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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ル・サンク (Le Cinq)

「ル・サンク」は、それはよく遊びに行くレストランだけれど、きっちり食事に来るの、久しぶり。1年近く来ていない?少なくとも、今年の春にミシュランの3つ星になってからは、初めてね。あのニュースを聞いたときには、失礼ながら笑ってしまったけれど(だって、私にとっては、威風堂々とした3つ星レストランではなくて、ギャク満載の遊び場なんだもん)、どんな風に私の遊び場が成長したのか、興味津々で赴く。

贅を尽くした空間のお気に入り席は、広い店内に2つだけあるバンケッット席。壁に沿ってしつらえられたソファに並んで座れば、美しい店内と中庭を見渡す、とっておきのラヴラヴ席。いつかカップルで来て、このソファに並んで座ってみたいよね。この席を予約しては、女同士で並んでいる情けない私、、、。

暗い照明に暖かなろうそくの炎、カーネーションの真紅に彩られての優雅なディナー。こんな雰囲気にいただくシャンパーニュはロゼに決まってる。柔らかな発泡を楽しみながら、ゆっくりと料理選びを楽しむ。

シャンパーニュアミューズシャンパーニュ・アミューズは、スプーンに乗せたフレッシュアンチョビのマリネとチーズスティック。あれ、グジェールは?ここのグジェール、とっても気に入ってるのに。会えなくて残念。

オリーヴパンをごく薄にしてトーストしてブランダード(タラのピュレみたいなもの)を挟んだアミューズに続き、アントレは、ラングスティヌのカルパッチョ、カヴィア添え。絶品!「ラングスティヌのカルパッチョ、オシエトル・カヴィア添え」。何年か前に、ブリュッセルの「ブリュノー」で同じ料理を食べたっけ。

どうひっくり返したっておいしいに決まってる料理だ。ブルターニュ産のとびきりのラングスティヌはねっとりと舌にまとわりつく甘さ。たっぷり添えられたカヴィアを塩代わりにしていただく、シンプル&究極料理。ラングスティヌの下に忍ばせたバジルがさわやかなアクセント。芸があるわけじゃない。食材の質のよさでとことん勝負しただけの作品だけれど、ただただおいしい。こういう、何気なくサラリと流したような料理、結構好きだ。

味見させてもらった「ジャガイモのシブースト仕立て」がこれまた絶品。ジャガイモの名産地、ノワールムティエ産の素晴らしいジャガイモの風味を生かしてカヴィアを合わせ、こちらもまた贅沢で品のある一品。

どちらのアントレもかなり上出来だ。量が少なめでさっぱりした構成なのもよいね。体調よくプラに臨める。

迫力の仔豚ちゃんプラは、今週3度目の仔豚ちゃん。そんなに好きかい、仔豚?うん、大好き♪だってしみじみおいしいもん。この1〜2年で、すっかり高級レストランのカルト(メニュー)に溶け込んだ仔豚ちゃん。「ル・サンク」のそれは、セージで香りをつけて、はしり野菜をタジン風に甘く味付けしたもの。

ロース、ヒレ、あとどこだろう?バラなのかな?味も食感も違う3つの異なる部位を楽しませてくれる。香り高く存在感のある豚に、香辛料を効かせたソースと野菜が絶妙。豚って甘辛が本当によく似合う肉なのね。上出来!

味見させてもらった、オマールのグリルは、食材自体の大切さをしみじみ教えてくれるし、鴨の付け合せでやってきた、チビジャガイモのロティ&ナスのピュレがまだイケル。

お友達にも仔豚を味見させてあげよう、と小さなお皿をもらって仔豚&野菜を取り分けていた私に、パトリス(いつも遊んでもらってる(遊んであげてる?)ここの副支配人)が、「野菜、ユキノが食べる分、なくなっちゃうね。もっと持ってきてあげるね」と言うのにかぶりをふり、「野菜じゃなくて、あっちのジャガイモの方が欲しいなー」とおねだり。ジャガイモ&ナスをゲットして、大いにゴキゲン。いやしかし、ほんとにジャガイモっておいしいよね。

「今夜はご機嫌いかがですか?」と顔見知り風に挨拶されたものの、私のほうは、相変わらず顔を覚えていないソムリエ氏がすすめてくれたシャトーヌフの赤は、かなりの出来。バランスよくよくこなれ、多様な香りが立ち上り、複雑に香り付けされた肉料理を盛り上げてくれる。

今夜は、エリック・ボマール(ここの支配人、数年前の世界最優秀ソムリエコンクールのヴァイス・チャンピオン)のウヒャウヒャ笑いがないのがちょっと寂しいけれど、ま、エリックはまたいつでも会えるしね。食事に来るときには、私、あまりエリックに会ったことないや、そういえば。遊びや仕事で来るときには、よくいるのにね。

アヴァン・デセール。器が素敵タルト・シュクル(お砂糖タルト)に生クリームを添えたアヴァン・デセールをつつき、今夜のデセールはアイリッシュ・コーヒー「アイリッシュ・コーヒーのヴァシュラン仕立て」。さっくりメレンゲ&クリームにウィスキーたっぷりのアイスクリームと冷たいクリーム。上品でソツのない、感じいい作品。でもそれだけなんだよね、、、。感動が足りない。

ここでお菓子を食べるたびに、私の記憶の中には、このレストランの初代シェフ・パティシエ、ロラン・ジャナンの作品が強烈によみがえる。感動と驚愕を覚える、ほんっとうに素晴らしい彼のデセールとどうしても比べてしまうんだ、いつも。ロランと同じレベルを要求しても仕方ない、とは思うのだけれど、忘れることが出来ない。

プチフールをつつき、コンフィズリーたちを選び、食後のお茶を楽しむ頃に、きれいなブルーの色をしたグラスが運ばれ、ワットウィラー(ヴォージュ地方のミネラルウォーター)が注がれる。あ、素敵ね、お水をこうやってサーヴィスしてくれるのって。体に優しいきれいなお水を、美食と美酒をむさぼった体内に吸収して、楽しくおいしいディナー時間が終わる。

いつもと変わらぬ、優しくチャーミングでちょっと(たっぷり?)ボケをかましたパトリスの素敵なサーヴィスと、彼が率いるサンパな従業員たちの優しさに包まれ、感動と興奮はないけれど、きっちりとしたレベルにある優等生料理をいただき、エレガンス溢れる雰囲気の中に身をゆだねる幸せはかなりのものだ。

ピアノの生演奏を耳にしながら、ホテルのそこかしこに飾られたジェフ・リーサムによる花の美しさを今一度愛でて、パトリスに見送られながらフォーシーズンズ・ホテル・ジョルジュサンク・パリを後にする。ドラマティックな贅に溢れたこのホテルを出るたびに、12時過ぎのシンデレラの気分を味わってしまう。今宵もまた、楽しい夜をありがとうございました。また、12時前のシンデレラになりに来させてね!


Dim.7 sep.2003



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