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グルマン・ピュスのレストラン紀行


「レ・ゼリゼ」「ル・サンク」「ル・ムーリス」「ル・ブリストル」美食三昧の一週間

アラン・デュカス主催イベントで、オーヴェルニュ地方の若手シェフの力作を堪能し、翌日一生忘れない味の鹿を「タイユヴァン」で堪能した後、まだまだ、美食の日々は続く。ザックリとコメントだけ。仕事ゴハンだったので、写真は撮らなかった。ゴメンナサイ。

3日目「レ・ゼリゼ」

タイユヴァンのグリッシーニも美味だったけど、やっぱりここのグリッシーニはピカイチ!有り余るアミューズを平らげ、「ル・レジャンス」時代からのいとしい「ホタテのカルパッチョ、マンゴー&カヴィア」風味と久しぶりに再会。シソの味付けの仕方がちょっと変わった。相変わらず、すばらしい。ブリファーさんと私をめぐり合わせてくれた料理。季節柄、「ジビエのピチヴィエ」を2人で取る。2〜3人前、とあったが、これ、4人前だよ。3種ほどの獣肉を閉じ込めたパイは、威風堂々とした力強い味付け。迫力あるソースがすばらしい。これぞ、フランスガストロノミー!でも半分残してしまう。もったいない、、。

料理の質に比べてデセールがあまりに普通なのが、やっぱりつらいな、ここ。早く、いいパティシエを入れたほうがいい。オミヤのキャラメルはいつもと変わらずおいしい。ソムリエ氏が選んでくれた、何てことないローヌのお酒は、ピチヴィエにピッタリ。ホタテに、と選んでくれたバンドルの白もステキだ。いい選択をありがとう。

ブリファーさんは、今年のボダングルマンだったかシャンペラーだったかで、最高点にランクされた、とゴキゲン。私も嬉しい。でも、お客様、もう少し入ったほうがいいのになあ。クリス以下、サーヴィスも悪くないし、料理は最高。内装も少しずつよくしている。もっとお客様がきてもいい店だ。もったいない。

4日目「ル・サンク」

遊びに行くけど食べに行かない、不思議な店、「ル・サンク」に久しぶりにいって、びっくりした。おいしいんだよ(笑)!おいしくてびっくりする、って言うのもなんだけど、あまりおいしい思いをここでしたことがないだけに、びっくりしてしまった。名実ともに3つ星かなあ。

アミューズ群はイマイチなのはいつもどおり。グジェール以外、感動するアミューズに会ったことない。アントレの「アルバ白トリュフのパスタ」に、身も心もとろける。艶っぽい匂いを充満させた白トリュフが、手打ちの細いパスタに乗っている。パスタソースはクリームとフロマージュ。一口食べるごとに思わず笑ってしまう、あまりにもあまりにもあまりにもおいしくて。アルバ白トリュフを使った時点で反則だけれど、この5日間のガストロレストランめぐりの中で、一番おいしい料理だ。

プラは豚のラードを柔らかく煮込んで、白インゲンと野菜で作ったどろどろシチューみたいなを添えたもの。甘く柔らかくトロントロン。嫌いな訳ない。

デセール?もちろん頼まない。おとぎの国のような愛らしいシャリオにつまれたコンフィズリーをたっぷり頬張る方がずっといい。今年の世界最優秀ソムリエのタイトルを取ったばかりのエンリコが、珍しくも客席にいる。コンクール準備で忙しかったか、全然姿を見かけなかったもんね。そのエンリコが、リエーヴル・ロワイヤルにいいよ!と選んだサン・ジョゼフはお見事。お値段は、白トリュフパスタよりもはるかに安い。世界トップのソムリエがこういうワインを選んでくれて、それがまたパシッと決まるところが、本当にすごいと思う。「そんなに貧乏に見えますかねえ」と同席者は苦笑しながらも、完璧以上に料理の味を引き立てるワイン選択に脱帽する。

パトリスは休みだったけれど、エンリコとエリック、ウォーリー君ことセドリックら、極上のソムリエたちとその他諸々のスタッフにかしずかれ、とことん優雅で幸せな食事。あのパスタだけ食べに、また来たいな。すばらしい空気が流れる、とてもいいレストランになったね。

5日目「ル・ムーリス」

ボーシェフ、ヤニックは、今夜もボー(美しい)。食事の前に挨拶しにきてくれる。お勧めは?と聞くと、ホタテのカルパッチョのアルバ白トリュフ添え、だと。当たり前じゃん、おいしいに決まってる。でも、他のにしようかな。お気に入りのシャンパーニュ・アミューズの後、セップ&マロンのスープをいただき、アントレは、「カリフラワー、燻製したジュ、カヴィア」。なんてことない、ゆでたカリフラワーがゴロンゴロンと陶器の美しい皿に転がっていて、そこにカヴィアがデレーンとたっぷり乗っている。なんだこれ?みたいな料理なんだけれど、これがまたシンプルに美味。軽い燻製香がするソースがポイントなのかもしれないけど、これがなくて、カリフラワーとカヴィアだけでも幸せな気がするのは気のせい?なんとなく脱力する一皿だけれど、すごぶる美味。

2皿目もアントレからチョイス。ナス、ブーダン、セップ、リンゴをあわせた一品は、すーばらしいおいしさ。それぞれの素材が持ついろんなタイプの甘味が見事に調和して、なんてなんてすばらしい!こんなおいしいブーダンを食べるのも久しぶり、とブーダン好きの私はすっかり嬉しくなってしまうし、ナスもまた泣かせる味わい。ブラヴォー、ヤニック!

そこかしこのテーブルから、時折白トリュフの匂いが流れてくる。う、やっぱりあれにするべきだったか、、、と、一瞬後悔の念が脳裏をよぎるけれど、食べた2皿も、感動的だったし、よしとしよう。アルバトリュフの魅惑に屈してはいけない。

カミーユ君のおやつも相変わらず傑作。プチフールたちの信じられない完成度にうなった後に、ショコラにレモンを入れ込んだ柔らなタルトとスペキュロス(シナモンクッキーみたいなもの)味のアイスクリーム。取材したときの記憶よりもさらにおいしさが増している。カミーユ君はすごい。ムーリスは、ほんとに運がいい。彼を招くことができて。パンもバターも完璧。野蛮なくらいゴージャスな雰囲気も、このホテルらしくて、私は決して嫌いじゃない。

サーヴィスは、アレックスはいつもながらに完璧だけれど、その他の人たちはちょっぴりよそよそしいんだよね。この店のお客様にはこれくらいがいいのかもしれないけど。ソムリエはいつもながらにイマヒトツ。くだらないポマールを仔牛に薦めてくれた。今年のフランス最高ソムリエのタイトルを取ったラポルト氏に私はまだ会ったことがない。今度は、彼にサーヴィスして欲しいな。勢いが、店の隅々にまで溢れている、今が旬の店だね。

6日目「ル・ブリストル」

ムーリスと対照的に、勢いをなくしてしまい、旬を過ぎてしまったのかな、と思うのが、ここ。週末でシェフが2人ともいない、というハンディはあるにしても、モントゥイエさんがいなくなったのはやっぱり大きいんじゃないかなあ。と、3ヶ月ぶりに訪ねたレストランでしみじみ思ってしまう、サーヴィススタッフ陣。ソムリエールさんたちのひどいサーヴィスぶりも変わらず、ワインリストの内容も薄っぺらで悲しい。サーヴィスに、ル・サンクから移ってきたウィルフリッドと言うメートルが加わっていたのが救い。ル・サンクじこみを感じさせる、あでやかで軽やかで気持ちのよいエレガントなサーヴィスをしてくれる。願わくば、他のスタッフが彼を見習ってくれますように、、、。

卵のサヴァイヨンソース、アルバトリュフ添えと、春に食べて大いに気に入ったウナギのムニエル、パセリピュレ添えをいただく。どちらも普通のおいしさ。卵は、説明に書いていなかったパルメザンの味が強すぎるのがつらかった。トリュフの質も、う〜んイマヒトツの気が、、、。同じ系統でアスペルジュで仕上げた卵料理がすばらしかったのが懐かしい。ウナギは火を通しすぎてちょっとゴムっぽくなってしまっている。これも、火通しが上手くいくと、サックリ衣と脂のねっとり感が見事な一品なのに。残念。どちらも、ステキにおいしくなりうる料理なのにな。

ジルちゃんのおやつは、マンダリンオレンジ尽くしを試してみる。いつもながらのおいしさとかわいらしさだけれど、ソルベ以外は、感動的な味、という訳でもない。味見させてもらったニンジン&オレンジのソルベは、傑作。ソルベ、強いよね、ジルちゃん。

料理もおやつも、うーん、ちょっと勢いを感じないなあ。去年の今頃、3つ星獲得に向けてみなぎっていた、ものすごい緊張感というかエネルギーを、今日は感じることができなかった。去年3つ星を取れなかったのは本当に痛い。あの時点では、ソムリエとワインを除けば、間違いなく3つ星ランクだったのに。モントゥイエさんがいなくなり、シェフたちの士気もなんとなく落ちている(と、少なくとも今日は感じてしまった)状況では、やっぱりちょっとつらい。なまじっかムーリスが伸びてきているだけに、星取りはますます難しくなってくるんじゃないかなあ。

とまあ、こんな5日間の美食三昧。こうやって、一気に同じレベルの店を体験すると、それぞれのカラーや利点、欠点などがよく見える。「タイユヴァン」の誠実なゆるぎなさ、「レ・ゼリゼ」の才気ばしった料理のすごさ、「ル・サンク」の夢の国のようなあでやかさ、「ル・ムーリス」の光り輝く料理&お菓子の競演、そして「ル・ブリストル」の懐かしいかつての栄光。どこも、とても気に入っていていつも楽しく素敵な時間を過ごさせてくれるレストランたち。それぞれが今後も、それぞれのカラーを大切にしながらよりよいレストランになってくれることを、心から祈る。


10,11,12,13 nov. 2004



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