homeホーム

グルマン・ピュスのレストラン紀行


リュック・サルスド(Luc Salsedo)

いいじゃないニース!すっごくいいじゃない!と、ニコニコになる夜。

ニースのレストランに行く機会って、実はあまりなかった。いつも素通りして他の街に行っちゃうからね。こうやってニースにしばらくいると、この街のレストランをいろいろ見られて楽しい。

今回の滞在中、思いがけない喜びを味あわせてくれた店は「リュック・サルスド」。エズの「シェーヴル・ドール」を2つ星にした立役者で今はニース郊外に自分の店を開いているドラクールさんの弟子が最近開いた店だと、松嶋さんから薦められていた。後半泊まったホテルの真横。パリに戻る日が差し迫ったある夜訪ねたレストランを去るときには、「こんな近くにあったのに、どうしてもっと早く来なかったの〜!?もっと早くに来ていたら、何度も来られたのに、、、」と、ちょっと悔やまれるくらい、私の性に合う店だった。

内装サーモンピンクの壁と籐の椅子が、柔らかで暖かな印象を作っている小さな小さな店。アントレ・プラ・デセールそれぞれ3種から1つずつ選ぶ38ユーロのムニュカルトだけ、といさぎよいカルト構成。その3つだけずつの料理たちが、どれもこれもそそるんだよね。料理名を見ただけで、何か琴線に触れてくる、食べるまでもなく好きになるのが分かってしまう店だ。そういう店にたまに巡り会うと、私はすっかり嬉しくなってしまう。

すばらしい技術!感動的な味!というのとはまたちょっと違う、妙にツボにはまる、まさに私のためあつらえたかのような料理。エルヴェが作ってくれた「イヴァン」の料理みたいなもの。なにをどう出されても、好き好き好き!と言いたくなっちゃう感じ。

アミューズ桃リキュールを落としたシャンパーニュをクイクイやりながら、グリッシーニやサラミ、タプナード、揚げ物などからなる賑やかなアミューズ群をパクパク。かわいいねー、おいしいねー!思っていた通りのいい味だ。オリーヴ入りパンもおいしー。

溺愛した野菜のラヴィオリアントレの「野菜入りラヴィオリのエミュルジョン」、最高だ。トロトロラヴィオリに味の濃い野菜のみじん切りを詰めた料理。上からフワリと野菜のフォンをベースにしてエミュルジョンを作ったものなのかな?がかかってる。甘くて柔らかくて香り高い、これ以上ないくらい私好みの作品だ。おいしいよ〜。もう一皿食べたーい!

レンズマメの煮込みとソーセージプラは「ソーセージとレンズマメ」。全然ニースらしくない、なんだか中央部の山岳地帯を想像させるような料理だけど、レンズマメ大好きだもん。ソーセージも大好きだもん。ついでに豚の3枚肉をカリリと焼いたのも添えてあるって言うんだもん。オーダーしないわけにいかないじゃないねえ?

ポニーテールがかわいいシェフに後から聞くところによると、このソーセージはイタリア産なんだって。フランスの山ソーセージに比べ、ワントーン迫力が強いというか味がたくましい。滋味深いレンズマメを山盛りスプーンにすくってパクついては、ガツンとした味のソーセージに噛み付く。合間に、脂の乗り方がたまらない豚スライスを味わいながら。幸せ♪

マグロのポワレとエプートルのリゾット味見させてもらった「マグロのポワレ、エプートル麦のリゾットしたて」も抜群。ごくごく浅い、見事な火入れのマグロは、外はカリリで中はしっとり。上手だねえ、火の扱い方。軽やかなトマトソースもいけるし、口の中でプチプチするエプートルのリゾットもとても上手。私以外の3人はこれを頼み、みんなして歓喜の声を上げてる。

パンペルデュおやつは何の迷いもなく、「ブリオッシュのパンペルデュ。焼きリンゴとキャラメルソース、シナモンアイスクリーム」。熱いよー、冷たいよー、おいしいよー、と叫びながら、あっという間に平らげてしまう。

仕事も順調に進んでいるのでみんなのモラルも上々。あわせたベレの赤ワインがこれまた美味で、みんなそろって、くつろぎと満足に満ちた表情。ロケ中の夕食とは思えない、なんだかとっても素敵でおいしい時間だ。

ニースにいる、という気はあんまりしない店だけれど、ものすごく好みのタイプ。肩の力の抜き加減と味のセンスが絶妙。横に住んでたら、週に一度は通ってただろうなあ。ドラクールさんの料理も大好きだったけれど、さすがは彼に仕込まれただけある、シェフリュック。彼の実力とセンスを堪能した。メルシーボクボクボクー!して、嬉しさと満足さに包まれながら、テクテクテクと3歩だけ歩いてホテルに戻るのでした。こういう若き才能ある料理人がいるから、この世界は魅力的なんだよね。こういう幸せを味合わせてくれる料理人の皆さんに、心から感謝!


mar.8 fev. 2005



back to listレストランリストに戻る
back to listフランス地図に戻る
back to list予算別リストに戻る


homeA la フランス ホーム
Copyright (C) 1999-2000 Yukino Kano All Rights Reserved.