homeホーム

グルマン・ピュスのレストラン紀行


シベルタ(Chiberta)

「もうすぐ「ル・ブリストル」を辞めるんだ。ギー・サヴォアが買って新規オープンする「シベルタ」の共同経営者になるんだよ」。そんな、ショッキングな話を、モントゥイエさんから聞いたのは、春先のことだったかな。もともと、「ギー・サヴォア」の出身の彼がサヴォアの新しいレストランに参画するのは、そりゃまあない話ではないけれど、じゃあ、「ル・ブリストル」はどうなるの!?何年にも渡って、「ル・ブリストル」で極上のサーヴィスをしてくれたモントゥイエさんに涙の別れを告げたのは7月。「今度はシベルタに遊びに来てね。歓迎するよ」と言われてから、数ヶ月がすぎた。夏にオープンした「シベルタ」は、すぐに話題の1軒となり、年が明けてミシュランで1つ目の星をすんなり獲得した。

なんやかんやと行く機会がなく、ようやくモントゥイエさんに会いにいけたのは4月。「ル・ブリストル」にいた頃より気持ちカジュアル度と華やか度が増したようなモントゥイエさんに、ムッシュー・モントゥイエ、という呼び名はしっくりこない。ジャン−ポールと呼ぼう。

冷たい雨が降る4月の夜。レストランは満員御礼。3セクションに分かれた普通のテーブル席とバーカウンター席、その横に背の高いテーブルが2つ。背の高いテーブルについて、桃リキュール入りのシャンパーニュでチン!おまかせで行く?というジャン−ポールの言葉に従い、料理選びの重責から解放され、のんびりじっくり、溺愛するデコレーターの内装を堪能する。ジャン−ミシェル・ウィルモットは、サヴォアの本店やビストロ、その他レストラン、美術館、ブティックなどを手がけるマルチデコレーターだけれど、私にとっては、バレエ「クラヴィゴ」の舞台美術家。モノトーンでラインのきれいな「クラヴィゴ」の舞台は、その音楽、振り付けとともに、私を魅了してやまなかった。

キュウリの冷たいクリームスープとムースそんなレストランに一緒に来る友人は、バレエ友達がふさわしい。二人して、ウィルモットと「クラヴィゴ」の話に夢中になっているところに、アミューズの「キュウリの冷たいクリームスープとムース」が登場する。

爽やかな季節の到来を予感させるスープは、みずみずしいキュウリの香りと柔らかなクリームが融合した、軽く香りよい作品。アミューズにピッタリね。スプーンに盛り付けたムースをスープに浸して食べるのが楽しい。

ガンバ(エビ)のテンプラ仕立てにアヴォカドピュレ続いて、「ガンバ(エビ)のテンプラ仕立てにアヴォカドピュレ」。ごく細のパートフィロ(春巻の皮みたいな感じ)をグルグルと巻きつけて衣に見立ててカラリとあがったガンバは、南のトロリとした白ワインと最高の相性。揚げ物とシャンパーニュや南白ワインの相性って、たまらない。サクサクの衣、ジューシーなエビの身、う〜ん、もっと食べたい。ソース代わりのアヴォカドのピュレが優しいトーンを加えている。

マグロの軽い燻製とタルタル「マグロの軽い燻製とタルタル」。今時の料理だよね。同じ魚を調理法を変えてサーヴィスするのって。青リンゴの酸味やカヴィアの塩味が程よく絡んだ、サンパな料理。なんてことないけど、なんてことなくちゃんとおいしいのが偉い。

カエルのフライとパセリソース「カエルのフライとパセリソース」は、カエルを小さい頃に飼っていた友達は、どうしても1個しか食べられず、かわいかったらしいカエルを思い出してしまいちょっとブルーになる。かわいそうに。サックリしたフリッター衣で揚げられたカエルに、王道のパセリ味を合わせた、クラシックなカエル料理。合わせるワインはやっぱりブルゴーニュ。下に敷いたハーブサラダがおいしいな。カエル自体は、私もそれほど好きな食材ではないので、正直、いまひとつピンとこない。カエル好きに味わってもらって感想を聞きたいな。

サツマイモのポタージュ「サツマイモのポタージュ」はゴキゲンな味。そもそも、甘くて柔らかくてトロトロした離乳食系は、私が最も愛する食べ物。(あとは、カラリサックリの揚げ物系も好きよ。フリットとか、ね♪)ポワレしたラングスティヌ(アカザエビ)の甘味と溶け合い、ひたすら甘く奥深く、いい感じ。

サンピエール(マトウ鯛)のグリル、ハーブソース料理の最後は、「サンピエール(マトウ鯛)のグリル、ハーブソース」。うーん、普通かなあ。魚の質も普通なら、焼き方も普通。日本人である以上、魚にはどうしても厳しくなっちゃうんだよね。それにしても、フランス人て、どうしてこんなにも魚を焼くのが苦手なんだろうねえ。なかなかお目にかかれない、素敵な魚焼き職人て。ウィリアムの魚料理がふと懐かしくなる。

フロマージュ。バスク地方のオッソイラティに黒イチヂクのコンフィチュールさて、フロマージュ。バスク地方のオッソイラティに黒イチヂクのコンフィチュール。黒サクランボのコンフィチュールが定番だけれど、イチヂクだって悪くない。カイザーのパンと一緒においしくいただく。

ローズ、フランボワーズ、赤い果物のスープ、ライチを使った、ソルベやジュレたちおやつ1つ目は、フェミニンな色が愛くるしい、赤の集合体。ローズ、フランボワーズ、赤い果物のスープ、ライチを使った、ソルベやジュレたち。爽やかであっさり。好み?いいえ、私はもっと甘くてトロトロしたものが好き。

ショコラとプラリネのお菓子にカリカリカカオチュイル。好みで、おやつ2つ目を嬉しく迎える。ショコラとプラリネのお菓子にカリカリカカオチュイル。甘くてトロトロして同時にシャクシャクとしたプラリネの歯ごたえも素敵。好み?うん!

いやあ、食べたねえ〜。皿数は多いものの、このポーションのデギュスタシオンて、飽きなくていいよね。フランス人はイヤがるかも知れないけど、私たち日本人には、これくらいの量をたくさん食べるのが合っているのでしょうね。

カウンター席のすぐ横で、カウンターではタバコを吸う人が8割を超えていたのが、本当に残念。ウィルモットさんの幻想的なライティングの中に、タバコの煙がもうもうと見えてるもんね。普通のテーブル席なら、少しはタバコの被害が少なくなるかなあ。今度はそちらで食べてみよう。

ジャン−ポール以下サーヴィスは、みんな感じよくスマートで気持ちがいい。料理は、ハッとするようなおいしさやすごさはないけれど、そつなくまとめ上げた優等生タイプ。すごい個性はないけれど、万人に喜ばれる感じかな。悪くないと思う。内装の素敵さも含め、総合的に考えると、やっぱりいいレストランだよね。夜毎満席なのも納得。おいしかった、楽しかった。ごちそうさまでした、ジャン−ポール。また遊びに来るね!


jeu.14 avril 2005



back to listレストランリストに戻る
back to list8区の地図に戻る
back to list予算別リストに戻る


homeA la フランス ホーム
Copyright (C) 1999-2005 Yukino Kano All Rights Reserved.