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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ル・ブリストル (Le Bristol)

昼下がりに、ボー・シェフ(ヤニック)のところで視覚と味覚をうっとりさせ、夕方は、お気に入りのパティスリーで新作のショコラを齧らせてもらってさらに味覚を喜ばせ、夜は、パレ・ガルニエでアニエスを愛でて(スピちゃんはアニエスとロランが好き。絶対性の気品があるダンサーが好きらしい)視覚を興奮させる。

視覚も味覚も、もういっぱいいっぱい。今日はもう全てを満喫したよ〜、もう何もいらない〜、という感じなのだけれど、なぜかさらに夜食を食べに行っちゃうんだよね。それも、「ル・ブリストル」なんかに。

一日に2軒の高級レストラン、というのは、体力も気力ももたないので本当はイヤなんだけれど、なかなかフランスに来る機会のないグルメ&グルマンのKが「どーしても行く!」と言い張る。そりゃそうだよね、行きたいよねえ、気持ちは分かる。今が最高に素晴らしいレストランだもんね。Kとの長年の友情にほだされ、胃をなだめすかしながら、ジルちゃん、シェフ・フレッション、モントゥイエさんのいる「ル・ブリストル」に足を運ぶ。

「ル・ブリストル」づいている3月、4月。なんやかんやと来る機会が豊富で、嬉しい限り。やっぱり美味しいんだよねー、ジルちゃんのお菓子はもちろんのこと、シェフ・フレッションの料理もさ。料理とお菓子のレベルは、どう考えても最高ランクだと思う。素晴らしく研ぎ澄まされた、才気あふれる、それでいて基礎がしっかりあって、テクニック抜群の作品が次から次へと出てくる。

シャンパーニュアミューズ。楽しくて、お味も抜群最近はやりの石板使いが美しいアミューズ群を頬張りながら、シャンパーニュでカンパイ!パリ国立オペラ座とフレンチガストロミーに栄光あれ!紫ジャガイモにミモレットをあわせたチップスをポリポリ、香辛料で味付けしたお米のオセンベをバリバリ、ラディッシュの入ったコルネをカリカリ、味の濃いトマトが素敵なミニタルトをサクサク、アツアツの魚のコロッケをハフハフ。楽しいねえ、アミューズって。

春色満載のアントレ。卵とアスパラでつくった、この世のものと思えない美味しさのムースアントレ?パス。無理です。まだ全然おなかすいてないもん。先週来たときに、アミューズで出してもらった、緑アスペルジュとタマゴを合わせた素晴らしい料理をKに取らせて、味見だけさせてもらう。春の訪れを歓喜しているような、チャーミングなプレゼンも素敵なら、味はさらに素晴らしい。まったりとした生暖かな卵とアスペルジュのムースは、この世のものと思えない妙なる味。食感、味、香り、全てが一体となって、食べ手を恍惚状態にしてくれる。カリリと焼かれた田舎パンの細切りにムースを浸して口に運んではうっとり。いや〜、天国ですね!

アスペルジュこの間来たときに、お願いして出してもらった、旬の白アスペルジュが絶品だったのが忘れられず、今夜のゴハンも、またまた、お願い〜つくって〜、して、白アスペルジュをゆでてもらう。バターたっぷりのムースソースが苦手なので、フレッシュハーブをたっぷり使ったオイルヴィネガーを添えてもらう。

ごくシンプルな、アスペルジュの美味しさを全身で感じられる、それはそれは見事な一品。シェフ・フレションの高度な技術が見られないのは確かだけれど、こういう、ひたすらにシンプルな料理の中にも、彼の才能はきっちり見て取れる。食材を選ぶ目、完璧!としか言いようのない、湯で加減。この春は白アスペルジュを堪能したけれど、ここで食べた2回のアスペルジュほど感動的なものはなかったね。

仔豚スピちゃんには、去年の夏からの私のお気に入り、「仔豚のグリル、マスタードの葉っぱ添え」を取らせて、こちらも、おすそ分けをいただく。

豚って本当にいいよねえ。香り高くとろける脂とサクリと繊維のきれいな身の部分とのハーモニーがたまらない。ピリリさ加減がこれまた絶妙なマスタードソースもお見事。歯ごたえも香りも素晴らしい緑アスペルジュもたくさんついてくるし、運ばれてくるときの炭火の香りがあたりを包み込むのもいい演出だし、いたってシンプルながら、これまた、シェフ・フレッションの傑作。彼の料理、特に肉料理系は、ほとんど全て食べていると思うけれど、私は多分、これが一番のお気に入り。次に鴨ですかね、やっぱり。あの鴨も確かに傑作だ。

デセール前のおやつ今夜のおやつは、うすーいリンゴのタルトにヴァニラアイスクリームを添えたもの。30センチ近くはありそうな巨大リンゴタルト巨大タルトは、まあまあかな。ヴァニラアイスクリームはブラヴォ!当然お代わりをもらう。どうもねえ、ジルちゃん、こういうシンプル菓子が、クリエイションものにくらべると感動がイマイチ。素朴菓子、本人は大好きのはずなんだけれど、作品は、サロンドテで食べるエクレールやケークなどにしても、んー、美味しいけれど、これならOOOとかXXXが作る方がいいかなあ、と感じてしまうんだよね。ま、人それぞれ、得意分野がありますからね。

イチゴ尽くしデセール他2人には、絶対に間違いないから!と、イチゴづくしの一皿と、感涙もののフォレ・ノワールを取らせて、2人をうならせてみる。でしょ?おいしいでしょ?感動的でしょ?すきっ歯だけど、愛しちゃうでしょ、ジルちゃんを!?

アヴァンデセールやプチフールも、おなかの悲鳴を無視してパクパク。ふう、おなかい〜っぱい!いやでも、ほんっとに美味しかったねー。体調よければ、もっともっと食べたかったのに。ま、こういうときもあるよ。おなかすかせてまた近日中に来るから待っててね。決めたんだもんね、この春は、「ル・ブリストル」を満喫するって。ア・ビアント〜!


jeu.29 avril 2004



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