最悪だ、今年の夏は。
秋から春にかけて、この季節を楽しみに、あーだこーだと計画を練ってきたというのに、期待はことごとく打ち砕かれ、なんと、たったの2回よ。パリのテラスでディネを楽しんだ回数。たったの2回。考えるまもなく、すぐに言えちゃう。6月後半、プラザ・アテネの「クール・ジャルダン」と、ちょうど一月後の「ル・ブリストル」。それだけ。セ・トゥ。ザッツ・オール。エスト・エス・トド。
昔から大好きなテラスのある「ル・ルレ・デュ・パルク」、去年も行きそこなった「メゾン・ドゥ・ラメリク・ラタン」、絶対この夏もう一度!と心に決めていた「ル・ブリストル」へのリピート、そして、7月末に嬉しく期待を裏切ってくれた、オテル・ロワイヤル・モンソーの「ル・ジャルダン」。これだけの、テラスを逃してしまった。
「またいらしてください。この夏のうちに。今度はテラスでセルヴィスさせていただきますよ」なんて言ってたマネージャーが、いないじゃないか!頼むよ、おーい、、、。
相変わらず気に入らないロビーを抜け、廊下を渡ってレストランの入り口に立つ。ガラス越し、暗く照明が落とされたテラスにチラリと目を向けた後、目の前に並ぶ従業員達に複雑な笑顔を向ける。9月第1回目のレストランは、7月末に決めた通り「ル・ジャルダン」です。あ、訂正。あの夜決めたのは、《9月初めてのレストランは、「ル・ジャルダン」のテラスで》だった。
予定とちょっと違うけど、ま、仕方ないよね。分かっていたことだ。朝から寒かったもの。心残りを振り払うために小さく一つため息ついて、次々と向けられる挨拶に答えていく。
「ボンソワー。またお目にかかれて嬉しいですよ」
「私も」
「ボンソワ。お元気でした?」
「ええ。あなたも?」
「いらっしゃいませ。今夜は3人なんですね」
「ボンソワ。ええ、どうぞよろしくね」
挨拶交わしながら、かねてからの懸念がムクムクと沸き上がってくる。ああ、やっぱり忘れてる。この間あった人たちの顔を。えっと、あのコミの子は確かに私たちのテーブルだったはず。ソムリエは?この人?あれ、違うような、、、。あの素晴らしいメートルは?これ?んー、そうだったっけ?この人とは初対面だよねえ。
どんどん自信がなくなっていく。唯一、服が全く違うからこれだけは間違えるはずがない!と自信を持っていたマネージャーがいないんじゃ、もう本当に、誰が誰だかわかんないよ。自慢じゃないけど、人の顔を覚えるの、けっこう苦手。特に、セルヴールの人たちって、レストランごとにみんな似たような雰囲気を持っていたりするから、さらに混乱をきたすのよね。
余計なこと言わずに無難な挨拶を済ませ、テーブルに案内してもらう。椅子を引いてくれるセルヴールの顔を見る。この人は?前に会ってる?仲良くした?初めての人?うーん、うーん、うーん。困ったぞお。きちんと思い出せますように。
なんとなく見覚えのある細面のメートルが、アペリティフの注文を取りに来る。
「ベッリーニ、出来ますか」
「もちろんです、マドモワゼル。覚えていますか?僕、前にいらした時、担当させていただいたんですよ」この人だ。この間、たくさんお世話になった素敵なメートルさんは。にっこり笑って嘘をつく。
「ビアン・シュール(もちろん)、ムシュ。あなたのおかげで、とても楽しい夜でした。またここにこられてとても嬉しいわ」
「こちらこそ、お目にかかれて嬉しいです」
アペリティフの話に戻る。
「リキュールをたらすのではなくて、ちゃんと生の桃を使ったベッリーニ」
「ああ、それはちょっと、確認しなくては分からないです。聞いてきます」
「もしも出来なかったら、普通のシャンパーニュを」
「了解しました」
程なく戻ってくるメートル氏。
「OKでした。作れるそうですよ」
「うわぁ、嬉しいな。なかなか、きちんとしたの作ってくれるレストラン、ないんですよ。この夏、何度がっかりしたことか」
「そうですね、確かに。バーならば作るでしょうけれど、レストランで出すには、手間がかかってやりづらいんですよ」
「どうもありがとう、リクエストを聞いてくれて」
「ジュ・ヴ・ザン・プリ。あなたに歓びを差し上げるために、僕はいるのですよ」
くうぅ、、、。どーだい、このセリフッ!そんじょそこらの誰かじゃなくて、キリリとした眉毛が麗しいこのメートルが言うから、また一段と決まるんだ。
「メルシー、ムシュ、、、?」
「ジョスランといいます」涼しい笑顔が返ってくる。
「メルシー、ジョスラン」
ジョスランが運んできてくれた、桃が飾られた、本当のベッリーニで夏の終わりを乾杯。この夏は、「ル・ブリストル」と、アントワネットちゃんとジャッキーの所でしか飲めなかったベッリーニ。ここのが一番美味しく感じられるのは、ジョスランが持ってきてくれたからよね、やっぱり。
カルトを広げる。あ、ムニュの構成、変わっちゃった。
この間来た時、珍しく頼んだムニュ・デギュスタシオンがとてもとても素敵だった。変えてもらったアミューズから、最後のデセールまで、どれもこれも素晴らしいものだった。次に来る時にも、またあれを最初から最後まで食べたい、そんなふうに思いながら今夜を楽しみにしていたのだけれど、並んでいる料理は、随分変わっちゃってる。ちぇー、残念だな。夏中変わらないと思ってたのに。まあでも、今夜のムニュもまーまーいい感じ。これで行く?
すぴちゃんとまっきっきーの合意を得て、注文に取りかかる。今夜の担当は眼鏡をかけた背の高いメートル。ジョスランは、お休みのマネージャーに代わって、レストラン全体を見てる。
メガネくんが注文を受けて引き下がると、グリッシーニが運ばれる。ここのグリッシーニ、香ばしくてかなりイケル。ベッリーニに漂う、夏の余韻の甘い香りを楽しみながら、グリッシーニをポキッ。あっ!細い細いベッリーニ。口に入れた瞬間に半分折れて落ちちゃった。あーあ。
誰か気づいてくれないかなー。さっきから後ろを通る、セルヴィスをするにしては体が大きすぎるコミ君は、気づきもせずに風を巻き起こしてサルを歩く。彼が歩く度に風が吹いて気になってしょうがない。カゼという名前をつけてあげよう。
カゼをやり過ごし、メガネ君に視線を送る。すぐに気づいて、そよ風も起こさずスッと静かに横に立つメガネ君に、訴える目を向ける。
「言ってごらん、僕に」
「ベディーズ(おそそう、へま、みたいな意味)しちゃったの」と、視線をメガネ君の足元に移す。自分の足元を見て一瞬眉を上げ、音もなく足を動かして落ちたベッリーニを隠すメガネ君。おちゃめな笑顔をこちらに向けて、メガネ君が言う。
「なにをしたの?」
「何もしてません」笑顔を返す。笑いながら、側を通ったミーコー(ここにいる可愛いコミ君たちにつけたあだ名)に、「このお嬢さんに、グリッシーニを」と、さっそうと指示する。おかしくてたまらない。いいなあ、こういうおちゃめさ。言い方がまた、クールなんだ。会話の内容を日本語に直してまっきっきーたちに伝える。大笑い。今思い出しても吹き出してしまう、この夜一番笑えた、絶妙な会話になった。
この間、楽しい話をたくさん聞かせてくれたソムリエの登場。案の定、私ってば彼の顔も忘れていて、「ソムリエのステファンはいないんですか?」とジョスランに聞いて、「いますよ、ほらあそこ」と、奥の方を歩くステファンを教えてもらう始末。
「ボンソワー。お元気でしたか?」
「ええ。あなたは?ヴァカンスはもう終わっちゃったの?」
「ウィ。故郷に帰ってたんです。ロワールなんです。ところであなたのヴァカンスは?プロヴァンスだったんでしょう?」
「そうそれ!あのね、見つけられなかったの、教えていただいたヴァン・キュイのカーヴ」
この間来た時、デセールの時に飲ませてくれた、とても美味しいヴァン・キュイ。すぴちゃん達との旅行先からすぐのところだったので、じゃあ行ってみよう、と、楽しみにしていたのに、どうやっても辿り着けなかった。
「散々探したんですよ。いろんな人に聞いて。でもみんな、ちょっとずつ違うこというし、完全に迷ってしまって、結局時間切れ。どこだったの?」
「残念でしたね。確かに、あそこ、分かりづらいんだ。村を出た道を少し行って、細ーい道を入って、、、」
「また行くことがあったら、今度はきっと見つけます」
「ピュイリコーの方は?」
「時間がなくなっちゃって、そちらもいけなかったの」
「じゃあ、全然ワインカーヴに行かなかったんですか!?」
「ううん。レストランで飲んだワインが美味しくて、作り手を教えてもらってそこに行って来たわ。ルシオンにある、ちっちゃな醸造所」
プロヴァンスのワインの話で盛り上がり、お酒を決めるのはすっかり後回し。散々おしゃべりしたあげくに、ステファンが言う。
「お酒、任せてくれます?この間みたいに、気に入らなかったら私が引き取るから」
「信頼してるから、大丈夫ですよ。軽すぎないお酒を、ね」
「分かってます」さて、おしゃべりは程々にして、お食事しましょうか、お食事。
アミューズは、「甘く焼いた玉ねぎを添えたキャビオー(タラ)」。何てことのないアミューズなんだけれど、しみじみ美味。プリプリとしたキャビオーの表面は香ばしいし、茶色い玉ねぎは、とろりと甘いし。
この間は、アミューズの代わりに、ココ(白インゲン)のヴルーテをもらった。ザラリとした豆の感触とサラリとしたオリーヴオイルの感触との交わりが絶妙な、素晴らしいヴルーテだった。
「あれ、とっても美味しかったから、今夜もそうして欲しいな」ってメガネ君に頼むと、「今夜は、オマールにそのヴルーテが使われていますよ」と言われて、楽しみにしていた、そのオマール。
おそらく、強火で一気にあぶったのだろう、身の締まった極上オマールが、愛するヴルーテに溺れてる。この間のアミューズとアントレを合わせちゃったような作品。とてもとても美味しいけれど、焼いたオマールは、ソース代わりのヴルーテを絡めず、前みたいにそのままの味で食べたいな。ヴルーテも、余計な具がない状態で、あのテクスチャーを楽しみたい。それにしても、ここのオマールって、ほんと、美味しいよねえ。爪いらないから、胴の部分、もう一切れ欲しい。あれ、すぴちゃんの、なんだか多くない?
お魚は、「ロット(アンコウ)のポワレ、カレー味のナスのカヴィア風」。この間は、バルビュ(ヒラメ)でこの料理だった。あくまで優しいカレー風味の、とろけるようなナスに感動し、ホロリホロリと身の崩れるバルビュに感動した。ロットという魚は、カルパッチョでいただくのは大好きだけれど、火を通したものは、ほんと言うと、あんまり好みではない。あの、むっちりした弾力がいやなのかなあ。
美味しいけれど、この間の方がいいなあ、なんて思いながら、食べてしまう。どうしても厳しくなるよね、初めての時に最高のものを食べさせてくれたレストランには。厳しくなる、というか、更に多くの期待をしちゃうんだ。
お肉は、「ヴォー(仔牛)のロティ、焼いたフィグ(イチジク)添え。ジロール茸とフェヴェット(小さなそら豆)」。あー、もう、そんな季節なのね。妙にしみじみ秋を感じながら、ジューシーなベベ(赤ちゃん)牛の肉をつつく。うっく、もうお腹いっぱい。残したフィグを、まっきっきーに食べてもらってごちそうさま。フロマージュに移りましょう。
ここに座ってから今まで、ひっきりなしに私たちに風を送り続けるカゼ。可愛いのと、かっこいいのと、まあまあのと、なかなか素敵なミーコー3人組みとは一線を画しているコミのカゼ。
「歩き方がせかせかしてるよね」
「動きが雑」
「観察力も足りない。さっき、私のお魚、勝手に下げようとしたし、まっきっきーの料理ももってっちゃったでしょ?」
「そもそも、セルヴールとしては大きすぎる」
「ジョスラン、もっと、指導してあげなくちゃ」なんでまあ、セルヴールという職業を選んだのかしらねえ、なんて、フロマージュのシャリオを押してくる姿を眺めながら、カゼの評価。いい人ではあるんだけどね。セルヴールとしては、もう少し頑張って。
カゼにフロマージュの解説をしてもらっているところに、ジョスランがやってくる。しばらく来てくれなかったら、寂しかったわ。すっかりジョスラン・ファンの私たち。嬉しそうな目をジョスランに向ける。
「このフロマージュがね、美味しいんだよ。僕の地方のなんだ」
「シェーヴル(山羊)ね」
「いいえ、ブルビ(羊)」しまった、、、。シェーヴルで有名なロワール出身なのは、ジョスランじゃなくてソムリエのステファンだ。慌てて言いつくろう。
「ええと、じゃあ、出身はバスク?」
「もう少し上。ポーの側なんです」
「ゲラールの近くだ、じゃあ!」
心から尊敬してるレストランや、大好きなジュランソンのワイン、リザラズのことまで話を広げ、ジョスランとの世界に入り込む。ジョスランの後ろには、フロマージュのサーヴィスが中断してしまって、手持ち無沙汰のカゼ。すぴちゃんとまっきっきーの視線もジョスランに向いてるし、可哀相なカゼは一人ぼっち。
「こいつ、ダヴィッド・ドゥイエの弟なんですよ。ははは、うそうそ。でもね、お客様にしょっちゅう聞かれるんだよ。兄弟ですかって」と、メガネ君が冗談を飛ばすくらい、確かにカゼはジュードーカのドゥイエに似ている。うん、セルヴールなんかしないで、柔道の道に進むべきだったね、君。
「今度この辺りにいらしたら、ぜひいらして欲しいレストランがあるんです」
「どこどこ?」
「後で、ミシュラン持って来ます。ゆっくり話しますよ」待ってまーす。名残惜しげにジョスランを見送り、フロマージュと残りのお酒に取りかかる。
ステファンが選んでくれた今夜のお酒は、アミューズが終わる頃、カラフに移されて出てきた。
「味見してください。どこだと思いますか?」
クン。
「アルザスじゃない」
クンクン。
「あなたのふるさと、ロワールでもない」
クンクンクン。
「ブルゴーニュでもない。もっと南」
「そう。もっと南に下がってください」ステファン。
「ローヌっぽい。でも、違うなあ。もっと南だ」
「ええ」
「プロヴァンスかラングドック?」
「もうちょっと南があるでしょう」
「ルシオン?」
「そう。ルシオンのどこ?」
「あー、ルシオンなんて、モーリーとバニュルス、甘いお酒しか知らないわ」
「コリウールというアペラシオンなんです」
「コリユール?あれ、コリウゥル?」
「コリウール」
「コリュール、、。だめだわ、発音できない」にわか、ワイン講座から発音講座に移って、不可解なフランス語の発音練習。教授の納得のいかないまま発音矯正の時間が終わり、本題に戻る。
「美味しい。香りがたくましくて甘くって。味も、もう出来上がってる。セパージュはなあに?」
「シラーとムルヴェドルです」
「シラーの匂いなんだ。大好きよ」
「ここ、最近作り手が亡くなって、息子が継いだんです。親父のようにワインを作りつづけてくれるといいのですが」ミレジムは1995年。まだ、親父の代のお酒だろう。黒スグリと土と木の香りがするお酒は、飲みはじめから絶好調を迎え、フロマージュに辿り着く頃には、ちょっと酸に触れ過ぎて疲れ気味の感がするようになる。
「デキャンティング、しないほうがよかったと思わない?」
「ほんと。そう言えば、ステファンは?しばらく姿を見せないよね?さっきから、ジョスランや若いソム(ソムリエ)がサーヴィスしてくれてる」
「帰ったんじゃないかな。今夜はこれからロワールに帰るから、11時くらいであがります、って言ってたし」
「お酒の味が悪くなる前に逃げた!?」
「あはは、そうかも。今度言っておくよ」ジョスランお勧めのフロマージュも終わり、デセール時間。
まずは、「フランボワーズの柔らかなタルト、フレーズ・ソルベ添え」。ふんわり温かなタルトは、優しく素朴でなかなか美味。イチゴ味のソルベには、この夏たくさん楽しませてもらった。これが今年最後かなあ、タルト同様、優しい味のソルベを口に運ぶ。横に添えられた、軽く煮込んだフランボワーズちゃん達は、申し訳ないけど出番なし。あんまり好きじゃないのです、君たちのことは。
「ステファンからです。よろしく、と」と、黄金色の液体がなみなみと注がれたグラスを、巻き毛が麗しい若ソムが運んでくる。
「コート・デュ・レイヨンです」いなくなってなお、自分の故郷をアピールしてるよ、ステファンたら。濃厚なフルーツ・コンフィを液体にしたような、香りも味も煙るように甘い、グラマラスなデセールお酒と素朴なデセールの相性を楽しむ。
二つ目のデセールは、前回と同じ、「ショコラのラヴィオリ、レグリス(甘草)のソルベ添え」。こちらも素朴であきの来ない系のデセール。
デセールを含め、どの料理を取り上げてみても、まるで、盛りつけられた食器のクラッシックな垢抜けなさと同調するかのように、素朴で何てことのない外観。それがねぇ、、、。食べてみると、結構感動するんだ。初回の、完璧な感動には及ばないけれど、今夜もまた、いい感じの料理が次々と目の前に並んだ。その昔、「レ・ゼリゼ」で采配を振るっていたシェフの指導を受けた今のシェフ、一度お目にかかりたいものです。
「ムシュ・シリノ(前シェフ)のレストラン、南仏にあるんですよ」
「あれ?引退したんじゃなかったんだ?」
「自分の店を持ったんです。モナコの北側」
「どこどこ?」ミシュランを開いて見せてくれるジョスランにぴったり寄り添ってみる。
「モナコからすぐね。今度コート・ダジュールに行く時に、ぜひ訪ねてみるわ。さっき教えてくれた、ビアリッツの側のレストランにも行ってみたいなあ」
可愛いミーコーたちが注いでくれるアンフュージョンでまったりして、夜が終わる。まっきっきーたち最後の夜だし、本当はどこか場所を移してはじけようか?って話していたんだけど、ここで十分楽しんだもんね。ジョスラン達の夢を見ながら、眠りましょう。
ほんの少し朱が入った赤いバラを手にして席を立つ。お見送りに来てくれた従業員達と丁寧にさよならを交わす。オーヴァ、メガネ君。オーヴァ、ミーコー達。オーヴァ、カゼ。
「ステファンとマネージャーによろしく。もう夏が終わっちゃうから、このテラスは来年までお預けね」
「たまに、9月にも使うことがあるんですよ。その時を狙っていらしてください」9月は忙しい。10月も全然パリにいないし。しばらくは、ジョスランに会えなさそうだなあ。えー、ビズーじゃないのぉ?にこやかに手を差し出すジョスランと握手しながら、誓うのでした。次回は絶対、ビズーをするんだ。
「ル・レジャンス」という、クリスタルで出来たおとぎの国を失って泣いていた私に、涙を拭きなさい、と神様がくれた柔らかなコットンのハンカチーフ。「ル・ジャルダン」は、そんなレストランなのかもしれない。
ven.1er sep.2000