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グルマン・ピュスのレストラン紀行


「カブロ・ドール」(Cabro d'Or)

プロヴァンス旅行最終夜は、観光名所レ・ボー・ドゥ・プロヴァンスにある「カブロ・ドール」に宿泊。プロヴァンス地方の老舗名店「ウストゥー・ボーマニエール」のセカンドホテルレストランにあたる。その昔パリに住んでいた頃にた〜っぷりお世話になった料理人、エノキちゃんが修業していた店が「ボーマニエール」だった。(元気なのかなあ、エノキちゃん、、、。)彼から話だけはよく聞いていたこのホテルレストランに泊まりたいのは山々だけれど、これがまた、たっかいんだよね。5月にこの土地を訪ねたとき、レ・ボーのワインコンクールの会場になった「カブロ・ドール」でランチだけいただいた印象がマルだったのもあって、「ボーマニエール」をあきらめて、「カブロ・ドール」に予約を入れる。

レ・ボー、好き。とっても好き。初めてこの土地に立ったのは96年の夏だった。それからもう4度、ここに遊びに来ているけれど、何度来ても、真っ青な空に濃い緑、そして太陽の光を受けて輝かんばかりの岩山という、雄々しい自然に心奪われる。なによりも、この場所に流れている風を、とても愛してる。

レストランの風景レ・ボーの岩山をすり抜けるように車を走らせ、「カブロ・ドール」に到着。こぢんまりと、でも居心地のよいプロヴァンススタイルの部屋に落ち着き、広いお庭を散歩したり、プールサイドで寝とぼけたり。カブロとは、確か、土地の言葉でヤギを意味したと思う。庭の外れにはヤギがたくさん飼われていて、金網越しに「タベモノオクレ!」とヤギたちがすがってくる。なんだかいいよね、この、のんきで間の抜けた雰囲気が。

品のよさを残しながらもカジュアルにまとめたレストラン。風が強くて残念ながらテラスは今夜もお預け。迫り来る岩山を眺めながらの食事を楽しみにしてたのにね。珍しく、ムニュ(コース)など取って、「カブロ・ドール」の実力拝見。

絶品!メロンのガスパッチョアミューズの「メロンのガスパッチョ仕立て」が絶品だ。後からシェフに話を聞くと、オーヴンで一度焼いたメロンをつぶして作ったのだと。生ハムの香り高くねっとりした感触と、すがすがしいバジルオイルの香りとも相性抜群。ハッとするおいしさのアミューズだ。

シロインゲンのカプチーノ。トリュフ&パンチェッタのトーストを添えて。好みだ〜一皿目は、「白インゲンのスープ、トリュフトースト添え」。かわいいね、プレゼン。これもまた、アミューズに負けるとも劣らないできばえ。豆独特のザラリとしたテクスチャーを残しながら、極々軽い仕上がり。ここでもまた、火を通したパンチェッタがいいアクセント。トリュフトーストを合いの手に、どんどん食が進む。

続いて、「エビのポワレ、花つきクルジェット添え」。普通かな。エビの火通しがつまらない。ほら、なんてたって、私たちにとって、エビのおいしさは、シリノさんの作品が基本だから。あれに相当するおいしさじゃないと、認められないんだよね。もっとも、あれに相当するエビ料理なんて、まずないだろうけどさ。トマトと黒オリーヴ、オリーヴオイルで味をまとめた、いかにもこの土地らしい一品。悪くないけど、先の2品に比べるとかなり落ちる。

素晴らしい出来のスズキお魚は、本日入荷したてで抜群の鮮度!とメートル(給仕長)が太鼓判を押した「ルー(スズキ)のポワレ」。確かに、メートルが胸を張っただけのことはある、それはそれは見事な質のルーを、これまた完璧な火入れで料理した傑作。いってみればただの焼き魚。なんだけど、このシンプルな料理が、とことんルーのおいしさを感じさせてくれる。カリリと焼けた皮の下には、ジューシーでつややかな白身。上手だなあ、火の通し方。おいしい、ただひたすらに。付け合せのミニアーティチョークや小イカとの相性もよく、とっても好きなタイプの料理。

コヒツジさん。これもなかなかお肉は、「セル・ダニョー(仔羊の鞍下肉)」。昨日もこれだったんだよね。もっとも昨日は、不本意ながら、だったけど。5月にここで食べた仔羊のコット(背肉)のおいしさを思い出し、きっとセルも悪くないよ、と信じて頼んだ料理は、思ったとおり、悪くない。オレンジやパンプルムースなど柑橘類の香りをふんだんにあしらって作ったセルは、セル独特の香りを感じはするけれど、許容範囲。肉の焼き加減はちょうどよく、おりこうさんな出来。ただやっぱり、今月下旬にまた来るときには、やっぱりカレが食べたいかな♪

土地のチーズさまたちフロマージュはもちろん、この土地が誇る様々なシェーヴル(ヤギ)。これまたこの土地の名品であるオリーヴオイルとともにうっとり味ってから、デセール時間。「イチヂクタルト、パンデピスのアイスクリーム添え」をいただく。

イチヂクタルト。素直で美味これもまた美味なんだ。ねっとり味の濃いイチヂクは、プールの横に生えている木から収穫してきたのかしら?小さいながらも美味な実がたくさんなってたね。素朴なサブレも私好み。ひんやりスパイシーなアイスクリームも素直でおいしい。

ミントのお茶をいただいてくつろぎ時間。プチフールをつまみながら、シェフとお話したり、従業員や、次第に帰っていくお客様を眺めたりして、静かで満ち足りた夜を楽しむ。

ホテルのレストランって、食事が終わったらそのまま席を立って部屋に戻れるのがいいよね。手ぶらでテーブルに就けるってラクチンだもんね。もっとも、デイジーとチップは持っているけど。

ふらりと席を立って、涼やかで透明な空気に覆われた庭をゆっくり歩いて部屋のある建物へと向かう。と、建物の前に、昼間遊んだホテルキャットがニャ〜。食べ物持っている振りしてだまして捕まえ、そのまま抱っこして嫌がるニャンコを部屋まで拉致。扉を開ける直前に、暴れまくって腕から逃げ出したニャンコは、脱兎のごとく外へ逃げていく。ザンネン、一緒に眠りたかったのに。

翌朝、車に乗ろうとしたら、フロントガラスに猫の足跡。よーく見ると、登った跡と降りた跡、両方付いてる。屋根の部分にもちっちゃな足跡がたくさん。どうやら夕べの仕返しをされたらしい。

従業員も皆、サンパで優しい、過不足なしの、素敵な一つ星レストラン&ホテル。月末にまた、仕事とはいえここに数日滞在できるのは嬉しい限り。待っててね、ニャンコ。今度こそ一緒に寝ようね!


Mar.2 sep.2003



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