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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ル・ブリストル (Le Bristol)

びっくりすることに、実に半年ぶりの「ル・ブリストル」。不実だったねえ、、、。ブリス

トルの中庭。夏のレストランは、これ以上の場所はない!1月1日のディナーは、体調絶不調というのもあって、正直なところ、心から料理やおやつを楽しむ余裕がなかったけれど、今夜は大丈夫!体調万全おなかもきっちり空いている。幸いお天気にも恵まれ、ブリストル雨女で、素敵なテラスになかなか座れない私だけれど、今夜は運がいい。緑まぶしい芝生、咲き乱れるピンクや赤の花、白い噴水からは水のしとね。すばらしい、夏のブリストルはこうでなくては!上機嫌のうちに、久しぶりの「ル・ブリストル」ディナーが始まる。

ムニュ・デギュスタシオンを初体験。どこの店でもア・ラ・カルトで取ることがほとんどで、ムニュ・デギュスタシオンなんて、まず頼まないのだけれど、確かに、並ぶ料理はどれもこれも魅力的だし、これならいいかも。久しぶりのエリックの料理をじっくり楽しめるでしょう。

アミューズたち。色のバランスがいいよねシャンパーニュに合わせるアミューズは、私が知らない形の黒石版に乗ってやってくる。ラディッシュのコルネ、サーモンとココナッツ、マシュマロ、フォアグラ(だったかな)のムースをはさんだパリパリ。あー、知らないものがたくさんだー。来てなかった期間の長さを実感する。

卵のムースリーヌ。涙が出るほどおいしい。1個で十分だけど卵のムースリーヌは、ここしばらくのエリックの会心作。季節によって、アスパラガスが入ったりチーズが入ったりする卵たち、濃厚な料理だけれど、味は抜群。ア・ラ・カルトて頼むと3つも出てきて、思わずコレステロールという言葉が脳裏をよぎるけれど、こうやって1つだけだと、嬉しく堪能できる。

まろやかな卵のムースの今夜の味は、、、、。なんだった?チョリソー?コンテチーズ?ごめんなさい、忘れました。いずれにしても素敵に美味。添えたカリカリトーストをスプーン代わりにして、ぱくりぱくリ、んー、幸せ〜。生きててよかった〜。

あわせるお酒は、ジュラ地方の酸が強いシェリー系のワイン。卵にあわせるワインって本当に困るけれど、確かにシェリーとの相性は納得だ。

繊細な味のカニのキャベツ包み続いて、カニのキャベツ包みに甲殻類のジュ。甘いカニの身にさわやかな柑橘系の香りが重なり、風味のよいキャベツが全体を包む。甲殻類で取ったにしてはインパクトが強すぎないジュの香りが抜群。エリックの料理にしてはいたって軽やかで夏ご飯にぴったり。いいなあ、こういう肩の力が抜けた料理を作ってくれるようになったんだー。エリックの料理、どうしても力強いものが多いから、料理選択にいつも慎重にならざるを得なかったもんね。ブラヴォ!

見えないけど、オセンベみたいなのの下にスズキが隠れてる続いて、エリックの看板料理の一つ、スズキに薄いパン粉ビスケットみたいのを添えたもの。ねっとりとした甘みを持つスズキの質も抜群なら、その魅力を最大限引き出した火入れもまた完璧。カリリとした衣代わりのビスケットの香ばしさもいいし、ソースもお見事。傑作といわれる理由がよく分かる一品だ。

口中が感動に包まれたリ・ドゥ・ヴォー。すーばらしい!そして、リ・ドゥ・ヴォー。レモンコンフィがアクセントの軽く甘みをつけた肉汁ベースのソースに絡まった、ふくよかでなんともいえない繊細な食感のリ・ドゥ・ヴォーは、天国の味としか言いようがない。舌がとろける、、、、。

以上で料理終了。量も適当だし運ばれるテンポもよいし、味のストーリー性もよいしで、なかなか優秀なムニュ・デギュスタシオン。エリックの実力を痛感。これだけ食べても、おなかはぜんぜん問題なし。来たるべくフロマージュとおやつに思いをはせて、喜びに打ち震えている気すらする。もっとも、感極まって喜んでいるのは、料理と一緒に楽しんだお酒のせいかもしれない。シャトーヌフの白、ドメーヌの名前は相変わらず覚えてない。シャトーヌフでもベスト3にはいるような、超飛び切りのドメーヌなんだけどね。このシャトーヌフが、ため息もののおいしさ。控えめな酸を抱きながらも口の中でトロリと溶ける、まるでこれは甘露。ローヌっ子の私の魂が、うずく。これだから、ローヌのお酒はやめられない。

なけなしの雫でフロマージュを終え、ジルちゃんのおやつ。まずは、アヴァン・デセールの品々。いつものマカロンたちと、こちらは新作、白桃のスープ仕立てにイチゴのソルベ。夏らしい甘みとさわやかさがあって、とっても素敵。桃のかぐわしい香りもよいし、いまだかつてこれ以上おいしいイチゴソルベを食べたことがない、と思っている、ソルベも相変わらずのお味だし。ジルちゃん、好き♪モクモクとドライアイスの煙に包まれて運ばれるパフォーマンスも悪くない。

イチゴイチゴイチゴの一皿前座を平らげた後は、まず、イチゴづくしのデセール。綿飴、ソルベとスープとジュレ、果肉とクリームの3種。もちろんおいしいけど、すでにおなじみの味だ。あー、綿飴にフレーズタガタが潜んでいるのは新しいか。フランス人が溺愛する、この合成イチゴみたいな味のするマシュマロ系駄菓子が、私は苦手だ。

二つ目のおやつは、ショコラのタルトとピーナッツのアイスクリーム。ちょっととけかかった状態で運ばれてきたのが残念だったけれど、このアイスクリームが、ちょっとやそっとのおいしさじゃあない。ジルちゃんて、本当に氷菓が得意だね。ショコラタルトももちろんすばらしくおいしいけれど、こういう、サロン・ド・テでも食べられるタイプのおやつをレストランで出すのは、やっぱり残念だと思う。まあ、ア・ラ・カルトで選んでいるわけじゃあないので、仕方ないのかもしれないけれど、レストランで出すデセールは、アシエット・デセールならではの醍醐味を感じさせてほしい。しかも、作り手はそんじょそこらのパティシエじゃない、天下のジル・マルシャルなのだから。

気がつくと、日がようやく暮れている。夏至を翌日に控え、一年で一番日が長い季節のパリは、夜11時を過ぎても空に青が残る。食後酒代わりのシャンパーニュで口の中をさっぱりさせ、夜の淡い光に浮かぶ、太陽が照り付けていた数時間前とは雰囲気を変えたテラスをもう一度愛でて、席を立つ。お土産にショコラやキャラメル、パート・ドゥ・フリュイを山ほどもらって。

とても素敵なディナーだった。最初から最後まで、料理もおやつもお酒も、雰囲気もサービスも会話も。レストランにある要素がすべて、とても高いレベルで決まった、とても稀有なひと時を過ごせた。まさに僥倖。思い出深い素敵な夜を、どうもありがとうございました、Nさん。


lun. 20 juin 2005



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