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グルマン・ピュスのレストラン紀行


シェ・ラミ・ジャン(Chez L'Ami Jean)

ボンソワーの声も控えめに、気持ち目を伏せがちに、こっそりと店に入る。
「やあ!今夜は体調、大丈夫?」ああ、やっぱり、覚えてたか、、、、。
「完璧です。この間はほんとにゴメンナサイ。今日は張り切って食べます!」

店内。7時半に入ったのに、一番乗りでなかった!2003年度のフーディングで、ベスト・ビストロ賞を受賞した「シェ・ラミ・ジャン」。先日、惜しまれながらとりあえずの引退をした、パリのトップビストロ「ラ・レガラード」のイヴ・カンドゥボルドの秘蔵っ子が手がけている店、と言えば、その実力は押して知るべしだろう。連日連夜押すな押すなの大人気店で、予約もままならず。ようやく機会を得て初めてこの店を訪ねたのは、一月半くらい前だったかな。とても楽しみにしていたのに、昼過ぎからいきなり体調が悪くなり、とてもとてもゴハンを食べるどころではなくなった。昼に食べたゴハンは当たりようのないものばっかりだったのに、なんでまた、、、と、フラフラ状態ならがも、大切な約束だったのでとりあえずは店に行ったけれど、とてもとても食べられる状態にあらず。目の前に並ぶゴチソウを恨めしげに眺めながら、お店の人たちにたくさんのゴメンナサイをして、すごすごと退却した。今夜は体調も完璧に、仕切りなおしの「シェ・ラミ・ジャン」詣で。

テーブルセッティング。バスク風柄のセルヴィエットがかわいいねセルドンをアペリティフに、と言うのは、このところ、ちょっと腕に自信のあるビストロの定番になったね。「シェ・ミシェル」や「オ・リヨネ」でも、このナチュラル発泡ワインを飲むのが、どうやらイキなようだ。ピンクのプチプチをチビチビやりながら、じっくりとカルトを吟味する。この店のスペシャリテはバスク料理。好き♪仔豚もピマン・デスペレットもアカピーマンもイカも。食べたいものがたくさんあって困っちゃうね。

ご近所の「プージョラン」(一応、ジャン−リュックさんの店としては一般向けには閉店してしまい、今はプロのみに販売しているとか。例の店自体は、ステファン・セッコが買ったらしい。よくわかんないんだ、どうなっているのか。ジャン−リュックさん本人はこの間、「おしまい!店も手放したし、これからはもっとゆっくりやるよ。パンがほしかったらラボのブザーを鳴らしてよ!」とやけに晴れ晴れした顔で、語っていたっけ。)の美味パンを齧りながら、アントレを待ちわびる。20時前の店内は、既にあらかた人で埋まり、そこかしこでいい匂いがしている。あー、おなかが刺激されるね。

イカのグリルアントレは、チビイカをグリルしたものに、トマトやアカピーマンのトロトロを添えたもの。(名前、忘れちゃったね。あまりに前のことで、、。)サックリとした歯ごたえの新鮮なイカをサッとグリルして野菜のトロトロを添えただけなのだけれど、その潔い火入れと味付けに拍手。ピマン・デスペレットの辛味と揚げパセリの香りが興を添える。いいねえ、男らしいというか気風のよい料理だね。気取らず飾らず、素朴に美味だ。

仔豚ちゃんと野菜たちプラはいとしの仔豚ちゃん。ジューシーで香り高い仔豚をあっさり焼いたものに、たっぷりの早春野菜と、忘れちゃいけないジャガイモピュレが添えられる。噛み締めるほどに甘い汁が口の中に広がる仔豚ちゃんにうっとりしては、トロトロトロリンなピュレを口中に満たして恍惚状態。なめらかでトロリンなピュレおいし〜!同じピュレ好きの友達と2人、もちろんピュレはお代わりをリクエストする。素朴で丁寧なピュレ、なかなか上出来。私はいつか絶対に、ピュレ評論家、もしくはジャガイモ料理評論家になろうと思う。それくらい、ジャガイモが好きだ。

おやつはパス。とてもとても食べられないくらい、料理の迫力がすごい。とは言っても、バスク名物羊のチーズと黒サクランボのコンフィチュールもおいしそうだし、ガトー・バスクも食べてみたい。次の機会にね。とは言っても、これだけ料理がおいしいと、それに没頭しちゃって、なかなかおやつに行くことはないだろうなあ。

甘いもの、大好きだけれど、レストランのデセールについては、ジルちゃんという最高のレストラン菓子を作ってくれる人を知ってしまっているだけに、どうせジルちゃんには敵わないから、とおやつ、パスしちゃうときが多い。こういうビストロは、ジルちゃんがいる高級レストランのお菓子と比べられはしないのだけれど、ビストロ系素朴菓子ならそれはそれで、ミュロさんや青木さん、その他諸々の、街角お菓子屋さんの作品の方がおいしかったりしちゃうしね。恒常的に家に散らばっている街角お菓子屋さんの素晴らしいお菓子たちのことを考えると、店で食べずに家に帰って食べよ、になってしまう今日この頃なんだ。

カフェとトリュフを楽しみながら、うさぎの赤ん坊が5〜6匹は入っていそうな、膨れ上がったおなかをポンポンとたたいてみる。いい音するねえ。美味しいものが入ったおなかはとってもいい音がする、と発見し、なんだかとっても嬉しくなってしまう夜でした。


mer.17 mars 2004



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