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グルマン・ピュスのレストラン紀行


ル・サンク (Le Cinq)

ゴールデン・ウィーク恒例、スピちゃんと一緒の、春のレストラン三昧1週間。

03年はコート・ダジュール、02年もコート・ダジュール、01年はベルギー、00年はコート・ダジュール、99年は抜けていて、98年、記念の第一回目は、フランス南西部を大きくぐるりと回った。今年は、6年前を懐かしく思い出す旅にでた。でもその前に、きっちりパリも食べなくちゃ。地方旅行分は、しばしお待ちを。まずは、パリのレストラン日記から。

早朝到着のスピちゃんとKを連れて、今回の美食週間は、「ラデュレ」の朝ごはんでスタート。左岸にこの店が出来てから、私はすっかり「ラデュレ」っ子になってしまった。右岸の店には足を運ばないけれど、この店は足しげく通ってしまう。お菓子もパンもよいけれど、朝ごはん時間がまたいいんだよね。パン・ペルデュ(フレンチ・トースト)が絶品。メープル・シロップか生クリームが添えられるのだけれど、断然生クリームが美味!生クリーム嫌いの私だけれど、「ラデュレ」のそれは、例外的に気に入ってる。

たっぷりのブランチ的朝ごはんを満喫した夜は、「ル・サンク」。久しぶりだね。9月が最後かな?とてつもなく素晴らしい料理とワインたちにしびれた。やる気になれば美味しいもの、作れるんじゃん、と、ちょっと見直した。

でもやっぱり、あの9月のディナーは幻だったみたい、、、。

これだけでもやっぱりこの店に来る価値があるなあ、としみじみ思わせる、あでやかで豪奢な雰囲気、飛び切り優しくかつ面白く甘やかしてくれる、パトリス以下極上のサーヴィス陣は、いつだって私たちをつかの間のお姫様にしてくれる。ある意味、3つ星レストランの鏡。全く、“来て、サーヴィスを受ける”というためだけでも、「ル・サンク」は来る価値がある。料理はまあ、好みの問題だから、、、。この3年半の個人的経験を振り返ると、素晴らしい!と思った料理が2割、まあまあが7割、これはちょっとが1割、なのだけれど。

シャンパーニュアミューズの、グシェールと、スプーンに載せたマグロのタルタルお気に入りのバンケット席には、真紅のバラの花びらが散らされている。ナツメグが絶妙にきいた飛び切り美味なグシェールを頬張りながら、シャンパーニュコクコク。ゆるゆる流れる美しい音楽、楽しげな笑い声、キビキビと動き回るサーヴィススタッフ、とぼけているパトリス、いつも陽気なエリック。いやもう、最高の演出です。言うことなし!

カニとジャガイモで作ったタルトグシェールを山ほど頬張り、マグロのタルタル、カニのブランダード仕立てと、アミューズを平らげ、アントレにたどり着く。
この先のタフな美食週間、途中で悲鳴を上げないように、と、スピちゃんと、ラングスティヌ。超美味「ラングスティヌのポワレ」を半分こする。半分、といっても、一人当たり、ため息ものの大きさのラングスティヌが3匹もいて、十分過ぎる。かんっぺき!と思わずうなってしまう、質と焼き加減の、それはそれは見事な出来。エミュルジョンも軽く、風味豊か。こういう料理はいいね。でも、このサイズだから満喫できるんだ。コクはしっかりある一皿。全部食べたら、ちょっとヘトヘトになるかも。いずれにしても、見事です。

プラは、これまたブルターニュから運ばれてきたばかりのサンピエール。本当は片身だけどわがまま言って分けてもらったサン・ピエール(まとう鯛)。丸ごとのまま火を通して、「ほーら、きみたちのサン・ピエールだよ!」と、パトリスがデクパージュしてくれる。やんわりふんわりと火を通されたサン・ピエールは、そりゃ確かに美味だけれど、特に感動はしないかな。クラシックなバターソースと、周りに散らされた貝がちょっと苦手なスピちゃんと私。魚屋の娘のKはこのソースをいたく気に入っていたので、きっと出来としてはよいのだろう。

プチフールローラン・ジャナンがいたときの味を知ってしまっている私たちは、デセールはパス。Kは、張り切って注文してたけど、特にインパクトはなかったみたい。プチフールに、ヌガーやギモーヴ切ってもらって、ショコラをパクパク食べながら、アンフュージョンでまったり時間。素晴らしいプレゼンテーションでお茶もサーヴィスしてくれるんだけれど、どのお茶も薄すぎる。砂時計使う意味、ないじゃない。パフォーマンスはつくづく見事なのだけれど、実が伴っていないことが時々あるよね、ここ。そこもまた、笑えて楽しいのだけれど。

このゴージャスな空間だからこそ映える、とてつもなく大きなバラの花を一本ずつもらって、プチフールぎっしりのおやつセットもハンドバックに詰めて、極上の笑顔を振りまくサーヴィススタッフたちに見送られながら、お姫様ごっごを終える。もう少しだけ、料理とお菓子が私の好みだったら、もっともっと来るのになあ。こんな雰囲気とサーヴィスを持ったレストランは、他にありえないもんね。なんやかんや言って、好きなレストランなんだよね、やっぱり。


mer.28 avril 2004



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