カトリーヌ・ゲラズと出会ったのは、今年の3月はじめ。今は幻となってしまった「ペルティエ」で、同店がコンティシーニを迎えてのリニューアルオープン1周年記念&パティシエ・ワールドカップフランス代表優勝のおゆわいを兼ねたレセプションの席だった。山ほどの人、お菓子、お料理に埋もれて窒息してしまいそうな中で紹介されたカトリーヌは、女性料理人。9区に人気ビストロを開いていたのを8区は「ヴェルシオン・シュド」があった場所に移転したのは昨年の秋だったか。人気のほどを噂には聞いていたけれど、試す機会がないまでいた店のオーナーシェフは、話してみるといたってチャーミングな女性で好感度大。一週間後には早速、彼女の料理をトライして、その実力を堪能した。
3月にいただいた料理は、クルジェットとシェーヴルチーズを混ぜ合わせたものにカヴィアを乗せたもの(だったかな、確か)と、和牛のロティに野菜のテンプラ添え。
クルジェットはシェーヴルの香りが少々強すぎるものの、全体的でまろやかなトーンでまとめ、カヴィアの塩気がいいアクセントになっていた。和牛といえどもまだまだやっぱり脂よりは赤身のおいしさが勝る牛肉はきっちりジャストに火入れされ、肉々しい旨みが体に沁みる。フリッター的に揚げたテンプラはさっくり軽やかで、お願い、シャンパーニュ持ってきて!という感じだった。4種盛り合わせのデセールたちはあくまでも軽やかで、正直今まで、女性シェフたちとの料理相性があまりよくなかった私にとって、初めてアプリシエイトできた女性の料理人になった。
そんな彼女の料理を再び堪能。ポップな絵が飾られ、カジュアルとエレガントの心地よい間をうまく汲み取った内装のサロンに腰を落ち着け、ゴマやケシノミを振ったパイをかじりながら料理選択。ニース出身のカトリーヌの作り出す料理は、私と相性の悪い訳ない。どの料理もしごく魅力的に、食べてよ食べてよ!と私に語りかけてくる。やっぱり、もっと通わなくちゃいけないよなあ、ここ。ほんとはもちょっと安ければいいのだけれどね。ミシュランの星を狙っている最中で、料理も値段もそれなりにガストロノミックなのだ。
アントレは、「サン−ジャック(ホタテ)のカルパッチョ、パンプルムース(グレープフルーツ)風味」を半分こ。旬のホタテのはかない甘味にパンプルムースの酸と赤コショウのインパクトが上手に絡んだ、シンプルながら完成度の高い一品。シブレットやゴマなどが香りをさらに添えている。色合いもきれいだねえ。白に赤とピンクがポップに映える。生のサン−ジャックを使った料理といえば、もう異論の余地なく、ブリファーさんの作る、マンゴーとカヴィアと合わせたサラダが抜群においしいけれど、これはこれで悪くない。あ、書いてて、ブリファーさんのサン−ジャックのサラダがやたらと恋しくなってきた。もう出てるんだろうなあ、カルトに。「ル・サンク」にいたクリストフが「レ・ゼリゼ」に移ってから、まだ食べに行ってない。クリストフの顔も見たいサン−ジャックも食べたい。行かねば、早急に。
プラは、「カナール・ソヴァージュ(野生の鴨)のロティ、洋ナシとジャガイモ添え」。これが抜群!3月の和牛の時にも思ったけれど、カトリーヌ、肉の火入れが上手い。生かさず殺さずというか、ごく丁寧にジンワリと火が入り、決して肉が疲れていない。ナイフを持つ指が痛くなるくらい力強い鴨肉の風味豊かな味を楽しみ、ロティの具合もすばらしい洋ナシとの相性を楽しみ、しっとりとしたジャガイモで口を休め、ごく薄のパンデピスを焼いたもののスパイシーな甘味と鴨との相性に思わず笑みがこぼれる。パンデピスに添えられたフォアグラもグー。偉い、カトリーヌ。これなら全然星取れるよ!
同席者が食べたルジェ(姫鯛)のポワレはイマヒトツだったらしいけれど、私が食べたものに関しては、なんの問題もなし。やっぱり相性かしらねえ、と、ほくほくしながら幸せランチ時間を過ごす。
昼も夜もお客様で溢れている「シェ・カトリーヌ」は、この1年で私が試した新しいレストランの中ではベスト3に入る店。来年のミシュランが、ちょっぴり楽しみな今日この頃だ。
Mer.10 dec.2003