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グルマン・ピュスのレストラン紀行


オステルリー・ジェローム(Hostellerie Jerome)

この世の果てのような山道をひたすらに走り飛ばし、アントワネットちゃんの棲家をちらりと視界にかすめながらグラースを抜け、コートダジュールの海岸線をすっ飛ばして、イタリア入り。ヴァンテミリアで道を迷い、この世の果てのそのまた果てのような、仙人が住んでいてもおかしくないような山奥に入り込んだあげく、やっとのことでホテルに到着。海辺の別荘といった感じの、静かなホテル・レストランで、イタリア気質の従業員に囲まれ、ブラーヴォ、イタ〜リア!と、イタリア料理のシンプルなおいしさに感動のひとときを過ごす。波の音を聞きながら黄昏てゆく太陽を眺め、笑っちゃうくらいに単純ですばらしい味のイタリア料理に舌鼓をうち、トロリと濃厚なアスティでデセールを締めくくった後は、海辺に集まる蛍を手に乗せて遊んだり、日本人のキュイジニエさんとおしゃべりしたりで、夜は更けていく。

翌日、マントンで遊んだ後、またもイタリアに戻って、ヴァンテミリアにあるもう1件の1つ星レストランでランチ。またもや、シンプル料理の底力を見せつけられ、感動を胸にイタリアを後にする。マントンからわずか1キロ。なんだってまあ、今までマントンに来た時に、イタリアに食事に行かなかったんだろう。もうこれからは、マントンに遊びに行く時には、ご飯はイタリア、がマストだ。その辿り着きかたといい、食べたものといい、サーヴィスの質といい、まるでフランスと違うイタリアで、夢のようなひとときを過ごして、再びフランスを食べる旅に戻る。

明日で終わりの今回のグルメ旅行。実は今夜のホテル・レストランを、私は一番楽しみにしていた。

「オステルリー・ジェローム」。モナコの北に連なる山を登ったところにある小さな村、ラ・チュルビに佇むレストラン。一昔前、「オステルリー・ジェローム」は人気の高い高級レストランで、夜毎、モンテカルロに集う世界中のVIPがやってきては賑わっていた。時代は移り、この伝説的なレストランが売りに出されたのは、3年か4年前だったか。手に入れたのは、ブルノー・シリノ。

去年の夏の終わりだった。「ル・ジャルダン」で、楽しく食事をしている時に、ジョスランが教えてくれたのは。
「コート・ダジュールに惚れてるの」そう言った私に、ジョスランが嬉しそうにささやいた。
「だったら、ラ・チュルビに行かなくちゃね。ここの前のシェフがホテル・レストランを開いているんだよ。とても才能があるシェフなんだ。ぜひ、彼の料理を食べなくちゃ。オープンと同時に一つ星を取ったんだ」ワインの酔いとジョスランの魅力にボーッとなりながらも、頭の中にしっかり刻み込んだ。ラ・チュルビとブルノー・シリノ。

あれから10ヶ月。ようやくやってきたコート・ダジュール再訪の機会に、アントワネットちゃんのところに行きたい誘惑を必死に振り切って、「オステルリー・ジローム」の部屋とテーブルを予約した。

rosesピトレスクな可愛い細道に、小ぢんまりと佇むホテル。すぐに部屋に案内されて、彼方に海を望む窓を開け放ってほっと一息。ついたてやランプ、ライティング・デスクなどの調度品が、なんだかとってもチャーミング。広い部屋でウェルカムフルーツかじりながら、のんびりソファでくつろぎのひととき。ゆっくりお風呂に入って、ちょっとうとうとし、暑かった昼間のほてりをすっかり落としてすっきりした気分で、したのレストランに降りる。

天井に描かれた絵が可愛らしい、こぢんまりとしたサル。すでに半分以上の席がうまっている。街の住人らしきカップルが一組いるほかは、みな、モンテ・カルロのジェッティーな喧燥からのがれて一夜の静けさを求めに来たらしい、見事に着飾ったお金持ち風のお客様ばかり。リゾートのホテル・レストラン、というイメージで、サマードレスで降りてきちゃったけど、もちょっと華やかに装ってもよかったかもね。シンプルで朴訥なサルの内装に、ジェット・セット風のお客さまが、微妙なコントラストを作り出していて面白い。

かわいいセルヴールくんがアペリティフの注文に来る。
「ちゃんとしたベッリーニ、出来るかしら?」今回の旅で、毎晩のようにベッリーニを求めているのに、まだ一度も飲めていない。「トロワグロ」では“まだ時期じゃないんです。来月いらしてくださったら、とびきりのベッリーニを作ってさしあげられるのですが”。エルヴェのところでは、とっととシャンパーニュが出てきちゃって頼みそこなった。「バスティード・ドゥ・ムスティエ」では、“できません”の一言だったし、イタリアの2件にいたっては、“ごめんねー。できないんだー。でももっとおいしいもの飲ませてあげるからさあ!”って感じ。そんなこんなで夜毎ベッリーニに振られつづけ、すっかり意気消沈している私に、かわいいセルヴールくんは控えめな笑顔で答えた。
「ごめんなさい。ベッリーニってどんなお酒ですか?知らないんです。作り方教えてくれたら作りますけど」

なーんていい子なんでしょっ!知らないけど教えてくれたら作ります、だって。なかなかこんなこといってくれるセルヴール、いないよねえ。ま、もっとも、ベッリーニを知らないセルヴール、というのもなかなかいないと思うけど。彼を混乱させないように、手抜きベッリーニの作り方を教える。
「あのね、よく熟れたモモを潰して、シャンパーニュで割ってくれればいいわ」
「分かりました。やってみます」

程なく目の前に運ばれたチューリップには、シャンパーニュが注がれた上に、潰したモモがぷかぷが浮いてるものだった(笑)。あはは、なんだかかわいいなあ、これ。ニコニコ眺めていると、件のセルヴールくんが心配そうに聞いてくる。
「あのお、これでいいんでしょうか?」
「ええ、大丈夫。わざわざ作ってれてありがとね」ほっとしたような笑顔になるセルヴールくん。
「よかった。あ、今スプーン持ってきますね」確かに、プカプカ浮いたモモをかき混ぜるのにスプーンがあるとありがたい。よく気がつくいい子だね。

手にちょうどいいこぶりのカルトを取り上げる。表紙に描かれた絵が、カボチャだったりトマトだったり、それぞれみんな違ってる。メートル氏に聞くところによると、この街に住むアーティストに描いてもらったとか。なかなかチャーミングなカルトである。

ユニークなベッリーニ飲みながら、想像していた通りに魅力的な料理の並ぶカルトに喉をゴロゴロならす。う〜ん、どれもこれもいい感じぃ〜。アントレに南仏野菜のサラダ、プラに仔羊のロティを頼んで、カルトを閉じる。いいな、このカルト、欲しいなあ。

canard「うわあ、好きな匂い!」目の前に置かれたアミューズに、喜びの声を上げる。鴨の挽肉をパイ包みにしたもの。甘く香ばしいパイの香りに惹かれてさっそくナイフを突き立てると、ふわりと今度は鴨肉の逞しい肉汁の香りが飛び出してくる。トリュフの味がついたソースに絡めていただくパイ包みのオーソドックスな美味しさが、鼻孔と舌をくすぐる。おーいしーっ!ジョスランが言った通りだ。シリノさんの料理は、私の好みにかなり近い。添えられたサラダ菜達も一枚一枚すてきにおいしく、アミューズとはとても思えない完成度の高い一皿。このままポーション大きくして、プラでいただいてもいいくらい。

legumes「エ・ヴォアーラ!南仏野菜のサラダです」目の前に現れた野菜達を目にして思わず目を剥く。うっそ、これで1人分!?インゲン、ソラマメ、ニンジン、セロリ、アーティチョーク、ポワロー、ジャガイモ、キノコ、花つきのクルジェット、アスパラガス、生アーモンド、サラダ菜、それにトリュフのスライス。(息継ぎしないで全部一気に言えるかな(笑)?)これだけの材料をふんだんに使ったサラダが、どーんと目の前に座ってる。うっひゃ〜、これはすごいね。すごい量だけど、おいしそー。ではでは、いっただっきまーす!

サラダの中央に飾られた花とハーブがなんともかわいらしい。目を近づけてよーく見ると、なんとこの花とハーブに水滴がたくさんついている。キラッキラと光る水滴がなんてオチャメ!カルトといい、この花のあしらいといい、シリノさん、オチャメだなあ。

ワインを注いでくれるもう1人の可愛いセルヴールくんに笑顔を向ける。
「この花の飾り方、すっごくかわいい。水滴がチャーミングでとてもすてきだわ」にっこり笑顔が返ってくる。
「メルシ、マダム。シェフに伝えておきますね、マダムがいたく気に入っていた、って。ニンニクの花なんですよ、これ」へえ、ニンニクの花って、こんな可憐だったんだ。それにしても、従業員がいいなあ。久しぶりに大当たりだ。ふたりのセルヴールくんたちは、そろってボー・ギャルソンでいい子だし、1人いるセルヴーズちゃんも、とても優しくて気が利くんし。強いて言えば、メートルがちょっと、、、。こののんびり優しい雰囲気の中に、ちょっと溶け込んでないんだよね。

水滴を落とさないようにそっとニンニクの花を端によけて、サラダを食べはじめる。どの野菜も味も香りもしっかりと濃くて、おいししいったらおいししいよ。それぞれの野菜が持つ甘みが微妙に違っていて楽しいの。全体をまとめるヴィネガーも、酸味が苦手な私にちょうどいいくらいの柔らかさ。これはいいねえ。ムスティエで食べた、一見無造作な、でもすごく計算され尽くしたエリートサラダと違って、一見無造作な、でもすごく愛情がこもった優しいサラダ。パクパクパクパク、どんどんサラダがなくなってく。野菜好きなMちゃんに、たっぷりおすそ分けしてもなお、1人にはあり余るほどに気前がいい夏のサラダだ。

Mちゃんの頼んだイタリア産の大きなエビのポワレがまた私の好みで、シリノさんとの相性のよさをまたまた確認。あとで会えるの、楽しみだわ。どんな人なんだろう。

今回の旅では、お酒はほとんどTくんにまかせっきりだったけれど、今夜一本目のお酒は私が選んだ。シャトー・グラン・ソイユの白。「ル・ジャルダン」のソムリエ、ステファンお勧めの、コトー・デクスのお値打ちワイン。ステファンが教えてくれたすぐ後にリュベロンにドライブ旅行に行った時、訪ねる予定にしていたのだけれど、上手く見つけられずに結局行けなかった。ずっと飲んでみたいと思っていたお酒は、さすがは私の好みをよく分かっているステファンが勧めるだけあって、薫り高く、さっぱりした中にもちょっと臭みが感じられる、バランスのいいお酒。「ブラヴォー、ステファン!」と心の中で感謝する。

agneau「ぅうっそぉ〜!?冗談でしょ〜?」思わず脱力した笑いが漏れてしまう、プラの登場シーン。どおだー!とばかりに目の前に鎮座したのは、アニョーの背肉の部分が5切れ。5切れだよ、5切れ!日本のフレンチならば、間違いなく2切れ。フランスのレストランでも3切れ、多くても4切れだろう。驚くのはまだ早い。肉の数に合わせなくては、とガルニ(付け合わせ)達も責任を感じたのだろうか、トマト、ナス、花つきクルジェット、赤ピーマン、アーティチョーク、5種類の野菜のファルシがアニョーを取り囲んでいる。すごいなあ、この量は。これ全部食べきる人の顔が見たいよ。と、まわりのテーブルを見渡すと、みんな嬉しそうな顔してお皿をきれいにしている。さすがフランス人、いざという時の食べる量は半端じゃない。

そう、このレストラン、フランス人のお客様ばかりで外国人が全然いないのには驚いた。まがりなりにも世界中から人が集まるモナコのそばのレストランなのに。これもまた別の意味で普通のレストランではあまり見受けられない(というか許されない)、ケイタイをONにしているお客様が結構いる。電話が鳴るんだ、これがまた。ケイタイなしでは生きていけない、ジェット・セットが集うレストランならではだ。

素朴な肉のおいしさが嬉しい料理。柔らかく薫り高い仔羊ちゃんは大好物だ。嬉々としてほおばるけれど、どうあがいても最後までは食べきれない。最初のサラダ同様に、ぎゅーっと味の濃い野菜のファルシも、とてもわたし好みでいい感じ。こちらはお腹が悲鳴を浴びているのに、舌がもっと食べたがるので、ついつい全て食べきってしまう。

ふううう〜、よく食べたなあ。デセールが運ばれてくる間に、ちょっと休憩。好みの料理を食べた時には、どんなにお腹がいっぱいでも不思議と辛くないんだよね。タベルの赤を飲みながら、デセールの到着を待つ。

「ミルフォイユはマダムですね?」ベッリーニ・セルヴールくんが、かいがいしくフォークやスプーンを並べてくれる。

「うーん、、、、」
「どしたの、ぴゅすちゃん?」
「んー、あのさあ、あのセルヴールくん、前はどこで働いてたんだろう?」
「どこかで会ったことあるの?」「ううん、多分初めて会った人だと思うんだけど、なんか、こんな田舎のレストランのセルヴールにしては、スマートすぎると思わない?やることソツないし、上手だよ。それに、なんだか彼のサーヴィスの仕方って、どこかで受けてる気がするのよね。でもあのかわいい顔だったら、覚えてるでしょう、私。会ったことはないと思うの。なーんか、気になるのよねえ」

デセールを運んできてくれるベッリーニ・セルヴールくんに聞いてみる。
「ここいつから働いてるの?」
「2年くらい前からです」
「その前は?」
「パリのレストラン」やっぱりね。田舎のレストランだけじゃなくて絶対にパリのいいところでやってた、って感じだもの。
「どこのレストラン」
「ル・ジャルダンです」なーんだ!どおりで、彼のサーヴィスにデジャ・ヴュを覚えた訳だ。なんてことない、「ル・ジャルダン」でジョスラン達が提供してくれる、優しく丁寧で上品なサーヴィスと同じだったんだ。

「そうなんだ?どうりで、知ってる感じのサーヴィスだな、って思ったわ。私、時々行くのよ、「ル・ジャルダン」。でも通いはじめたの1年前からだからもういなかったのかな?ムシュ、、?」
「ピエールです。どうぞよろしく。僕があそこにいたの、もう2年も前ですから。コミだったんです」
「そうなんだー?ジョスランとかステファンとかジロームとか、みんな優しい人達ばかりで、いい職場だったでしょう?」
「とても。でも、シェフについて僕もこっちに来ちゃったんです。ステファン、ちょうどこの間来たんですよ」
「知ってる知ってる。この間食事に行った時に話してくれたわ」
「このテーブル、そう、ちょうどマダムの席にステファン座ってましたよ」
「あはは、ほんと?偶然だわね」ステファンになついていたらしいピエールくん、懐かしそうに「ル・ジャルダン」の話をしてくれる。

さて、デセールの時間だ。カルトのデセール欄を見た瞬間から注文するものは決まってた。「フレーズ・デ・ボワ(森イチゴ)のミルフォイユ」。「え、そんなグラス、作ってるの?それも味見したーい」とリクエストしたヴェルヴェンヌのアイスクリームが別のお皿に添えられて、愛するフレーズ・デ・ボワちゃんたちが賑やかに目の前に運ばれてくる。たっぷりのフレーズ・デ・ボワをサックリパイにクリームと一緒に挟んだミルフォイユ。つけ合わせはやっぱりグラス・ヴァニーユだよね。
「ボナペティ、マダム」ピエールがチャーミングな笑顔を向けてくれる。くうう、ジョスランといい、このピエールといい、「ル・ジャルダン」は笑顔がすてきな優しいセルヴール養成所か!?

millefeuilleこの旅行のテーマの一つだったフレーズ・デ・ボワはニース近郊が名産地。土地の利とはまさにこのこと。濃い甘みと軽い酸味が見事に調和した、すばらしいフレーズ・デ・ボワを嬉々としてほおばる。さっくり焼き上げられた香ばしいパイに、上品なクリームのバランスが、また見事。時折グラス・ヴァニーユで喉を潤し、口直し代わりに、こちらもやけに上出来な香りのいいヴェルヴェンヌのグラスを食べながら、至福のひととき。高かった期待にしっかり答えてくれる、ううん、期待以上に好みなレストランに、ちょっと感動。

「ぴゅすちゃん、これ食べてみて!おいしいわよ、とっても!」これ以上の感動は必要ないくらいに幸せなのに、Mちゃんがさらにまた感動をおすそ分けしてくれる。Mちゃんが頼んだフルーツサラダに入っていた、黒オリーヴのコンフィ。これがまた、うっきゃ〜!的なおいしさなのだ。ねっとりと飴化したオリーヴは、微妙に甘く微妙に塩気が残り、なんともまあ、、、なお味。さっそくピエールに「おねが〜い♪」
「あ、やっぱり気に入りました?だと思ったんです。セロリのコンフィと並んで、うちのスペシャリテなんですよ。もうちょっとしか残ってないんで、これだけでいいですか?」と、貴重なコンフィを小皿に入れて持ってきてくれる。
「メルシ、ピエール。トレ・ジャンティ!」

夜も更けて、お客様もみんな引き上げた。
「シェフに会いますか?」と、もう1人の可愛いセルヴールくん、ジュリアンが誘ってくれる。二つ返事で席を立ち、厨房へと向かう。
「どんな人、ムシュ・シリノって?」
「うーん、、、ああ、ちょうどこんな感じです!」ジュリアンの指が指しているのは、厨房の手前の飾り棚にたくさん置かれた、いろんな豚のオブジェの一つ。コロコロしたかわいい豚がコック帽をかぶっているもの。
「え?これ、、?」思わず、???の顔をしてしまう私たち。

「シェフ、お客さまでーす!ニンニクの花の水滴を気に入ってくれたマダム達!」厨房に入っていくジュリアンを追いかけていくと、そこには、小さくてコロコロした、優しそうな南国の顔をしたシェフが立っていた。なーるほど!あの豚にそっくりだ。視線で確認しあう、私たちである。

シシリアとアルザスだかの血が混じったシリノさんは、一見するとイタリア人。クルクル回る目がオチャメな、なんだか童話に出てくる小人みたいな感じ。ちょっとゲラールに似てるかなあ。彼も妖精じみた可愛らしさがあったけど、シリノさんもそんな感じ。髪も黒いし日焼けしているので、ちょっと濃い目の妖精かな。下がり気味の目や口元が、ちょっとかずくんに似てるかもしれない、りーり。

「ル・ジャルダン」のこと、今のレストランのことなど、いろいろおしゃべりして、楽しい夜の締めくくり。お部屋のアンティーク家具や食器などは、シリノさんが蚤の市巡って見つけてきているのだそうだ。パリにもちょくちょく来ては、クリニャンクールなどに通っているらしい。センスいいよねえ。特に、あのニンニクの花にはまいったね。
「ずっと来たかったの。やっとこられて本当によかった。しかも、とてもとても私の好みのレストランで、ほんと嬉しかったわ」
「気に入ってもらえて、よかったよかった。いやあ、わざわざパリからこうやって来てくれるなんて、嬉しいねえ」

お休みの挨拶かわして部屋に戻ると、程なくノックの音。ドアを開けると、クーラーに入ったテタンジェとフルートを3つ抱えたジュリアンがにっこり立っている。
「シェフからです。お休み前にどうぞ」遠くに見下ろす真っ黒な海とキャプ・フェラの夜景を窓越しに眺めながら、キリリと冷えたテタンジェで、すてきに楽しかった夜に乾杯するのでした。

翌日の朝食の後、部屋に戻って歯磨きしてると、なんとなくノックの音が聞こえたような、、。気のせいだろうと思いながらも念のため、とドアを開けると、朝食のテーブルにMちゃんが置き忘れたカメラを手にしたジュリアンがにっこり。左手でドアノブ握って、右手でカメラ受けとって、口に歯ブラシ突っ込んだまま、もぐもぐメルシー。ちょっと恥ずかしい朝なのでした。

コート・ダジュールに行く楽しみが、また一つ増えてしまったね。「オステルリー・ジェローム」は、ブルノー・シリノという新たなシェフを得て、かつての名声を取り戻したのだ。


mer.13 juin 2001



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