みながら、素敵なカルトを吟味。ワオ!って驚くすごいワインはないけれど、お料理の安さにふさわしく、可愛いお値段のお酒がいっぱい。みんなとてもチャーミングそう。せっかくだから、グラスでどんどん行きましょうか。

まずはジュランソン・セック。ピレネーに近くで作られるこのお酒、甘いのも辛いのも私は大好き。樽香ではなく、土臭い木の匂いに包まれて、アントレの「イカのプロヴァンス風」を迎える。

デイジー(デジカメ)を取り出し、さあ撮ろう、と構えた瞬間、オヤジがデイジーに興味津々。近寄って来て、あれこれとデイジーについて質問し、ついには私たちの写真を撮ってあげるよ、と、デイジーを連れ去った。奥さんだろうか、奥から出て来て、一緒になって、デイジーをいじり出す。あーだこーだと質問攻めにあい、にっこり笑顔をデイジーに向けたりしているうちに、アントレが冷めちゃう。あーん、食べさせてよお、、、。

「食べるの邪魔しちゃ悪いから、行くね。ボナペティ!」と、ようやく二人が去り、アントレと改めて対面。何てことない、イカのトマトソース煮なのだけれど、イカは甘く柔らかく、ソースもきちんと作ってある。美味しいよ、これ。火の通し方が、抜群じゃない。ジュランソンの爽やかさとイカの南な雰囲気が、終わりゆく夏を忍んでいるかのようだ。Mきちゃんの「椎茸のポワレ、落し卵添え」は、秋味。薫り高い椎茸があっさりとソテーされていて、これまた、いい感じ。

lapin手元に置きっぱなしにしてあったカルトを開いて、プラの「ラパン(ウサギ)のロティ、ジロール添え」に合わせるお酒を考える。一杯目はボ・ドゥ・プロヴァンス、続いてコート・デュ・ローヌ、と、ローヌ渓谷沿いの濃く鮮やかなお酒2種でラパンを堪能。ラパンの肉をミンチにしたものにハーブをたっぷり入れて、それを腿肉で巻いてジロールと一緒にロティしたもの。ラパン独特の匂いとキノコの匂いをたっぷりかいで、気分はすっかり秋。赤いお酒が美味しいな。ガルニのジャガイモのピュレも家庭的な味わいでなかなか美味しいの。満足満足。

dessertペロリン、とラパンを終えて、デセールの時間。この頃には、小さな店内は満員御礼。ご近所の常連みたいな人たちばっかりで、オトボケオヤジと奥様と、和気あいあいとおしゃべりに花を咲かせ、グラスを傾けている。アットホームでとても居心地いい雰囲気。いいお店だね。

クレーム・ブリュレにジュランソン・ドゥーを合わせて、デセールのひととき。ジュランソン・ドゥーの、フレッシュで爽やかな甘みが、私は結構気に入っている。ソーテルヌの濃厚で匂い立つ香りもいいし、ミュスカのトロリとしたハチミツ臭い香りもいいけれど、デセールにはこのくらいあっさりした、甘すぎない甘口のお酒が好ましい。

美味しいご飯に美味しいお酒。久しぶりのMきちゃんとの再会を祝うにふさわしい、楽しく美味しい夕食だ。

満場一致で(っていっても、2名だけだけど、、)贔屓のお店に決定。またすぐ、来たいね。今年のボジョレー・ヌヴォーは、このお店で飲んでもいいな。新しい素敵なお店の発見に気をよくして、レストランを後にする。

明日からMきちゃんはニューヨーク。帰って来た日には、ドッカムスにシャンパーニュを飲みに行く約束して、バイバイ。早く帰って来てね、Mきちゃん。ああ、美味しかった。


mer. 8 sep. 1999



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