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グルマン・ピュスのレストラン紀行


シェ・ラミ・ジャン(Chez L'Ami Jean)

「シェ・ミシェル」と「シェ・ラミ・ジャン」は、才能ある若いシェフが抜群においしい地方料理を気の置けない雰囲気の中で食べさせてくれる、今のパリを代表する屈指の人気ビストロだ。前者はブルターニュ料理、後者はバスク料理を売りにしてるけど、実は2人とも出身はブルターニュ。ジャンの方はもともとバスク料理屋さんだったので、そのままバスク料理を名物に据えている。双璧といえる2軒を、どういう基準で今日はこっちに行く、と決めるかは難しい。定休日が重ならないときは決めるのもラクチンだけれど、両方とも営業している日は、どっちに電話をするかいつも真剣に悩んでしまう。ま、電話したところで、コンプレ(満席)!って言われることもあるんだけどね。

土曜日の夜。ミシェルはお休みなので、悩むことなくジャンに電話。早い時間ならOK、といわれ、さむーいさむーい12月の夜、7時の開店時間に一番乗りする。予定だったのに、一番じゃなかった。既にもう2組もお客様がいる。いい匂いだなー、なに食べてるんだろう。すごぶる嬉しいことに、初めて、厨房真横のテーブルをもらえる。やったー!いつか座ってみたかったんだ、サーヴィスカウンター越しに厨房を覗けるこのテーブルに。嬉々として厨房が一番よく見える椅子にさっさと腰を下ろして、厨房で、まだのんびりとしているシェフの視線を捉え、最高の笑顔を作ってボンソワー。

背が低くて髪が黒くて彫りのはっきりした顔立ちをしたステファン、好きなタイプ♪料理もサーヴィスも雰囲気も、甲乙つけがたいミシェルとジャンだけれど、シェフの姿かたちだけで勝負するなら(性格じゃないよ、顔かたちだけだよ)、私はジャンのステファンに軍配を上げちゃう。ミシェルのティエリは、顔が長くて背が高いんだもん、、、。背が低い人、好き。髪と目が黒い人も好き♪まあ、そんなことはどうでもいい。キビキビと厨房で立ち回るステファンの姿に見とれながら料理を選び、ジュランソンの白で乾杯!さあ今日は、どんなおいしいものを満喫させてくれるかな〜。

サラミ類の盛り合わせ。ぐっさりさしたナイフが、いかにも!アントレには、シャルキュトリーの盛り合わせと田舎風パテをオーダー。ここ、量が多いから、5人で2品だけ頼もう、と頼んだのだけれど、運悪くというかなんというか、パテやサラミ系、全て丸ごとで出されて、好きなだけカットするシステムだった。お皿代わりのまな板を筆頭に、次々といろいろなものが運ばれ、気がつくとテーブルの上は満員御礼。立錐の余地もない有様。カゴには7〜8種類のサラミやブーダン、アンドゥイエット。まな板に乗った生ハムのスライス。テリーヌ型にそのまま入った、ジビエのパテ。これだけはカットされて皿に乗って出てきた田舎風パテ。それにコルニッションの大きな壺、ヴィネガーでマリネしたキノコ。

うひゃ〜、どっから食べよう!と、ワクワクソワソワ。ガッチリした折りたたみナイフでサラミを分厚く切ってパクン。う〜ん、美味!バスク料理のお約束、ピーマン・デスプレットを振って、ジビエのパテをバクッ。強烈おいしいっ!生ハムを手でつまんで口にポイッ。いい香りだねえ。コルニッションでお口直し。スッパイ!田舎風パテ。あ、これは普通の味かな。チョリソー。口の中で味が滲みていくるねえ。

あれもこれもと、賑やかにいただく豚肉加工品たちは、どれも大地の雄々しい味がしておいしいけれど、傑作はジビエのパテだ。プラもあるからちょっぴりね、なんてカットした分は2口であっという間に食べ終わり、改めて分厚くカットして自分のまな板に取り分ける。プージョランのパンを相方に大きなパテをむしゃむしゃ。思いがけずにすばらしい相性を示す、ジュランソンのほんのり甘い香りのする白ワインをグビビ。ふわぁ、幸せって、こういうことだ〜。

田舎風テリーヌと生ハム羽ものジビエ、つまり、山鳩ややまうずら、シギのたぐいを使って仕立てたパテは、本当に傑作!野趣溢れる香りを信じられないくらい上品にまとめてあって、いわゆるジビエ臭さはゼロ。かといって、家禽では絶対に出せない大地の風味がぎっしり詰まっている。すごいや、これ。この店で今まで食べたものの中での一番の料理かも。あ、でもピュレがあるか、、、。

シェフ、ステファンに、既にこの日何度目かになるブラヴォーを改めて伝え、泣く泣くジビエパテその他豚ちゃんたちとお別れ。ほんとはもう一切れジビエパテを食べたいけど、次のお皿もあるしね。いつまであるの?とセルヴールに聞くと、12月いっぱい、上手くすれば1月もあるかもね、と。ぜひぜひ1月も作ってください、と両手をよじり合わせる。

鴨のコンフィちゃん!おーいしいったらおいしいプラは、前々から一度食べてみたかった、カモのコンフィ。オーソドックスな料理だけれど、それだけにステファンが作るコンフィに興味があった。期待を裏切らないできばえに頬がゆるむ。パリンパリンに焼かれた表皮の内側に、なんともいえない甘味を持つ脂がじっとり。肉はほんわかかれんな風味を持ち、王道のコンフィという感じ。付け合せのジャガイモのリソレ。これもとっても美味付け合せは、小さなジャガイモを丸ごと焼いたもの。とってもおいしいけれど、ピュレじゃない、、、、。

と言うわけで、ピュレもちょうだい、とリクエスト。すぐさま、ココット入りのピュレがやってくる。ヤホー!みんなに味見させ、そのおいしさにうならせ、すっかりゴキゲンな私。ね、ね、ステファンのピュレ、素敵でしょう!?身も心もとろけちゃうでしょう?ロビュションのピュレとはまた違う、ビストロ系ピュレの傑作品だよね。仔豚の胸とほっぺ(胸、相変わらずよいねえ)、仔牛のレバー(生々しい焼き具合に血が騒ぐ)、仔牛の舌(すばらしいっ!!!!)、仔羊のモモの煮込み(トロトロで素敵)と、片っ端からみんなの料理も失敬して、ステファンの世界を満喫する。

デザートはプリン。おいしかった勢いに乗って、初めておやつもオーダー。コップに入ったなんてことのない普通のプリンが、なんとも素直においしくて、またまたステファンに、うっとりとしたまなざしを送ってしまう。

気がつくと、店内は満員御礼。2回転目のテーブルも出始め、バーにはウェイティングの人がたくさん。厨房ではステファンをはじめみんながテンポよく忙しそうに動き回っている。オーダーに追われながらも、声をかけてくれるステファンに、この日もう何度目になるのか分からないブラヴォを伝えて、ありがとう、またね。

外は相変わらず凍えそうな寒さだけれど、お腹いっぱいにステファンのゴハンを詰めた体には堪えないもんね!大風邪をひいて散々な2週間だったけれど、これを機に、きっと元気になるに違いない。あー、おいしかったー。また、おいしい幸せを味わいに、この店に来よう。願わくば、羽ものジビエパテがまだあるうちに、、、。


sam.4 dec. 2004



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