やっぱりこのレストランはスゴイかもしれない。どこのことかと言うと、「ル・ブリストル」。4月に来たときにも、ちょっとそう思ったのだけれど、今月初め、気持ちのよいテラスディナーを楽しみながら今度は確信した。ホワイトにゴールドをあしらった新しい食器でいただいた料理は、カニとアヴォカドの料理に子豚のグリル、ワタアメつきのイチゴ尽くしのデセール。最初から最後まで、完璧だった。エリック・フレション、ジルちゃん、それに支配人のモントゥイエさんまでいなかったというのに。いよいよ脂が乗り切って、最高のときを迎えつつあるな、というのをひしひしと感じた。
今月は嬉しい。「ル・ブリストル」に2回も来られて♪3分外を歩いたら脱水症状をおこしそうなくらいの酷暑。この数日続いている、恐ろしく暑いお天気のなか「ル・ブリストル」へ向かう。ここのテラスに嫌われている私が、2回も連続してテラスご飯を楽しめるのは、大変ありがたいお話なのだけれど、この暑さはいくらなんでもちょっと異常。それでもやっぱりテラスがいいんだよね。「暑すぎない?中の方が快適かもよ」と、モントゥイエさんはじめみんなに言われつつも、「いいの、テラスが」と、テラス依存症の私はかたくなに芝生脇にしつらえられたテーブルに固執する。女5人のかしましランチ。誰の顔にも日が当たらないようパラソルを大騒ぎしながら微調節してもらい、キンキンに冷えたピンク・シャンパンを注いでもらって、テラスに乾杯!
テーブルに置かれたマーガレットの花をいじりながらカルトを開く。今日は、ランチコースの初体験なんだ。アントレ、プラ、フロマージュかデセールで70ユーロ弱。それぞれ2〜3種類から選べる。お酒を考慮しても、夜の値段の半分の値段ですんじゃう。満足度も半分になるかしら?結論から言うと、そんなドキドキは杞憂に終わった。満足度は夜と大して変わらない。
シャンパーニュに添えられる、夏アミューズたち(フロマージュスティックとトマト&バジルのタルト)を食べ終え、パンを選び(夏らしいトマト&ハーブパンと5種類シリアルパン)、料理を決めたところで、アミューズが運ばれる。「クルジェットの冷たいクリーム、赤ピーマンとバジル、オリーヴオイルで香りをつけて」。涼しげなグラスに入った夏向き料理。清涼感あふれながらもきっちりと味の濃いクリームが、印象的に喉を伝っていく。おーいしーねー!もうなんだか、この時点で感動してしまう。
アントレは、「鶏と鴨フォアグラのプレス仕立て、夏トリュフとフレッシュアーモンド、ジロール茸添え」。見た目に美しく、味わいもすっきり美しい一皿。品のよい鶏の旨み、丁寧に作られた質の高いフォアグラのまろやかさ、それにガルニ(つけあわせ)の夏らしい香りが、エレガントにたちのぼる。添えられたトーストの香ばしさがより一層興をそそる。
もう1つのアントレ、「片面だけ焼いたマグロの赤身、ウイキョウ添え、ショウガ風味」も、単にアジアテイストなのかな、と思いきや、味見させてもらったそれは、食感といい火の通し方といい、ウイキョウとマグロの相性といい、これまた目の覚める料理。いやいや見事です。
続いては、「ウサギのいろいろ仕立て」。背肉のハーブロースト、腿のトマト巻き、ソーセージ、腎臓、ヒレっていうかササミ的な部分の串焼き、と、ウサギの様々な部位をヴァラエティ豊かな料理法でいただく。フレションがつくるウサギ、食べるの初めてだなあ、多分。見たことなかったもん、ウサギ(ラパン)の料理なんて。ソーセージがおいしいね。串焼きグリルも。あとはまあまあかな。ガルニのチビジャガイモたちがめっちゃ美味!ジャガイモ好きの私、はっきり言って、このガルニのためにこの料理を選んだんだもんね。ウサギはまあまあだったのだけれど、味見させてもらった「ルジェ(姫鯛)の食パン焼き」が絶品だ。ルジェ自体の質、独特のふわりと空気を含んだ身の質感を壊さない火入れが見事。そして、ルジェに貼り付けたごく薄の食パンのカリカリとした食感と甘味が、ルジェになんと見事に合うこと!目からウロコ。かなりいい、ちょっとびっくりするくらいに。感動する料理に出合ったね。ウサギがかすむ。
すごいなあ、ランチでこのレベルを出してくるなんて、さすがに力が入ってるなあ、とため息つきながら、この暑い空気を忘れさせてくれる、サン・ヴェランのかわいらしいお酒をのみつつ、デセールの登場を待つ。
ほんとは、チョコレートサブレかアプリコットローストから選ぶようになっているランチコース。今日はでも、ジルちゃんのデセールを食べる、というのがテーマのお食事会。モントゥイエさんにおねが〜い!とわがままを言って、ア・ラ・カルトから好きなデセールを選ばせてもらう。せっかくだからいろいろ見よう、と、果物関係4種類のデセールを注文。ジルちゃんならではの、プレゼンテーションの美しさ、味の構成の素晴らしさ、おちゃめきわまりない様々な細工にいちいち感嘆の声を上げながら、デセール、グラスに入ったミニミニマカロン、各種プチフール、そしてショコラやキャラメルなどのコンフィズリーまで、しっかりいただいて堪能する。
デセールのフレジエ(イチゴのお菓子)は、イチゴの甘味、クリームのなめらかさ、マジパン(じゃないかも)のコクが一体となってなんとも奥深い品ある作品。いつもながらに感涙もののイチゴのソルベがおいしいよ〜。ショットグラスに入れられたミニミニマカロンは、ブティックでは絶対に実現できない、繊細ではかなげな味。グラスを取り外したとたんにコロコロとあちこちに転がっていくマカロンを見ているのも楽しい。ワタアメつきのイチゴ尽くしデセールも、遊び心満載で、ワクワクドキドキ楽しいったらない。ジルちゃん、バンザイ!
緑濃い芝生、咲き誇る色鮮やかな花、おいしいお料理、お菓子にお酒。極上のサーヴィスに、シックでエレガントなテーブルアート。な〜んにもいうことはありません。パラダイスです、ここは。ジルちゃんもモントゥイエさんもエリック・フレションもみんな天使だね。レストランとバレエの話で大いに盛り上がりながら、幸せいっぱいの夏の午後を過ごすのでした。
lun.15 juillet 2003