暑いね。ヴァカンスだね。レストラン、どこも閉まってるね。8月のレストラン探しには、毎年のことながら絶望する。ないんだもん、あいているところが、ほとんど。そんな中、年中無休のエリックシェフとフィリップシェフの店は、本当にありがたい。テラスでくつろぐ方を選ぶか、パトリスにちやほやされる方を選ぶか。女3人、ちやほやレストランの方を選ぶ。
暑いしね。さくりと軽く食べて引き上げましょう。なんて考えは甘かった。盛夏の昼下がりに始まった昼食会は、延々飲み食いが続き、終了したのは何時だったんだろう?長い長い午後だった。
大好きなテーブルで(しかし、好きな側の席ではなく、、、)、シャンパーニュでチンして宴の開始。もろもろアペリティフアミューズをつまんだ後、アミューズは、氷で作った器に入ったレタスのスープ。中にモッツアレラが沈む深い緑色のスープは、キンと冷たくて夏にぴったり。きれいだね、氷の器が。
アントレは、ツブ貝と白いんげんの軽い煮込み、みたいな料理。きれいにブイヨンの香りがついた貝はコリコリと歯ごたえがよく、ふっくらつややかなブルターニュ産のお気に入り白いんげんはホックリと甘い。ハーブの効かせ具合も絶妙で、この店にしては、たいそう上出来な一皿。やれば、たまにはできるんだよね、ここ(笑)。
プラの前に、ラングスティヌのカルパッチョが出てくる。わーいありがと、パトリス。この料理、前に一度食べているけれど、なかなか美味だったのを覚えている。ねっとり甘いエビに、カヴィアの塩味は王道の組み合わせ。爽やかな柑橘の香りがよいアクセント。夏にぴったりね。
プラはリ・ドゥ・ヴォー。完熟トマトとソラマメをたっぷりあしらった、夏ヴァージョン。リ・ドゥ・ヴォーをこうやって夏っぽく食べるのって新鮮だ。ソースがちょっと味強すぎるけれど、丁寧によけながら食べるといい感じ。リ・ドゥ・ヴォーの質は、さすがはお金持ちレストラン!なので、きっちりおいしくて嬉しい。時々あるんだ、素材自体に難あり、のリ・ドゥ・ヴォーが。
この店では、おやつの代わりにフロマージュを食べる、と決めている。絶品なんだもん、マリさんのフロマージュたち。逆に、イマイチなんだもん、おやつたち、、、。奇跡のようなまろやかさのルブロションや、カビにほおずりしたくなるフェルム・ダンベール、今すぐに作った場所に行きたくなってしまうようなコンテにうっとりして、強烈においしいエポワスに恍惚。久しぶりに巡り合う、至高のエポワスに感動。その場で早速、数日後に、マリさんちのフロマージュを大量に仕入れてフロマージュゴハンを開催することに話がまとまる。
おやつ、いらないよ、と言った言葉は、やんわり無視された。赤い果物ピュレのパンナコッタみたいなアヴァン・デセールに続き、ココナッツとパイナップルと赤い果物のクープが運ばれてくる。食べすぎだよ〜、お腹がもうパンパン、、、。まあでも、比較的あっさり目の夏タイプデセールだし、何とかなるかな。パクパクパク。ふう。勢いをつけたまま、コンフィズリー群からショコラ系とヌガー、ギモーヴをいただき、ミントのお茶で締めくくる。
軽い午餐?うそばっかり、、、。結局、おつまみ、アミューズ、アントレ二つ、プラ、フロマージュ、おやつと、死ぬほど食べてしまった。
長い宴会のラストにいつも感じる、心地よい虚脱感に包まれて、パトリスのおちゃめ笑顔に見送られてレストランを後にする。
「玄関まで送ってくれるの?ありがとね」
「ううん、玄関には行かないよ。ほーら、到着!」パトリスにいざなわれた先は、ホテルのバー。カウンターに立っているのは、ヨアンヌ!
「はい、僕のエスコートは今日はここまで。ここからは、ヨアンヌの手に託すね〜。ビス〜!また遊びに来て〜」と満面の笑顔のパトリスから、これまた満面の笑顔で迎えてくれるヨアンヌと向き合う私たち。
ヨアンヌは、リッツの「エミングウェイ・バー」にいた、バーマン。私は、彼のつくるカクテルにほれている。こんなにも、好みを把握してくれるバーマンは他に会ったことがない。リッツを辞めた後他のホテルにしばらくいて、フォーシーズンに数ヶ月前に入社した。何度か覗いたのだけれど運悪くいつも休みで会えずにいた。優しいパトリスが、ヨアンヌいるかな〜?あ〜いる〜。じゃあ、ユキノたち連れて行ってあげよ〜、と思ったのだろう。本当にパトリスは気の優しいいい人だ。散々飲み食いしたにもかかわらず、まあ食後酒だよ、と、言い訳しながら、ヨアンヌお手製のおいしいカクテルをすすり、長い長い午後の終わりを過ごす。
楽しいったら楽しいね。レストランに行くって、本当になんて楽しいんだろうね!
05 aout 2005