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グルマン・ピュスのレストラン紀行


レストラン ケイズ・パッション(Restaurant Kei's Passion)

ロケ、無事に終了!雪が降ってものすごく寒くて、とてもコートダジュールにいるとは思えない日もあったけど、なにはともあれいたって順調に撮影をこなし、最終日はフリーになった。

ポカポカ陽気の中(遅すぎる、、、)、ニースの町外れにある、石臼でオリーヴをひいてオイルにしている工場というかアトリエを見学。ゴローンゴローンと石がすれる音と、タプナードをもっと強烈にした弾けるようなオリーヴの匂いの中、「よく来たねぇ、まあなにはともあれこれ食べなぁ」と、優しい笑顔のオイル職人が食べさせてくれたのは、絞り残ったオリーヴの種を燃料にしたストーブの熱で焼いたバゲッドのスライスにニンニクをこすりつけ、搾りたての新鮮オリーヴオイルをべちゃべちゃにかけて塩をふったもの。このおいしさときたら!!!あきれるくらいにシンプルだけど、背筋が震えるくらいおいしい。「おいしいか〜い?じゃあ、もう一切れねぇ。せっかくだから、イタリアの赤ワインも飲んできなぁ」自然発泡している赤ワインをグビグビあおって、強烈おいしいニンニクオイルパンにかじりつく。まいったなあ、、、。この滞在中、一番おいしい食べ物、これかも(笑)。

昼前からニンニクとワインの香りをプンプンさせてすっかりゴキゲン。取材先から借りていた商品を返し、市場近くのお気に入りパン屋さんでカルナヴァルのお菓子を買い込み食べながらお散歩。あったかい陽気に気をよくして、前半泊まっていた超高級ホテル「パレ・ドゥ・ラ・メディテラネ」のテラスのプールを、ジェロームにお願いして使わせてもらって、プカプカプカリン。誰もいないプールを独り占め。文化財に指定されているホテルの真っ白な柱が目にしみる。頭上にはこれぞコートダジュール!といわんばかりの真っ青な空。折りしも今日はNATO会議が開かれてて、警備のヘリコプターが時折青空を横切っていく。極楽だ〜。しっかり泳いでニンニクの匂いを追い出し、テラスでウトウト寝そべって、ホテルに戻ってゆっくりバスタイム。体調はすごぶる万全。最後の夕食に向かう準備は完璧に整った!

2週間のニース滞在の最後の夜は、もちろん松嶋さんのお店です。2週間前、到着した日のランチに、きゃー!っていうくらいすばらしい味のルー(地中海スズキ)のタルタル&細かく切ったクルジェット&ブイヤベースのジュレと、コラン(タラの一種)をボンゴレとバジルで味付けしたのにフライにしたアーティショーを添えた料理を食べさせてもらった。きれいな火入れと正確な味付けが施されたコランは陽気なおいしさで、1.5人前分あるんじゃないかな?という量がちょっと気になったけどもちろん完食。翌日は、取材しながら撮影料理を味見。大好きなアニョーちゃんと、ドラード(タラ)のポワレ。編集者と2人、「おいしいですねっ!」を連発しながら、味見どころかほとんど全部食べてしまった。そのあとは、松嶋さんのゴハンを食べる機会がないまま日があっという間に流れ、ついに最終日。今夜は、松島さんの料理を堪能するぞー!

バーにアペリティフ飲みにおいでよ。というジェロームの誘いに二つ返事でいそいそと、パレのシックなバーで優雅で幸せなアペリティフタイム。ジェロームの厚い歓待を受けながら、女3人、あれやこれやとバーのオリジナルカクテルを片っ端から試しまくり。ふと気づくと、約束の時間を大幅にすぎてる。あん?もうこんな時間?楽しい時間って本当に早く過ぎちゃうね。

ジェロームとお名残を交わし、ホテル裏にある松嶋さんの店に向かう。既に足は千鳥気味。すっかり出来上がっちゃたよぉ〜。お待たせしてしまっていたカメラマンさんにごめんなさいして(彼は、アペリティフタイムに間に合わなかったので、レストラン直接集合だった)、いよいよ宴の始まり。シェフ・ケイ、どうぞよろしくお願いします。

アミューズ群取材先でもらったローズシロップを持ち込んで、シャンパーニュにたらしてもらって乾杯!サランさん風ミニトマトの飴がけやローズマリー入りケークらのアミューズ群、いつもながらに充実。5種出たアミューズはどれもオリジナリティがあっておいしくて楽しい。「じゃあ、どれが一番よかったか、せーのっ!で指差しましょう」と4人で投票した結果、ミニトマトとアンチョビがそれぞれ2票を獲得してトップ。ちなみに私はアンチョビに投票しました。

カリフラワームースと甲殻類のジュレ、ウニアミューズの後の一皿目は、「カリフラワーのピュレ&ウニ&甲殻類ジュレ」。冷たくあっさりかつコクのある料理で、インパクトが強くていいよね。プレゼンもかわいいし。前に来たときは、カリフラワーでなくてカボチャで作ってたっけ。あれもおいしかった。

サンレモエビとアスパラガス、マントンレモンさくっと、一皿目を平らげ、次の料理を待つ。運ばれてきた皿を見て(と言うか既に、見る前から匂いをかいで)、やったー!ばんさーい!と拍手で料理を迎える。シリノさんのところで食べて以来、どうにもこうにも好きでたまらない、「イタリアはサンレモ産のエビのポワレ、走りのアスペルジュ」。ほんっとうにおいしいんだよね、このエビ。シリノさんの料理や今夜の料理みたいに殻を外してポワレするのもよし、松嶋さんが時々食べさせてくれるように、丸ごと串刺しにして焼きエビにするもよし。甘味が強くジューシーで、うっとりする。

マントンでレモン園を取材したときにもらってきたマントンレモン(マントンレモンは、フランス一すばらしいレモンとして有名)をさっき寄っておすそ分けしておいたら、そのレモンを早速使ってくれてる。エビの下におかれた焼いたマントンレモンのかぐわしい酸味とエビの甘味が混ざったきれのよい味にうっとりする。

ぜひみんなに飲んでもらいたかったすばらしいロゼワインが品切れだったのが残念だったけど、ジュリアンが代わりに薦めてくれたロゼも全然悪くない。エビにもよく合ったし、余興でその後に出してくれたイカフライにもかんっぺきだ。柔らかなエビをサクリと揚げた一皿に、みんなで歓声を上げる。おいし〜!もっとほしい〜!でも次の料理もあるからね。我慢我慢。

スズキのポワレ。しみじみ美味お魚の登場。「ルー(地中海スズキ)のポワレ」。ルーだったよねえ?ドラッドだった?ヤバイ、もうこの辺りから、体内でアルコールが影響力をふるい始めてる。アペリティフ、いろんなお酒をたっぷり飲んじゃったからなあ、、、。コンガリした皮、ふっくらした身。かぐわしいオリーヴオイル。松嶋さん、火入れがとても上手だよねー。火入れに限らず、味付けやどうカットすればおいしくなるかという見極めがしっかり出来ていて、素材を絶対に殺さないで、皿の上で再生している。勘とセンスがいいんだろうね。食材を作ってくれいてる人たちへの感謝を込めて料理をしています、と言っていたことがあるけど、生産者たちも、自分たちが作った食材をこんなにおいしくしてくれる松嶋さんに感謝してると思う。

添えられた焼きアーティショーも苦味を残しながらもほっくリ甘くてすばらしい。おまけについているミニミニアンチョビのフリッターは、この間撮影の時にも付いていて、何気なく味見をしてそのおいしさにのけぞった逸品。今夜のディナーの唯一のリクエストは、「アンチョビフリットを作ってね♪」だったくらい、一緒に味見をした編集者と私を虜にした料理。

アンチョビいっぱい♪そんなアンチョビ、もちろんおまけの1尾で足りるはずない。魚を終えた私達のテーブルに、アンチョビフリットがこんもり盛られた皿が運ばれる。ブラヴォー松嶋さん!なんでこんなにおいしいんだろう?いいや別に、理解できなくても。どうせ私には作れないんだから。今目の前にこんなにおいしいものがあることに素直に感謝して味を堪能しよう。夢中になってアンチョビをつまむ。添えてあるタルタルは、私はなくてもいいかな。塩の味だけで十分。このタルタルはこれでまたすごくおいしい!とみんなは絶賛。

あっという間にアンチョビはみんなのお腹の中に消えてしまい、テーブルにはからっぽの皿が物悲しげに佇んでる。皿を寂しがらせちゃいけない。「もっと欲しいな〜」とケーコちゃんにお願いしてみる。厨房へ消え、程なく戻ってきたケーコちゃんが耳元でささやく。
「シェフがね、体重が2キロ以上も増えているんだから、止めた方がいい、って言っています」。は〜い、シェフ、、、。ニースに来て、最初の1週間で体重が3キロ近く増えて、ちょっとうろたえた。後半は体重計ナシのホテルだったので確認のしようがないけれど、毎日の食生活&指輪のきつさを考えると、増えた3キロがどこかにいったとは考えにくい。そうだね、太っちゃったしね。シェフが言うとおりアンチョビはあきらめよう。

ハトさて、お肉。松嶋さんのスペシャリテ「牛肉とわさびのミルフォイユ」を食べたかったんだけど、「新しい料理も食べてくださいよー。たまには僕に任せてください。すっごくおいしい鳩が入ってるんです。ぜひ!」というシェフの言葉に従う。入荷したばかりのベルナルドーの白い皿に美しく盛り付けられた鳩。たくましく甘い香りを漂わせる肉をサクンと一口噛み締めて、シェフのサジェスチョンには従うもんだ〜、としみじみ。なんてまあ上品な味なんでしょうねえ。もともと上品な鳩の肉を、さらに上品に調理してある感じ。アグレッシヴな部分がきれいに取り除かれ、鳩の品のよさだけが抽出されてる。添えてあるヒヨコマメもおいし〜。いつからあるのか覚えていない、コクのある赤ワインとの相性も抜群で、なんだかもう、ほとんど夢の中状態。鳩をみんなに味見させてあげたか、みんなが食べたミルフォイユを味見させてもらったか、覚えてない。

マントンレモンのソルベ持ち込んだマントンレモンを潰して作ったばかりのソルベでお口直し。丸い酸味が本当にきれいだね。レモン園のフランソワさんとラファイエットとナポレオンという名の2匹の犬を思い出す。楽しかったな、レモン園取材。犬どもは超かわいいし(私はなぜか、ナポレオンをボナパルトと呼んでしまい、どうしてもそれを直せなかった)、偶然、モナコにいる大好きなシェフ、キュサックさんにも会ったしね。

レモンクリームとフランボワーズのタルトおやつは、フレッシュフランボワーズをたっぷり使って、マントンレモンで作ったクリームを添えたシンプルなタルト。こういうおやつ、だーいすき!南のハーブが軽く香る、鮮度たっぷりの肩の力が抜けたお菓子だ。一緒に出てきた、キリリと冷えたミュスカ(リヴザルドだったっけ?)を相手に、甘い幸せに浸る。

カフェを飲んで、プチフールを平らげ、長い長い宴がようやく終わる。た〜っぷりとおいしいものを詰め込んだお腹は、赤ちゃん兎が10匹はいるに違いない!と思うようなふくらみを見せているし、指をふるとチャプンと指先にまでアルコールが行き渡っている気がする。よく食べたね〜、よく飲んだね〜。まさに健啖家の夕べ。完璧に満ち足りてる。

楽しい仲間、おいしい料理とお酒、テンポよく気持ちのよいサーヴィス。レストランを楽しむための条件が見事にそろった、すばらしい夜。こんなおいしく素敵な夜をプロデュースしてくれた松嶋さんと店のスタッフに、心から感謝を!明日にはもう、パリに戻らなくちゃいけないけど、また近いうちにぜひ、南に降りてきます。松嶋さんの料理を(あ、あと、キュサックさんとチェルッティーちゃんとシリノさんの料理もね♪)食べるために。


jeu.10 fev.2005



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