この春から通っているワイン・バー「メラック」。ローヌやラングドック地方の、気のおけないいい感じのワインをたっぷり扱っている、すごく質のいいワインバー。ハム類やチーズ、そしてパンが絶品。大いに気に入って、よく遊ばせてもらっている場所。
ワインバーにふさわしく、店の外壁は、店の中ににょきりと生えている葡萄の木の蔓に覆われ、秋にはちゃんと葡萄がなる。
「毎年9月に、ヴァンダンジュ(葡萄の収穫祭)をやってるんだよ。地区をあげてのお祭りなんだ。ぜひ遊びにおいでね!」初めてこの店を訪ねた4月、オーナーのメラックさんがこう言った。ヴァンダンジュ?パリで?いいねえ!ぜひぜひ参加しますとも!以来、とっても楽しみにしていたヴァンダンジュの日が、ようやくやってきた。
8月の酷暑の名残を引きずっているのか、パリの9月にしてはとても暖かな土曜日。ポカポカ太陽を気持ちよく浴びながら、葡萄色の服を着て、「メラック」へと赴く。
店のある通りは、警官が出動して完全封鎖。ブラスバンドの音がにぎやかに響いてる。すごいなあ、大規模なんだ〜。話をたっぷり聞いていたし、写真もたくさん見せてもらっていて、どんな雰囲気かはある程度分かっていたはずなのだけれど、実際にその場に足を踏み入れたとたん、おおいに盛り上がった雰囲気にちょっと気おされる。うわあ、なんだかとっても楽しいお祭りだぞ。
店の前の道路に、簡易テーブルと椅子がずらりと並べられ、もうすでに鈴なりの人々で押すな押すなの大賑わい。テーブルについている人たちは、ワインとパテやハムなどでランチタイムを楽しんでいるし、テーブルについていない人たちは、葡萄を収穫したり、音楽に合わせて踊ったり。
飲み物食べ物を求める人たちで大混乱の店内に紛れ込み、メラックさんとご挨拶。無事にワインとハム、チーズをゲットして、運よく見つけた3つの席を陣取って、ヴァンダンジュのお祭り騒ぎに溶け込む。
酒飲みの友達二人は、梯子に登って葡萄を摘む。収穫された葡萄は樽に入れられ、子供たちが足で踏んで汁を出す。この汁はきちんとここのオリジナルワインになり、翌年のヴァンダンジュで、宝くじの方式で参加者に当たる。宝くじの売り上げは、「メラック」のある11区の区役所に寄付。区長ももちろん顔を出している。
昨年の葡萄で作られた20本弱のワインが、くじ引きでどんどん配られていく。3枚買ったくじの数字とにらめっこして、次こそ!こんどこそ!と当たるのを夢見るが、惜しいところで全部ハズレ。ちぇ、残念。また来年ね。ワインのほか、残念賞として、毎年ナンセンスなプレゼントが用意される。仔豚一頭だったり、洗濯バサミ100個だったり。今年は、インゲン豆20キロ(笑)。当たった人は、その場で他のみんなに少しずつインゲン豆を配っている。
音楽はいよいよ盛り上がり、ワインをたっぷりおなかに詰め込んだ人々も、興に乗って、ダンスのステップにも磨きがかかる。大人も子供も、大いに食べて飲んで盛り上がり、暖かな秋の週末を、葡萄を口実に楽しんでいる。なんだかいいなあ。のんびりのどかで楽しいお祭り。こんなお祭りなら毎日参加したいよ。
よく飲んでよく食べて、ご機嫌な午後を過ごす。「メラック」はやっぱりいいワインバーだ。来年こそ、ワインが当たりますように!
sep.2003